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音楽エッセイ『こんな音楽いかがでしょう?』  作者: Kobito


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第21回 最近聴いているアルバム 少年ナイフ『Burning Farm』

折に触れて話していますが、私は洋楽が好きで、特に、クラシック、ジャズ、ロックの一昔前の作品を、毎日のように聴いています。

一方で、日本の音楽にはあまり強い関心が持てず、スーパーの店内放送で流れるヒット曲をかろうじて知っている程度の知識しかありません。


ただ、最近は、日本語で歌われるロックを聴きたいと思う事が時々あり、昔から気にはなっていたけど聴き込む事なく過ごして来た日本のアーティストの音楽を、あらためてきちんと聴いてみたりもするようになりました。


今日紹介するのは、そんな日本の音楽シーンに無案内な私が、いろいろ聴いて行く中で、特に良いなと思った、洋楽好きでも満足できる邦楽アーティストの傑作アルバムです。


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少年ナイフ『Burning Farm』(1983年)


女性3人組のロックバンド、少年ナイフのファーストアルバムです。

バンド名の印象から、尖った感傷的な音楽性を想像しますが、実際はほのぼのした歌詞をシンプルなリズムに乗せて聴かせる「ギャップ萌え」的な魅力のあるガールズバンドです。


このバンドを知ったのは、ニルヴァーナのカート・コバーンが好きなバンドと言っているのを雑誌で読んだのがきっかけです。

海外のロックミュージシャンが日本のバンド名を具体的に挙げて好きだと公言するのは、非常に珍しい事です。

しかも、これが日本のファン向けのリップサービスでない証拠に、カートは少年ナイフを、ニルヴァーナのツアーの前座として招待してさえいます。


ただ、そういう情報に接して興味がわいて、試しに聴いてみた時は、どうも緩いパンクの真似事のような単純で幼稚な内容に感じて、まったく良いとは思えませんでした。

(たぶん、聴いたのは1992年発表の5枚目のアルバム『Let's Knife』だったんじゃないかと思います。)


それからずいぶん年月が経って、私も音楽体験をさらに重ねる事で、昔良さが分からなかった音楽を楽しめるようになる、という、守備範囲の広さが出てきました。

そこで、当時苦手に感じた少年ナイフですが、良さが分かるようになったかもしれないと、淡い期待を抱いて、もう一度チャレンジしてみる事にしたんです。

まずは、バンドの基本的な方向性を理解するために、ファーストアルバム『Burning Farm』から聴いてみたんですが、ちょっと良さが分かる程度になったかな、という私の予想に反して、これがすごくクールで充実していて、滅茶苦茶カッコ良いんですよ。


この印象の大幅な変化は、再チャレンジで聴いたのが、円熟期のアルバムではなく、出発点のファーストアルバムだった、という事が大きいです。


何しろ、ファーストアルバムこそ、少年ナイフの良さが余すところなく発揮された最高傑作だったのですから。


ギター、ベース、ドラムス、ボーカル、という、必要最小限のバンド編成で、しかもオーバーダブもほとんど用いないシンプル極まりない曲構成でありながら、まったく不満を感じない充実した完成度の高さを味わえる。

セックスピストルズの亜流のような似たり寄ったりのパンクバンドが多い中で、ほのぼの系のパンクという唯一無二の音楽性を楽しめる貴重さ。


そして何より、女性のみのメンバー構成とは思えない、パワフルで濃密な器楽演奏の腕前。


これが、セカンドアルバム以降になると、シンセサイザーの音色が加わって甘くなり過ぎたり、ドラムスの勢いで聴かせる平凡なパンクバンドの型にはまってしまったりと、私が求める個性や土着的な素朴さの魅力が十分には味わえなくなってしまいます。


「ミラクルズ」「パラレル・ウ・マン」「Twist Barbie」など、英語と日本語が対等に織り込まれた、素朴で自由な歌詞の面白さ。


「象のパオパオ」「Watchin' Girl」などに見られる、女性だからこそ放ち得るソフトで蠱惑的こわくてきな雰囲気。


ガールズバンドにありがちな、れたれたのラブソングが一切ないというのも、彼女たちの孤高のユニークさを物語っています。


全曲名演の、すごいアルバムです。


上記の理由もあり、この紹介で少年ナイフに興味がわいた方は、ぜひ、ファーストアルバム『Burning Farm』から聴いてみてほしいです。

洋楽に負けない力強いサウンドと、適度に抑制されたユーモア感覚、今でもまったく古びない音楽センスの良さに、驚嘆させられること間違いなしです。


ただ、これほど素晴らしいバンドなのに、日本よりも海外での知名度の方が圧倒的に高い、という現状があります。

デビュー間もなく、アメリカとイギリスのレコード会社に見出されて、海外でのレコード販売や有名ラジオ番組(BBCの名物司会者ジョン・ピールのロック番組)への出演が積極的に行われた事が影響しているようです。


大衆受け狙いの当たり障りのないJ-POPの枠に収まらない、洋楽志向の聴き応えと骨のあるバンドなので、日本よりも海外で受けた事もうなづけます。


しかし、日本が世界に誇るロックバンドが、日本人にあまり知られていないというのは、とても悲しい事です。

私だって、まだ真価を理解して日が浅いんですが、特に洋楽パンク好きの方には、必聴と言っても過言ではないお勧めアルバムなので、何はさておき、この機会をとらえて聴いてみてもらいたいです。



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