妹
読んで戴けたら倖せです。
夕食の後、緋曖はソファーに座ってお気に入りのマルグリット・デュラスを読んでいた。
食器を洗い終えた萩が向かいのソファーに座ると緋曖は本から目線を外して萩を見た。
「ご苦労様」
萩は緋曖に笑い掛けてから、膝を摩り室内を見回した。
どうやらする事が無くなって、手持ち無沙汰になった様だ。
緋曖は本を閉じた。
『しょうがないなあ、興味無いけど……………』
「ねえ、萩と妹さんてどんな兄妹だったの? 」
萩は背筋を伸ばして緋曖を見た。
「オレと美緒ですか? 」
「うん
妹さん、美緒さんて言うんだね
ボク、兄弟って居ないから羨ましくて」
萩はソファーの背凭れに背中を預けると指を組んで話し始めた。
「美緒とオレは二人きりの兄妹で、両親を早くに病気で亡くしたから、一時期別々の親戚に預けられて離ればなれだったんです
オレと美緒は七つも歳が離れてて、妹だからほんと可愛くて仕方無かった」
萩は目を細め倖せそうに笑った。
「だから、離れて暮らしてるのがほんと辛かった
介護士になって自立してから、オレは直ぐ中学生だった美緒を引き取ったんです
それから美緒が大学卒業するまで一緒だった
あいつ、離れていたせいか妙にオレに気を使うとこあって、自分で働く様になると一人で暮らす様になったんです
随分説得したんですけどね
美緒が結婚するまでは一緒に暮らそうって
でもあいつは、よっぽどオレに気兼ねみたいなのがあったのか、一人で暮らすってきかなかったんですよ
その代わり兄妹デートはよくしてました
二人で遊園地に行ったり食事したり、毎日の様に電話で話した
そいつと付き合う様になった頃の美緒は本当に倖せそうで、逢う度に綺麗になって行った
何度か逢わせろって言ったんですけど、彼が嫌がるからダメと笑ってた
今思えば兄貴にも逢いたがらない奴がまともに美緒と付き合ってる筈も無かったんだ
無理やりでも逢っておけば良かった
後の祭りだけど………………」
緋曖は言った。
「美緒さんが羨ましい
そんなに萩に愛されて
ボクも萩みたいなお兄ちゃんが欲しかったな」
緋曖は哀しげに笑って見せた。
「オレは大した兄貴じゃ無いですよ
あいつをグズ野郎から守ってやれなかった」
萩は目を伏せ、拳を震わせた。
「そんな事無いよ
萩は凄く妹想いのいいお兄ちゃんだ
だから、妹さんの無念を晴らそうと、こんなに頑張ってるんじゃない」
緋曖は立ち上がって言った。
「ボク、そろそろ休ませて貰う事にするよ
慣れないスーパーで疲れたみたいだ」
「すみません、気付かないで長々と」
「大丈夫
お休み、萩
テレビは自由に観て構わないから、リラックスするといいよ」
「あ、有り難うございます」
緋曖は寝室に入って閉めたドアに凭れかかった。
『キミの妹はつまらない女だった
ボクをいつも束縛しようとやっきになっていつもボクをイラつかせ、事あるごとに不安になって「私の事好き?」と訊いて、うんざりさせるのが得意だった』
読んで戴き有り難うございます。
今、この「壊れた緋色」と「ラプンツェルの接吻(修正版)」の二つを連載させて戴いてますが、体調的にきついと言う事で、「壊れた緋色」の連載が終わるまで「ラプンツェルの接吻(修正版)」の連載をお休みする事になりました。
楽しみに読んで戴いてる皆様にはご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します。




