第16回 最近聴いている音楽のご紹介 スキャットマン・ジョン
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
さあ、2021年が始まりましたね。
年明け一発目の投稿は、あんまり読者さんはいないけど、自分では楽しんで書いているこのエッセイ連載にしました。
音楽の世界はどこまでも広く本当に豊かで、好みのジャンルだけに絞っても、語っても語っても語り尽くせません。
そんな大洋の恵みのような音楽の中から、今回は、ある程度の年代の人にとっては「懐かしい~」となるであろう、一人の印象的なミュージシャンをご紹介します。
最近、あらためて聴き直す機会を得て、その音楽的資質の高さに気が付いた、才能豊かでダンディなボーカリストです。
スキャットマン・ジョン
『スキャットマンズ・ワールド』(1995年)
『エブリバディ・ジャム!』(1996年)
1990年代半ばに、すい星のように現れて、世界でも日本でも大人気になった、スキャットという楽器演奏のようなボーカルスタイルを持ち味にした心優しき中年紳士、スキャットマン・ジョン。
当時、日本のプッチンプリンのテレビCMなどに出演して、お茶の間でも一躍おなじみになった人です。
スキャットは、ジャズのテクニックとして、ルイ・アームストロングが1920年代に編み出した歌唱法です。
「ドゥビドゥバ」とか、「ダバダバ」とか、「パッパラッパー」とか、意味をなさない言葉をつなげてメロディーラインを紡いでいく、これが、スキャットの基本です。
今では、音楽で当たり前に用いられるテクニックなので、聴いたことがある人も多いでしょうね。
でも、スキャットマン・ジョンの凄いところは、これを主軸のテクニックとして用い、しかも超高速で歌いこなすという、従来のスキャットとは一線を画する水準にまで発展させた事です。
当時も、テレビなどで背広に中折れ帽の小粋な姿を見かけるたびに「かっこいいおじさんだなぁ」と、感心しながら見ていましたが、あらためて今、彼の音楽を聴き直してみると、これが全く古びていないのに驚かされます。
アレンジャーが、よほど才能のある人だったんでしょうね。
基本は打ち込みの均一なリズムなんですが、スキャットと、彼のもう一つの特技であるラップという声による至芸を存分に楽しめるように効果的に配置しながら、ピアノやラッパの生演奏を織り交ぜるなどして、飽きの来ない奥深い味わいを生み出しています。
彼は子供の頃から吃音(どもり)に悩まされて来たそうで、スキャットならそれを気にせずに歌えるという事で、自分の歌唱法に取り入れて行った、という事です。
メジャーCDデビューは1995年、彼が52歳の時の事です。
人生の苦労や、障害を経験している事から来る他者への優しさが歌声ににじみ出ていて、聴いていて終始心地良いです。




