幸福
読んで戴けたら倖せです。
萩が寝室を覗くと身体を小さく丸め緋曖はガタガタ震えていた。
「緋曖、布団ある? 」
緋曖は萩の姿を認めると弱々しく笑った。
「クローゼットに……ある…………………」
緋曖の声は寒気に震えていた。
萩はクローゼットから布団を取り出すと緋曖の身体を包む様に掛けた。
「しまったな、湯タンポまで頭回らなかった」
緋曖の震える手が萩の指先を掴んだ。
「布団掛けても駄目………みたい……………………
萩、温めて………………」
萩は一瞬躊躇したが、直ぐに風が入らない様に気を配りながら緋曖の横に潜り込み、丸めた緋曖の身体を抱いた。
「有り難う……………………」
緋曖は萩の胸に額を押し付けた。
萩の温もりを感じながら、襲っていた巨大な不安が薄れて行くのを感じて緋曖は目を閉じた。
やがて緋曖は安堵と共に眠りに堕ちて行った。
手持ち無沙汰の萩は意味も無く緋曖の頭を撫でた。
やがて緋曖の身体は温まり、緋曖は縮籠めていた脚を無意識に伸ばして行った。
萩の胸に押し付けていた額を離し、萩の顔のすぐ傍に緋曖はその綺麗な顔を置いた。
萩は困惑した。
緋曖の背中に手を当てると燃える様に熱くなっていたので、そっと起き上がって抜け出そうとした。
緋曖の手が萩の腕を掴んだ。
振り返ると緋曖は虚ろな目で萩を見詰め、消え入る様な弱々しい声で言った。
「行かないで…………………」
そう言った緋曖の目は熱で潤み例えようも無いほど艶かしく、萩はドキリとした。
仕方無く緋曖の頭の傍に腕を回し、緋曖の髪を撫でた。
緋曖の熱い手が伸びて萩の頬に触れた。
緋曖は艶やかな瞳を震わせ萩の目を見詰め、その瞳を閉じ、萩の口唇に口付けた。
萩は驚くが、口唇の柔らかな感触と緋曖の匂いに頭が麻痺して目を閉じた。
口唇を離すと二人は見詰め合い、せきを切った様に口唇を重ね、舌を絡ませ、互いの肌をまさぐった。
熱で肌が過敏になっている緋曖は、萩の愛撫に敏感に反応した。
萩の身体は熱く火照り素直に緋曖を求めていた。
「緋曖!
裸で走り回ったりしたら、折角下がった熱が振り返すって! 」
「自分だって裸だよ! 」
ベランダから朝陽が差し込むリビングで走り回る裸の緋曖を萩は裸で追い駆けていた。
二人はソファーを挟み、右に出たり左に出たりして牽制しあった。
萩は緋曖の手首をやっと掴むとソファーを飛び越えて、逃れようとする緋曖を後ろから抱き締めた。
「捕まえた! 」
「あーあ、捕まっちゃった」
緋曖は脱力したが直ぐに振り返ると萩の首に腕を絡めて口付けた。
二人は抱き合って、心行くまで舌を絡め合った。
萩は緋曖の身体に愛撫し始めた。
「萩、こんな処でしたら身体が痛くなっちゃうよ」
緋曖は虚ろな目をして気だるく言った。
「だったらベッドに戻ってよ」
萩は愛撫しながら言った。
「愛してる、萩」
緋曖は恍惚とした表情を浮かべ、萩の愛撫に受け応えた。
「オレも愛してる………………」
二人はまた口唇を重ね合わせた。
緋曖はかつて無いほど倖せだった。
人を求める事が、愛する事がこれほど倖せな事なのだと、緋曖は萩に愛し愛される事で初めて味わっていた。
萩は隙を突いて緋曖を抱き上げた。
「萩! 」
萩は笑って言った。
「病み上がりなのに、暴れ回ったお仕置き」
「んーー、逆襲ーぅ」
緋曖は萩の肩に腕を回し、首筋を容赦無くキス攻めにした。
萩は緋曖をベッドに寝かせて、その上に覆い被さった。
「逆襲の逆襲ぅ」
萩は緋曖の全身にキスの雨を降らせた。
萩が緋曖の欲情している場所を口唇で捕らえると、緋曖は起き上がって萩の頭を手で愛撫した。
やがて呼吸を乱した緋曖の口からエロティックな声が漏れ始め、絶頂感と倖福にゆっくりと身体を仰け反らせて行った。
読んで戴き有り難うございます。
こうして、改めて打ち込んでいると、ちょーっと緋曖の感情が急だったかなあ、と反省しています。
もう一つ緋曖が萩の優しさに影響を受けて惹かれて行く様なエピソードを盛り込んでも良かったかなあと………うーん……………。
どう思います?
後二話です。
最後までお付き合い戴ければ倖せです。