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魔法使いのおとうさん  作者: 柊 芽理衣
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序章

初めまして、柊 芽理衣です

人生の全てを賭した小説を書きました

『魔法使いのおとうさん』を執筆し終えたら、華麗にこの世を去ろうと思っています

愛とはなにか、を私なりに表現した作品です


暗い描写が多いです、あとBL表現もあるのでご注意を。


感想、レビュー頂けるとすっごく嬉しいです!!



ぼくは魔法使いのおとうさんに恋をした




「立ち入るな」と警告するような

叩きつけんばかりの猛吹雪に

視界すらも妨害される



目に雪が滲み、灰色と白の境界線がぼやけて視覚情報が余計に曖昧になる。


だが、ぼくはそれに不快になる所か

何年経っても変わらないこの土地に

懐かしさと安心感を抱いていた



此処は忘れ去られた雪深い集落

建物も電灯も植物さえ何も無い

銀世界だけが一面に広がっているだけ


ぼくの最愛の父さんが眠っている場所

全ての始まりで、今日、終わりを迎える、場所


あまりにも変化のない景色に【この力】がなければ遭難して辿り着けなかったかもしれないなぁと一人ニヒルに苦笑する。


あれだけ憧れていた【この力】は、手にしてしまえばこんなものかと持て余すガラクタと化した。



彼に、花はいらない

供えるものはぼくだけでいい



暫く銀世界の奥に進んでいくと

何故か一部分だけ、不自然に雪が弾かれているような場所を見つけた。



......あった

父さんの、墓標。

駆け寄ると

細い枝で建てられた簡易的な十字架が変わらぬ姿でそこに在った。

それに心底安堵し、白く濁った息を彼に向けて吐く。


ああ、此処だけは本当に不変だ

自然と顔が歪み、溢れそうになる

彼が亡くなって数十年が経過したけれど、相変わらず彼は雪を拒んでいるのだ。

唯一形として遺っている、父さんの意思表示。


死して尚、改めて彼の【この力】は強大だったのだと思い知らされる。


ぼくは墓標の前で膝をつき、軽く十字架にキスをした。そしてそれを小さく抱きしめる



「ただいま、父さん」



勝手にぼくを置いて逝ったあなたを

もう離すものかと、手繰り寄せるかのように



「.......愛してるよ、セラ」

あいしてる。あなたを、ずっと

永遠に



そして、彼にとって世界一残酷な言葉を浴びせた



「お供え物は、あなたが愛した

『亜希』の命だよ」



嬉しいでしょう?

ふふ、と笑いが込み上げてくる。

やっと、死ねる

あなたの目の前で


長かったなぁ、辛かったなぁ......

でもこれで終わるんだ。



「さようなら、『亜希』.......ううん、ぼく」



最期にひっそりと【この力】を唄う

すると吹雪が一層強くなり

視界も、聴覚も、徐々に閉ざされていく。


そう、もっと雪で包んで

ぼく達を永遠に隠しておいて。




ーーー亜希、ここは寒いでしょう

こっちに来なさい......ほぉら、あったかい魔法です!



ーーーねえ亜希。

僕は貴方を愛しています

ずっと、貴方だけを




「はっ.......嘘.......つき......」



最後の最期まで嘘を貫いたあなたを絶対に許さない。

最後の【この力】であなたをもう一度生き返らせる。

でもそこに、あなたが愛したぼくは居ないんだ。悲しんで、絶望して、ぼくの憎しみを一生背負ってよ




ざまあみろ




《セラ、だいすき!

男の子同士でも、遠い国でなら結婚できるんだって》



《ずっとずっと、そばに居てね

約束だからね》



それでも在りし日のぼくは、笑っていた

決して消してはならない

セラと過ごした温かい日々



「愛した.......かったなぁ

おとうさん、として」



【この力】を唄い終えると

魂がすぅっと抜けていくのが分かった。

もう寒さすら感じない



最後に

亜希、と悲痛に叫ぶ声が薄く聴こえた

良かった、成功したみたい



「......やっぱ……り、恋、……だったよ、セラ」





そこでぼくの意識は途切れた。


最後まで読んで頂きありがとうございます!


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