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壊れた緋色  作者: 楓海
8/11

罪悪感

 読んで戴けたら倖せです。

 今日も萩と緋曖はN市に行き、聞き込みした。


 手掛かりなど在る筈も無く、徒労の一日は終わり、帰りに駅に向かう途中で雨が降りだした。


 駅に着く頃には二人共すっかりずぶ濡れになっていた。


 汽車に乗り街に着くとやはり雨が降っていて、二人はタクシーに乗った。


 タクシーを降りると追われる様に玄関に飛び込んで、萩は犬がするように首を振った。


 緋曖は手のひらで防御して笑った。


「萩!

 冷たい! 」


 萩は目を丸くして、謝った。


「萩、じゃんけん! 」


「え? 」


 緋曖は構わず言った。


「最初はグウ、じゃんけんポン! 」


 萩は思わずグウを出した。


 緋曖はパーだった。


 パーの手を掲げ、はしゃいで緋曖は叫んだ。


「やりい!

 勝ったから、ボクが先にシャワー浴びるよ! 」


 緋曖はバスルームに飛び込んで行った。


 残された萩はきょとんとしていたが、直ぐに状況を飲み込んで笑った。


 萩は取り敢えず濡れた髪を拭いて、服を乾いた物に着替えてから夕飯の支度に取り掛かった。


 炊飯器が湯気を盛んに吹き上げる頃、緋曖はすっきりした顔をしてバスルームから出て来た。


「萩も早くシャワー浴びるといいよ」


「そう?

 夕飯の支度、ひと段落着いたから、今浴びちゃおうかな」


「それがいいよ」


「じゃあ、そうする」


 萩がバスルームからシャワーを浴びて出て来ると、疲れたのだろう緋曖はリビングのソファーに膝を抱え、背凭れに全身を預けて眠り込んでいた。


 連日N市に行っては、手当たり次第建物に入って不確かな情報を求めて訊いて回るのは楽な作業では無い。


 しかも緋曖にとっては、まるで関係の無い話しである。


 萩は感謝を籠めて緋曖を見詰めた。


 緋曖は疲れて無心に眠っている。


 俯く緋曖のシャツの襟から細い首と白い肩が覗いている。


 薄茶色の影に染まった瞼と濡れて紅く光る口唇。


 何もかもが萩の目を惹き付けて離す事ができないほど美しく、男とは思えないほど(なまめ)かしかった。


 萩は眠る緋曖の横に座ると、緋曖の寝顔を暫くの間見詰めた。


 萩の指先が恐る恐る緋曖の顔に伸びて、そっと緋曖の紅い口唇に触れた。


 眠っていた緋曖の眉間が動いて、萩は手をひっこめ立ち上がった。


 緋曖は目が覚め、状態を起こして伸びをした。


「そんな処で寝てると風邪ひくよ」


 萩はキッチンへ行って夕飯の支度の続きを始めた。


 食事の用意ができると緋曖ははしゃいで言った。


「毎日、食事が凄く楽しみなんだ 

 食べる事が、こんなに楽しい事だなんて知らなかった

 萩、毎日有り難う」


 緋曖は椅子に座ると料理を目を輝かせて見ていたが、急に気の無い顔をして椅子の背凭れに凭れ、溜め息をついた。


「どうしたんだろ?

 凄く美味しそうなんだけど、食べる気がしない…………」


 萩は緋曖の顔を見て立ち上がった。


「緋曖、顔が赤い」


「ん? 」


 緋曖はきょとんとしている。


 萩は緋曖に近寄ると手のひらで緋曖の額に触れた。


「酷い熱だ

 こんだけ熱いって、三十九度は在るよ」


 緋曖は瞳を上に向けた。


「手を当てただけで体温まで解るの? 」


「美緒がよく熱だしてたからね、だいたい解るんだ

 体温計何処? 」


「そんなもの無いよ」


「水枕は? 」


「それも無い

 男の一人暮らしだよ、そんな気の効いたもの無いよ」


「とにかく、あったかくして寝なくちゃ」


 萩は緋曖が立つように背中に手を当て(うなが)した。


 緋曖は立ち上がるとふらついた。


「あれ、地面が揺れてる」


「そりゃそうだろ、熱あるんだし」


 緋曖を寝室に誘導しながら萩は言った。


「オレ、風邪薬買って来るよ」


「財布なら、ソファーの傍のテーブルに置いてある」


「解った」


 萩は緋曖をベッドに寝かせると毛布を掛けた。


 その時、緋曖と近い距離で視線がぶつかった。


 緋曖の視線が絡み付く様に萩の目を見詰めた。


 萩はそれを振り切る様に言った。


「とにかくここで寝てて

 直ぐ戻るよ」


 萩は出掛けて行った。


 言われてみれば、少し寒気がする様な気がしてきた。


 次第に寒気は酷くなって行き、黙っていても身体が震え出した。


 二人で居る事に慣れてしまっていた緋曖は一人で居る事が不安になって来た。


 眠る事もできず、こんな時に限って狂わせて来た女たちの顔が浮かんだ。


 萩の妹、篠崎美緒の顔も浮かんだ。


 それまで緋曖は女たちを狂わせた事に欠片の罪悪感も湧かなかった。


 だが、二人で居る事に慣れ過ぎた緋曖は、このささやかな孤独の中で自分がしてきた事に戦慄(わなな)いた。


 自分が楽しむだけの為に好きでも無い女たちに愛を語り、金を巻き上げ、面倒くさくなると少しの躊躇も無く狂わせて捨てた。


 緋曖は言い知れない不安が襲いかかって来るような恐怖を感じて更に震え、身体を縮籠めた。


 それが何なのか緋曖自身にも解らない。


 解らないからこそ、余計に怖かった。


 萩の帰りが待ち遠しい。


 一分が百倍にも感じる。


 緋曖は硬く目を閉じ、萩の帰りを待ち侘びた。





 読んで戴き有り難うございます。

 あと、三話です。

 最後までお付き合い戴けたら嬉しいです。


 パソコンが我が家にきてから、誰も触る事無く二年の月日が流れ、勿体無いなあと思って、どうせネットに繋がってないし、変な処に繋がる心配もないだろうと、弄りたおして音楽聴けるようにしたり、DVD観たりできる様にしました。

 その内、小説も書けるようになったのですが、弄っている内にオプションの一つが消えて、探してる内に訳解らんことになって、原稿が見づらい事になってしまいました。

 弄れば弄るほど、こじれて見づらい事この上無い事になってしまって。笑

 解らん奴は弄るなって事なんでしょうね。笑

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 先行きが楽しみなような怖いような。 初めての感情に緋曖自身が戸惑っているのでしょうね。
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