北の麒麟児
北条家が羽柴家へ降った頃である。
出羽国米沢城内では、一人の隻眼の男が関東の様子をうかがっていた。
「北条も下したのか!
羽柴筑前守、油断ならない男だ。
して小十郎、父上はなんと申している。」
「大殿には、家督は、殿に譲った故に筑前守とのことはお任せするとのこと。」
「父上も、吾を試されてるな。
父上はずっと織田家とよしみを通じてきたが、その家臣であった羽柴家とはよしみを通じるかどうかという謎かけだな。
成り上がりの筑前守だが、油断ならない男であることは確かである。
小十郎は如何に思う?」
「織田家との関係を考えれば、手を結んでも良いかと。」
「だな。吾は東北の雄となりたいと思っていたが、上には上がいるということか…」
男は少し悔しさをにじませながら言った。
「仕方ない。筑前に使者を送れ!
東北のこと、この伊達藤次郎政宗、是非先導つかまつる。
しいては、伊達家を奥州探題として扱いくださいとな。
こうしておけば、蘆名、佐竹、最上などより一歩先んじ、奥州での地位は高まるであろう!」
伊達藤次郎政宗は、羽柴筑前守の配下になることにより、奥州での地位を独占しようとしていた。




