奥州攻め4
会津攻めも終わり蘆名の処分が終わった後である。
秀吉は、初めて伊達政宗と対面した。政宗と共に最上義光も秀吉に臣従するということで、二人が、秀吉の前に現れた。
秀吉は、義光にはそれほど興味はなかったが、伊達政宗には早く会いたかった。
「若い」
秀吉が、政宗を見た第一印象であった。
「こいつは、油断すると、吾にキバを向いてくる。今のうちにそのキバをそぎ落としておく必要がある。」
内心でそう思いながら、秀吉は政宗と対面した。
「伊達殿、こたびの働き大儀であった。
最上殿も吾に同心してくれるということ、これで、北のほうは安心だな。
のう官兵衛。」
「殿、誠に喜ばしきこと。この先、北のほうは安心。西の方へ兵を動かせますな。」
官兵衛もそういいながら、政宗の危うさは秀吉と同様に感じていた。
「では官兵衛、北のほうは伊達殿、最上殿に任せるか?」
「左様ですな。しかしながら、奥州探題という役割は既に無きに等しく、我が羽柴から与力を出す必要がありますな。」
政宗はしまったという顔をした。
奥州探題を望んだが、官兵衛の一言で、その地位は否定されたからである。
「筑前守様、奥州探題は無きに等しいとは?」
政宗が問いかけた。
「これより新しい秩序を作るのだ。足利将軍家が作った秩序は無になる。」
奥州に独立国を作る気であった政宗の野望は、秀吉の一言で却下された。
「では、その与力とおっしゃるのは?」
「我が弟、羽柴秀長、我が甥、羽柴秀次を付ける。よろしいかな?」
羽柴一族が与力となるということは、奥州の平定は羽柴家が行い、伊達家はその元に従うということであった。
政宗の思惑は外れた。
最上義光は、既にその事を察した。
「羽柴様が引き続き、ついてくださるなら、最上家も全力を尽くしてついて参ります。」
政宗、内心では伯父の義光の言葉に
「伯父き、変わり身の早さは相変わらずだな。」
と思いながら、渋々と頭を下げた。
「この伊達藤次郎政宗、羽柴様の為に一命を投げうちまする。」
この瞬間、政宗の奥州独立国構想は崩れた。
羽柴秀長、秀次は奥州を北へと向かうことになった。
秀吉は、まだ西の方で羽柴家に屈服していない、四国、九州勢を討つべく兵を返したのであった。




