真田動く1
家康死すの知らせは、旧武田家臣の元にも届いた。
信州 上田城を拠点としていた真田昌幸は、これを機に甲斐・信濃の豪族たちの盟主として駿河に侵攻する動きを見せていた。
「なに!浜松城は羽柴筑前守はすでに落としていたというのか。」
昌幸は、忍びの報告に唖然としていた。
「羽柴筑前、浜松を落としてそのままにして西に向かうとは、何を考えているのだ。
よし、今のうちに浜松は我らが奪いとる!」
昌幸は狙いを浜松に絞った。
信濃・甲斐の旧武田家臣団は浜松に向いて進軍を開始した。
その頃、岡崎を出発した秀吉は、一気に浜松目指して軍を返していた。既に途中の城は、家康の死を知り、羽柴勢に抵抗することなく、開城して出迎えていた。三河武士は骨があるとは言われていたが、支える主君がいなくなり、抵抗する気力がなくなっていたようであった。
秀吉の側には、降伏して仕えることになった本田佐渡守正信がいた。
「正信、浜松には案外早く入れるな。」
「筑前守様、知らせによると、甲斐・信濃の武田旧臣が浜松を狙っているとのこと。
これを率いているのは、真田安房守昌幸。ご油断召されること無きように。」
「真田安房守とはいかなるものか?」
「小豪族ながら、あの武田信玄をして、我が目と申したと聞いております。」
「左様か、ならば、安房守より先に城に入ってやろう!」
秀吉は進軍の速度を上げた。
脱落するものも出てきたが、浜松にはあっという間に到達した。
真田安房守が浜松に到達するより3日前のことであった。
その間に秀吉は、浜松城に様々な工夫を凝らす刻を稼ぐことが出来たのであった。




