真田動く5
夜襲のあった次の日に黒田官兵衛率いる羽柴勢の援軍が到着した。
その中には本多正信もいた。
早速、秀吉は官兵衛と新たに家臣とした正信を召し出し、夜襲の様子を伝えた。
「筑前守様、真田安房守はおそらく、旧武田家の金堀衆を使って浜松城に入ってきたのでしょう。彼らは元々は、甲州の山々から取れる金の採掘をするものであったものですが、その技量を買われ、敵の城に侵入したり、水の手を断つことを得意としております。
やる気になれば、この城まで侵入する穴を掘ることもできましょう。」
「しかしながら、そんな穴はどこにもなかったぞ？」
「彼らは穴掘りの達人、誰にも見つからない穴を掘ることなど容易でしょうな。
しかしながら、せいぜいその穴から数十人の兵しか城に潜り込めなかったでしょう。
明らかに、城へ攻めてきた兵は、中の兵を動きやすくしたものと…」
「なるほど、真田安房守、敵に回すには惜しい男だの。なんとか和議にして味方につけたいものだ。」
「筑前守様、簡単でございます。
真田は沼田領を巡って、徳川、北条、上杉と渡り歩いた男。これを請け負ってしまえば、味方につきます。既に徳川はおりませんから、上杉、北条をどうするか真田と折り合いをつければ良いのです。」
「あいわかった。
ところで正信、御主の存念を申してみよ。」
「はい。
上杉は長尾家から入った新興勢力。まだまだ使い道はございます。
しかしながら北条は、既に関東に根を下ろして5代。
既に既得権益を守ることに甘んじているところがあり、もはや使い道は無いと思われまする。」
「正信、御主の旧主、徳川殿は北条と婚姻関係を結んでいたのでは？」
「あくまで、亡き総見院様と北条とを結びつける為に行ったもの。
既に意義はございません。」
「北条と上杉、どちらが強い？」
「野戦は上杉、城に籠もれば北条というところでございます。」
「官兵衛、よくぞ、正信を助けて我が家臣としてくれた。西の戦は官兵衛、東の戦は正信だな。」
「筑前守様、東の戦にうってつけなのは、私より真田安房守かと。」
「左様か…ならばすぐに安房守と和議をせねば。」
「殿、急がば、安房守に足元を見られますぞ。もう少し焦らしましょう。」
「おお、官兵衛、そうであったな。
して何日待つ。」
「後2日ほど。」
「あいわかった。二人に任せた。」
