第3回 ギターの老舗、ギブソンの経営破たんについて
ギブソンと言えば、フェンダーと並んで、世界中のロックミュージシャン御用達のギターメーカーとして有名です。
ギブソンのギターを(メインにせよサブにせよ)使用して人気を博した洋楽ロックのギタリストの、有名どころを列記して行くと、
ジョージ・ハリスン(ビートルズ)
ジョン・レノン(ビートルズ)
ポール・マッカートニー(ビートルズ)
デイヴ・デイヴィス(キンクス)
キース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)
ピート・タウンゼント(ザ・フー)
ロビー・クリーガー(ドアーズ)
エリック・クラプトン
ジェフ・ベック
ジミ・ヘンドリクス
ピーター・グリーン(フリートウッド・マック)
ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)
デュアン・オールマン(オールマン・ブラザーズ・バンド)
カルロス・サンタナ(サンタナ)
トニー・アイオミ(ブラック・サバス)
ゲイリー・ムーア
ランディー・ローズ(オジー・オズボーン)
アンガス・ヤング(AC/DC)
スティーブ・ジョーンズ(セックス・ピストルズ)
……いやいや、もう、これは切りがない。要するに、1960年代以降のロックで、太くまろやかな音を得たいギタリストの第一選択肢は、たいていギブソンのギターだった、というわけです。
ピアノで言えば、スタインウェイのような、歴史と伝統のあるロックギター界最高峰のメーカーなわけです。
その、ロックファン憧れの的であるギブソンが、2018年に米連邦破産法第11章の適用を米裁判所に申し立て、事実上経営破たんした事が報じられました。
上記のような、ロック界になくてはならない名門中の名門メーカーだっただけに、私は報道に接してかなり驚きましたし、「ギターが売れない時代になって来た」、という噂を時折耳にしていた事から、「ロックミュージックの衰退を表わしているんじゃないか」などと考えて、ずいぶん気落ちしてしまったものです。
しかし、その後の報道によって、ギブソンの経営破たんの最大の原因は、数多くの事業買収と、それらの事業が不採算になった事から来る、経営状態の悪化である事が分かって来ました。
さらに、経営破たんはしたものの、会社が解散する事はなく、本業であるギターの製造、販売は継続し、経営再建を目指す、という事も明らかになりました。
まあ、一安心です。
ギブソンというメーカーが無くなる、という事は、水戸黄門で言うと、助さん格さんのうち、助さんが突然いなくなるようなものですから、もし、本当にそういう事態に直面したとしたら、ロックシーンは暗澹とした空気に包まれていたことでしょう。
ただ、この件で考えさせられたのは、人々から高く評価され、当たり前にあり続けると思っていた物でも、いつかはなくなってしまう可能性がある、という事です。
諸行無常の理、ですね。
そう考えると、今存在してくれている事のありがたさを、より実感する事ができます。