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音楽エッセイ『こんな音楽いかがでしょう?』  作者: Kobito


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第18回 音楽コラム『ロックの歴史』番外編 コラムであまり語られなかった凄腕ギタリストたち特集 その1 ゲイリー・ムーア

今回は、音楽コラム『ロックの歴史』の番外編として、コラム内であまり語られなかった凄腕ギタリストの名演について、ご紹介してみようと思います。


音楽コラム 『ロックの歴史』 -時代を彩る名ミュージシャンたち-のURL

https://ncode.syosetu.com/n5901ee/


『ロックの歴史』では、ロックミュージックの発展に寄与した貢献度の高いミュージシャンを厳選して紹介したので、有名でファンも多いけど紹介されなかったミュージシャンというもの、数多く生じる事になりました。


また、それほど名前は知られていなくとも、ギターの力量の点で、決して有名どころに引けを取らないギタリスト、というのも、あまた存在します。


そんな中から、皆さんにぜひ聴いてもらいたいギタリストを10名ほど選出して、何回かに分けて、代表的名演、名盤と合わせて、ご紹介して行こうと思います。

世界中のギターの達人の中から選りすぐった選出なので、いずれも本編に登場したギターヒーローに負けず劣らず、時代を越えて聴き継がれるに値する、味と深みのあるギタリストがそろっています。


『ロックの歴史』で紹介したミュージシャンに飽き足らず、もっといろんなギタリストに出会いたい、という方がいれば、この番外編を道先案内として役に立てていただければ幸いです。


また、すでにロックに詳しくて、いろんなミュージシャンをご存じの方であれば、「やっと自分の好きなギタリストが紹介された!」と、喜んでいただけること請け合いです。


さあ、それでは、さっそく、ロックの新たな探訪の扉を開いて行きましょう。


第一回目は、一番好きなギタリストに挙げるロックファンも多い、ゲイリー・ムーアです。



----------☆------------☆------------☆---------------




ゲイリー・ムーア (Gary Moore、1952年-2011年)


北アイルランド出身で、哀愁ある泣きのギターサウンドと、超速の速弾きが特徴のロックギタリストです。

テクニックの基礎には本格的なブルースへの愛着があり、若い頃はニューウェーブ系のハードロック路線で人気を博しましたが、晩年には好きなブルースに積極的に取り組むようになりました。


ギターを泣かせるという表現力に関しては、マイケル・シェンカーと双璧の腕前で、特にメロウな曲調が好きな傾向のある日本人に非常にファンが多いという点でも、共通しています。


また、速弾きのテクニックや安定感は、同時代に数多く登場した速弾きを売りにしたギタリストの中でもトップクラスで、あまりにも自然に曲にフィットさせるため、超絶的な技巧の演奏にもかかわらず、流れに乗せられて、うっかり聴き流してしまうほどです。


一般的に代表的名盤とされているのは、1987年発表のアルバム『ワイルド・フロンティア』です。

私も、このアルバムが彼のベストだと思います。

佳曲揃いで、哀愁があり、力強く、アドリブや速弾きの冴えも極まっており、彼の持ち味がいかんなく発揮されています。


普段の彼のストレートなハードロックやブルースとは異なる、アイルランドの伝統音楽のメロディを生かしたところに、音楽的成功の秘訣があるようです。


ただし、私はこのアルバム以外の彼のアルバムは、あまり聴くことがありません。

素晴らしく上手いギタリストではあるんですが、メロディーラインが常套的になる事が多く、斬新さの刺激を求める私には、そこが少々物足りなく感じられるからです。


また、『ワイルド・フロンティア』にも、若干の欠点があります。

それは、ドラムスにコンピューターによる打ち込み、〝ドラムマシン〟の演奏を採用した事です。


当時の技術水準としては、まったく違和感のない素晴らしい打ち込みに仕上がってはいるんですが、やはり、人間が奏でる微妙な表情付けを含んだ演奏とは異なる、正確だけれど平坦なドラム演奏は、カラオケ伴奏に合わせてギターを弾いているような、一種の味気無さにもつながっており、これが、この名盤が今一歩突き抜けた高い評価を得られない理由にもなっているようです。


こんな風に、ゲイリーは素晴らしい音楽センスや腕前を持ちながら、それをプロデュースやバンドメンバーの構成といった外的要因で十分に生かし切れていないところがあって、もったいないなと感じる事がよくあります。


逆に言うと、すべての条件が良好にかみ合った時の彼は、まさしくギターヒーローそのものの凄みを体現します。


私が、彼の数ある演奏の中で、最高だと思っているのは、1990年、モントルー・ジャズ・フェスティバルにおける「メシア再び(The Messiah Will Come Again)」です。


この演奏は、DVDと、今ではCDでも鑑賞できるんですが、とにかくギターの音色が凄まじく切なくて美しいんです。

ブルースを深く愛する人だけが奏でられる、真実の悲しみの咆哮の音色です。


切々と染み入って来る哀愁のメロデが、徐々に感興を高めて行き、やがて始まる多様なテクニックを駆使した怒涛の速弾きパートの、思わず顔をゆがめてしまいそうになる激しく壮絶な盛り上がりが、聴き手を圧倒し、魅了し尽くします。

始めから終わりまで、伴奏も含めて一分の隙もない、完璧な演奏です。


この、「メシア再び」は、1988年に亡くなった孤高のギタリスト、ロイ・ブキャナンの愛奏曲としても知られているんですが、きっとゲイリーの演奏は、ロイへの追悼の気持ちも込められているのだろうと思います。

ところどころで、ロイそっくりな硬質なピッキングのトーンが再現されています。


この名演を聴くと、ミュージシャンの本当の実力をスタジオアルバムだけで評価する事の難しさが分かります。



「メシア再び」が聴けるCD

・ゲイリー・ムーア『ジ・エッセンシャル・モントルー』(2009年発売、5枚組。1990年から2001年までのモントルーでのライブ演奏の模様が収められています。)



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