第0話
このチカラを得れば、ありとあらゆる運命もはねのけることは出来るだろう。
自らのチカラに溺れる者。
このチカラを妬まれ、憎まれ、終わる者。
この運命に囚われたからには幾度の困難が訪れいずれ破滅が訪れる。
しかし強い決意とこのチカラを理解すればきっと、きっと··········
道が開くたろう·····
ミラは目を薄っすらと開けた。
ここは私の部屋だ。壁は白く、小さなベランダが付いている。ベランダの方は全部ガラスで太陽の光が入るようになっている。
大きな本棚が2つあり、魔導書や剣術の本などでびっしり詰まってる。後は作業用の机とタンスといつも使ってる武器が置いてあるぐらいしかないシンプルな部屋だ。
今日から夏期休暇だ。この半年間、忙しくてあっという間だった。
久しぶりの長い休暇に何をしようか考えたが取り敢えず二度寝する事にした。
この休みが来るまで何があったのだろう。全ては思い出せない。色んな事があったので一旦は休みたいのだ。
ミラはベットから起きずに、昔は付いてなかった毛皮の尻尾をパタパタしながらまた目を閉じた。
真暦1368年。魔術世界の人類は災厄を越えて生き残るため進化して能力を獲得し、魔術を発展させてきた。
この世界は魔術という学問があり、学ぶ事ができる。
魔術は使えるととても便利だが、それなりの心構えと努力が必要だ。
能力。それは人類が獲得した術式など労力をかけずに魔術を行使できるようにした力だ。
火を起こしたり、電流を発生させたり、人によって十人十色。様々だ。
予め使える能力は決まっており、1〜3つ、多くて5つ持っている。親から子へ遺伝し、両親から半々ずつ子に受け継がれる。
生まれた時から使えるものもあるが、大半は少年、少女の時に覚醒して使えるようになる。
効能が特殊だったり、強力な能力は目覚めるのが遅く、人生を全うしても目覚めないものもある。
「····其れは···で··る···」
もうその体は限界を迎えつつある。
絶望が迫り、絶望は終わりをもたらそうとしている。
「·····その代償は·······」
しかし、もう終わり迎えるこんな体でも絶望を希望に変え、生ある者に未来を託すことは可能だ。
「····幾重の···を超えて······託す····」
己の決意を貫き通すため。
大切なものを守るため。
「······!未来を齎す······!」
ミラがもう一度目を開けた。正午はまだ過ぎていない。夢を見ていた気もするが何かは思い出せない。
疲れもまだ全て抜けきってないが調子は悪くはない。この体になった時から随分と回復力が早くなったものだ。
「調整をするかあ」
一人で呟く。
今は課題をする気分でもないし、武具や魔具の調整をすることにした。
魔具は主に2つの役割が有り、一つは魔力の出力を調整、魔術、術式を綴る時の補助だ。
魔力の出力を調整しないと魔力が暴走して爆発したり、補助が上手くいかないと最悪、魔術が不発になる可能性があるからだ。
杖などがこのタイプだ。
もう一つは魔力を動力源とし、起動したら予め定められた魔術を実行するタイプだ。
いちいち術式や詠唱などの手間をかけなくても魔力があれば誰でもお手軽に使うことが出来る。
しかし、魔術を実行するだけで、魔術を実行しながら操作することや、魔術を実行するにあたって演算を必要とする魔術は魔具にする事は出来ない。
前者を魔術補助型魔具。後者を魔術使用型魔具という。
魔具はその人の特性にあったものを使い、調整する。
ミラが使うのは自律型機動·魔術行使補助装置という魔力を多く含むことができる紺色の水晶だ。形は正八面体の一つの頂点だけ長くしたような形をしている。
ミラの魔力と同期、接続しており、浮いて移動する。
この魔具を使って術式を書くことが可能で同期しているため魔力を多く必要とするが、ミラが使う魔術を反映し複数同時に発動することも出来る。
高レベルの防御魔術が貼られていてそう簡単には壊されない。
この魔具を作成するにあたってミラの身体にある魔力神経、魔力炉を剥がして、相当の量の魔力を使い作成するため他人は絶対使えない。
魔力神経、魔力炉を剥がすことは内蔵を取り出す事に等しく麻酔を使っても、相応の痛みが伴った。普通の回復魔術を使っても人間の魔力回路は完全には再生しないのでこれを使う人からしたら命よりも大切だろう。
まあミラの場合時間が経過すれば回復するのだが、それでも作成するのに時間と労力と痛みを伴い、魔力を高精度で同期、接続してるため体の一部と言っても過言ではなく、壊されると少なくない反動がくるので壊されたくはない代物だ。
ある程度魔力を操作することに長けている者ではないと、この魔具と同じようなものを作成したとしても浮かしたり、接続することは不可能だ。
同期されているか、水晶が割れてないか確認し、場合により、魔力神経を足して調整する。
最近になり数が増えてきたため、威力、効果はとても高いが書き込みに時間がかかり実践では使えない魔術もこれを複数使えば、実践レベルで使えるようになった。
いつも持っている剣。
極東の昔に作られていそうな刀身と鍔は特殊な魔力強化されたサファイアで出来ていて、複数の協力なエンチャントがされている。
その全てが本当に精巧に作られていて、全体の仕組みも解析する事は難しいだろう。
もはやそれは世紀の芸術品だ。
美術館に展示しても他の品々にも負けないだろう。
竜封蒼剣 エインズ·ブラッド
自分でつけたこの剣は元々昔住んでいた家の近くの森にあったものだ。
会った汎ゆる者に破滅をもたらし、人間の全てを拒絶し、戦いの後には紅く染まった一体の蒼竜と血の海だけが残ったとされる邪竜の名を冠するこの剣はその邪竜の力が込められている。
あらゆる属性を操り、あらゆる感情を反映し、あらゆる力を前にしても切り裂く。
これは武器だが同時に魔具でもある。
柄頭に複数の魔術式が込めてある正八面体の宝石が付いていて、魔力さえあれば、持つだけで魔術が発動されるようになっている。
サファイアの刀身は変換器の機能もあり、魔力を光や炎などに変換し、リーチを伸ばしたり、大規模な魔術の魔力出力を調整することも出来たりなど、万能だ。
だがこの武器の本来の力を引き出した時の魔力の消費量が多く、常人ではすぐに魔力切れを起こし、並大抵の魔導剣士でも3分は持たないだろう。
この剣は故障しないのであくまで刀身にひび割れが起きてないか、術式が崩れてないか、ちゃんと魔力を変換出来るか、点検するくらいだ。
そもそもそんな事が起きても誰も直せないが。
魔具を調整してたらとっくに正午を過ぎてしまった。
グゥゥ
とミラの腹が鳴った。
空腹では何も出来ないので何かを食べに商店街に行くことにした。
服はそんなに持ってないが適当にタンスから服を選び、刀を鞘に収めて背負い身支度を整えた。
ある者は現在よりもいい過去を求め、ある者は今を維持するため現在を求め、ある者は過去や現在よりも良い未来を求めた。
あしたは今よりも過去よりも悪くなることもあるだろうしかし、必ず良くなる。来ない朝が無いように終わらなき絶望もないのだ。
そして、そんな希望を信じて······
ミラはドアを開け、部屋を出ていった。
始めてなろうで小説を書いてみました。
プロローグなのでこの世界観やミラの説明を重点的に書きました。
タグ付けなどの色々な面で不備があり、誤字があると思います。
遠慮なく御指摘してくれるととても有り難いです。