真田動く6
昌幸は策を使い果たしてしまって、次をいかにするか悩んでいた。
「信幸、あの浜松城の夜襲で筑前に一泡吹かせたが、次は向こうがどう動くか次第になってしまった。
もし、本気で筑前が我らを潰しにかかったら一たまりもないな。
甲斐・信濃にこもって対するしかないが、我らも一枚岩ではないからな。
今は筑前相手に勝ち戦のように皆に伝えてあるが、どうやら向こうも援軍が到着し、我らを一捻り出来るのは容易らしい。」
「父上、真田恐るべしと見せつけただけでも目的は達したではないですか、後はいかに和議を進めるかを考えましょうぞ。」
「吾は向こうが和議を切り出さない限りはこちらから和議を申し出る気はないのだが…」
「しかしながら、もはや筑前も備えは十分だと思いますが、いかになさいます。」
「それを今考えておる。」
親子で議論が堂々巡りしていたある日のことであった。
「申し上げます。羽柴筑前守の使者として黒田官兵衛殿、本多佐渡守殿が参られましたが、いかがなさいますか?」
近習が知らせてきた。
「なに!黒田官兵衛といえば、筑前の軍師と言われた武将だが、本多佐渡守は確か、徳川家にいたものではないか?
いつの間に筑前に仕えていたのか?」
「父上、いかがなさいます。」
「どちらも筑前守、徳川家では懐刀と言われた御仁だ。和議の話しか?
合わずにはいられまい。
丁重にお通し申し上げる。
それとな、主な我らの武将全てに集まってもらうのだ。条件次第では生かして返さん。
人質に取って、筑前と一戦してやるぞ。」
昌幸はそう言いながら、内心では二人がきた以上、もはやこの戦は終わりだと確信していた。




