小牧・長久手の戦術3
清洲城に家康が着いた日。
信雄が期待していた池田恒興は、犬山城を占拠した。
「恒興が何故、筑前に付くのだ。」
信雄は周囲の家臣に当たり散らしていたが、家康は冷静であった。
『阿保についても仕方ないと見限っただけよ。』
家康はすぐに小牧山城に入り、対峙した。
すぐに池田恒興方の森長可の陣が突出してるのを見て、これを打ち破った。
その頃、羽柴秀長率いる羽柴勢本隊は楽田城に向けて進発し、到着。
両陣営は城を固め、動けない状況になった。
信雄は小牧山城で家康に向かって叫んでいた。
「参議殿、筑前は病で弟が総大将とか。
今のうちに攻めてはどうか。」
「中将様、戦さのことは拙者にお任せください。とりあえず清洲城で朗報をお待ちください。」
『とにかく、側におられては戦さの邪魔。
だいたい、今のこの陣形を見れば無理攻めできないことが分からんお方には去って頂こう。』
「わかった。清洲城で朗報を待っているぞ。」
信雄も戦さにやや飽きてきていたので、清洲に引き返す事にしたのであった。
信雄がいなくなり、家康はややホッとしていた。
「しかしながら、筑前がいなくても、羽柴小一郎、手堅い戦さをするな。
攻め手が見つからん。
長期戦はややこちらも不利だが、あちらも兵量が持つかどうかというところだな。」
一方の楽田城の羽柴秀長と秀次。
「良いか孫七郎。こうなると先に動いた方が不利になる。
しかしながら、こたびは大坂で兄者と官兵衛がこの局面を打破する戦術を練りに練っていたのだ。我らは二人が動き出すまで諸将が突出しないように抑えるのが役目。
ゆめゆめ怠るでないぞ。」
「叔父上、かしこまりました。」
大坂城に楽田城の秀長から手はずが整ったとの知らせが届いた。
秀吉は官兵衛と膝付き合わせて話してた。
「大坂城の守りは小六で良いな。」
「蜂須賀殿も四国勢を撃退するぐらいは任せて欲しいとおっしゃっておられました。」
「良かろう。佐吉はどこまで手配出来ている。」
「はい。三河までなら5日で行けます。
どうやら三介殿は清洲に引き返したようですが…」
「清洲は後回しにして一目散に岡崎を目指す。
軍を二手に分けて岡崎を抑える兵と浜松を攻める兵とで一気に駆けるぞ。
とにかく、秀長には、三河の兵を動かぬように引きつけておくように命じよ。
出発は明後日明け方。三河の間者に悟られぬように一気に参るぞ。例の手配も出来ているな」
「はい既に。」