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音楽エッセイ『こんな音楽いかがでしょう?』  作者: Kobito


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22/24

第22回 最近聴いているアルバム 尾崎豊『十七歳の地図』

邦楽にうとい私ですが、尾崎豊おざきゆたかの名前は、学生の頃から知っていて、特に彼のバラード曲「I LOVE YOU」が、当時から好きだったし、今でも大好きです。


あの、いかにも青年らしい張りのある、そして彼の歌声の特徴である、低音を利かせた力強い発声が、気だるげなスローバラードの曲調にマッチして、一度聴いたら忘れられない魅力を感じます。


「I LOVE YOU」に興味を持ってから、かなりの年月が経って、今度は、動画サイトで見た、彼のライブ映像の中の、「Forget-me-not」という曲が、好きになりました。

この曲も、「I LOVE YOU」と同じくらいゆっくりなテンポのバラードでです。


ですが、歌い方は、より切迫感があって、悲痛ですらある、というところに、特徴があります。

歌詞の内容は、そこまで深刻ではなく、むしろ若者らしい、恋人への感謝と愛情を謳い上げた麗しい物語になっています。

その歌詞を、尾崎はものすごく苦しげに悲しげに歌うので、聴いていると、彼自身、人を愛するという事に苦悩があるのだろうな、と感じられて、可哀そうになって来ます。

彼の曲は、歌詞と彼の歌声によって、彼自身の人間性に興味を抱かせる、という性質があるようです。

そこが、凡百のアーティストには無い、尾崎のミュージシャンとしての才能です。


ただ、彼のそれ以外の曲には、長年あまり心を惹かれる事はありませんでした。

ブルース・スプリングスティーン調の、ノリの良いロックが多いんですが、大人を敵視して反抗的な態度を正当化する、つっぱった不良賛美な歌詞の内容に、反発心を感じたのも、一つの要因です。


ところが、最近になって始めた、「自分好みの日本のミュージシャンを探す」、という試みの一環で、尾崎のファーストアルバムを手に入れて、ようやくきちんと彼の音楽に向き合ってみたところ、これが、どの曲も真剣で、すごく素敵に聴こえるんですよ。


尾崎のファーストアルバムは、1983年発表の、『十七歳の地図』です。

アルバム制作時、尾崎はまさに十七歳。まだ高校生でした。


それを踏まえてこのアルバムを聴くと、彼がいかに早熟の、しかも完成された歌手だったかがひしひしと伝わって来て、驚かされます。


作詞、作曲が、すべて尾崎本人、というのも、完成度の高さも相まって度肝を抜かれます。


歌詞についても、若いころに聴いたような反発心は、あまり感じません。

むしろ、無理解な大人への不信感や、反抗的な態度を美化する姿勢さえ、生き生きとしていて良いな、とさえ思います。


尾崎の歌は変わっていないので、これは、私が、長い年月の間に、変わったわけです。


当時の私には、自分自身の若さゆえに、若さから来る未熟さを、おおらかに受け止める度量が、なかったんでしょうね。

そして、歳を重ねて、ある程度社会経験を積んだ今になって、ようやく、尾崎の歌ったような感情は、多くの人が若いころに感じる事で、普遍性があるんだ、という事や、尾崎もそれを分かった上で作詞していたんだ、という事に気が付いたのです。


もっと早くに気が付けたら良かったのに、とも思いますが、ずっと知らないままでいるよりは、今、気が付く事ができた事に、感謝しないといけません。おかけで、尾崎の素晴らしい曲の数々を、これから新鮮な気持ちで堪能する、という事ができるわけですから、ね。


ちなみに、ファーストアルバムは、バックバンドの演奏も見事で、洋楽の聴き応えとそん色ないのが素晴らしいです。


「I LOVE YOU」は、ファーストアルバムに、「Forget-me-not」は、サードアルバムにそれぞれ収録されています。




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