揺れる上杉家2
上杉家に人質となっている真田家次男、真田信繁が直江兼続に真田家使者として訪れたのは、景勝と兼続が羽柴家の対応を話してから5日後のことであった。
「直江殿、本日は真田家、いや羽柴筑前守の使者としてお訪ねいたしました。」
「お待ち申し上げておりました。」
「では、言葉を改めて申し上げます。
上杉殿には羽柴筑前守と和を結び、天下安寧の為にお働き頂きいただきたい。領地はそのままとする。ただし沼田は真田家のものとしていただきたい。
この先、手を結び、北条攻めに手を貸していただきたい。以上でございます。」
「羽柴筑前守のお言葉、承りました。
主君、家臣と相談の上、お答え申し上げます。
お使者の役割大義でございます。」
「直江殿、ここから先は、父、安房守の内々の話でございます。
もはや筑前守に逆らうより、如何に生き残るか考えた方が得策だということでございます。」
「ほー、安房守殿のお方がそうおっしゃっておられましたか!
かしこまりました。してそなたは?」
「羽柴筑前守殿の近習として仕えよとのご命を受けました。上杉殿に受けましたご恩は忘れませんが、このまま、去らせていただきます。」
「仕方ないの。責めはそれがしが負う。さらばだ。」
「ではいずれまた。」
信繁はそのまま去っていった。
兼続は、筑前守の出した条件に
『まあこちらの読み通り。筑前守は北条は攻めるか。我らにとっては不遇戴天の仲の北条ゆえに家臣達の説得も案外うまくいくかもしれん』
と思いながら、自身の家臣を呼んだ。
「これより春日山城の殿の元へ参る。支度せよ。」
と命じた。




