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豊臣幕府  作者: ヒデオ
10/30

岐阜の三介殿3

岐阜で信雄が羽柴秀吉との和議を模索していた頃、岡崎にいた秀吉の元に黒田官兵衛から家康を討ち取ったとの知らせが届いていた。

「よし、三河殿はいなくなったか!

ならば岐阜の三介殿は任せたと伝えよ。

我らはこれより東に向かう。」

秀吉は一気に家康の領地に侵攻し、甲斐、そして北条まで攻め込むつもりであった。

「それとな、各地で我らに敵対しているものに対して三河殿の死を知らせるのだ。さすれば、敵対するものも我らに降るであろうとも。」

秀吉の迅速な動きは中国大返し以来、衰えていなかった。


秀吉からの急使を受けた官兵衛も動きは早かった。

小牧山城にわずかな守備兵を残して一気に岐阜へと向かった。


岐阜城は雲海のごとき大軍に囲まれた。

「雄利、城が囲まれた。

早く敵の大将に和議を結ぶと使者を出せ!」

滝川雄利は、城を出て、戦う意思のないことを示しながら、大将に会いたいと伝えた。


官兵衛はすぐに雄利とあった。

「我が主人からの伝言でございます。

此度の戦さは徳川殿にそそのかされて起こしたもの。当方としては、筑前殿とこれ以上戦う気はない。従って和議を結びたいとのことでございます。」

官兵衛は信雄の白々しさに呆れたが、

「あいわかり申した。当方としても旧主のご子息と争う気はさらさらござらん。

しかしながら、信雄殿にはご出家頂き、高野山にこもっていただきたい。」

「戻って我が主人にお伝えする。」


雄利が戻って、官兵衛の出した条件を信雄に伝えた。

信雄は大軍を前に弱気であった。

「命が助かるなら、出家でもなんでもしよう。承知したと伝えてくれ。」

雄利は呆れてしまったが、官兵衛の元に向かい、委細承知したと伝えた。

官兵衛は、

『さすがは三介殿、変わり身の早いことだ。』

とこちらも呆れながら、

「さすがは亡き上様のご子息でございます。

城兵は全てお助け致す。」


岐阜城は羽柴勢に明け渡され、信雄は高野山に追放されたが、高野山もかつて敵対した織田信長の子ということで冷たい仕打ちを受けることになるが、それは後のこと。


明け渡された岐阜城で、滝川雄利以下城兵は羽柴勢に組み込まれた。

官兵衛は岐阜城から尾張を侵略し、岡崎から東へと向かっていく秀吉勢に合流すべく兵を動かし始めた。

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