小牧・長久手の戦術2
羽柴筑前守、病に倒れると聞いて喜んだのは、織田中将信雄であった。
嬉々として、みずから、浜松におもむき徳川参議家康と対面した。
「参議よ。今こそ筑前守を討つ好機。」
「中将さま、わなかもしれません。むやみに動いては相手の思うつぼ。」
「参議がやらぬなら吾一人で兵を挙げるのみ。
筑前守がおらねば、織田家のものは吾についてくるだろうしな。」
家康は呆れていた。
『この阿呆と手を組まなければならんのか?
織田家のものは筑前守の顔色を伺っていることもわからんとはな。』
家康は、そんな内心を隠した。
「かしこまりました。この家康も兵を挙げましょう。早速尾張に兵を進めまする。」
家康は清洲城に向けて兵を進めた。
その動きを全て官兵衛は諜報活動でもって把握していた。
病の振りをしていた秀吉の元への向かった官兵衛。
「官兵衛、どうだ。動いたか?」
「動きました。しかしながらもう少し殿には。」
「わかっている。小一郎を出せというのだろう。」
「はい、それと孫七郎(秀次)様も…」
「孫七郎か。初陣になるか。良かろう。
退屈だ、お寧を呼んでくれ。」
「かしこまりました。」
下がろうとすると、秀吉が官兵衛に声をかけた。
「官兵衛、大坂から三河まで何日で着くかのー」
「さて、今は…」
官兵衛はそう言い残して去っていった。