包丁を使わなくてもメシは美味い(友情。成人女性二人)
「はーい、野菜蒸し出来たよー」
「ほーい。鍋敷きセットしてあるよー」
日向が小鍋を持って来る。香織は、きちんと鍋敷きをローテーブルの真ん中にセットし、待機していた。その周りには、ポン酢や甘口醤油、塩、オリーブオイルなどが並べられており、もう一つの鍋敷きにはグラタン皿が鎮座している。
「よっしゃよっしゃ」
日向が鍋を置き、食卓が整うと、二人は座って、それぞれの飲み物を手にした。日向はペールエール、香織はノンアルコールのゆずサワー。
「それでは」
「では」
「「かんぱーい!」」
ごっごっごっ……
ぷっはー!
「週末のこのひとときのためにがんばってる」
「同じくー」
「でも、あれだね!」
「?」
「料理下手でも、作ろうと思えば作れるね」
「簡単なものはねー」
本日のメニューは、もやしとカットきのことオクラの蒸し野菜。ソーセージのチーズ焼き。
オクラのへたは手でとり(産毛は、水で流すときに気持ち強めにごしごしやる程度)、ソーセージのチーズ焼きも、スーパーで半額だったソーセージをグラタン皿にそのままぶちいれ、こちらにもカットきのこをおまけに入れてチーズをかけ、トースターでチン。
包丁ゼロメニューだ。
「料理下手が二人集まっても自炊つまみが出来る……」
「乾きものとカップ麺からだいぶん進化したよね、我々……」
二人が同じマンションに越してから、毎週金曜日はどちらかの家で宅飲みをするようになった。
ただ、二人とも料理は出来ないため、当初は乾きものとスーパーのお惣菜、〆にカップ麺だったのだが。
「味に飽きた……」
ということで、包丁を使わない自炊をし始めたのだった。
「いやー、家事力アップで、生命力だいぶんだいぶんアップしたのでは?」
「これはつよつよですわ」
酒(一人はノンアルだが)をちびちびやりながら、二人は悦に入る。
「寿命、延びたのでは?」
「これはだいぶん伸びてますわ」
二人で、そんな下らない事を言い合うのが至福の時。
「料理が下手くそでも」
「どうにかなる!!」
わははははははー!!
二人の笑い声が響く。
大したものは作れなくても。お洒落な高級惣菜が無くても。
楽しければ万事オーケー。
そんな二人の夜は、今日もるんるんと過ぎて行く。
END.
友人との飲みはこう、大人の青春がある気がする…




