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1.感動の?再会

 彼女の葬式には行かなかった。いや、行けなかった。

広い部屋の片隅で蹲り、絶望に浸っていた。

冬華が亡くなった知らせを聞いてから、ずっとこのままだった。

僕が彼女を殺した。そうとしか考えられなかった。

冬華は僕の彼女で、僕の家に来たとき珍しく喧嘩をしてしまった。そして、その帰り、彼女は交通事故で亡くなった。


「今日はもう帰ってくれ。」


僕が放ったこの言葉がズキズキと、僕を痛めつける。

言わなければよかった、と後悔しても彼女は帰ってこない。


 カーテンの隙間から光が差し込んでくる。

無意識に足が動いた。

ここは二階。死ねる、かもしれない。

重い足取りで窓に近づく。

すぐそばに立った瞬間、カーテンが揺れ動いた。


「つかさ。」


聞きなじみのある声が僕を呼んだ気がした。

幻聴だろうと思ったが、一応後ろを振り向く。


「つーっかーさ!」


独特な名前の呼び方。揺れ動くグレーの長髪。愛おしかったあの笑顔。

見られることを望んでいた、半透明の姿。

幽霊となった彼女、冬華がそこにはいた。


 「ごめん!」


彼女と再会できた、僕の第一声だった。

嬉しさが込みあがってきたが、まずは謝らなければならないと、

僕の本能が言っていた。

付き合ってから一度も見せたことのない涙が溢れてくる。

そのせいで視界が曇り、半透明な彼女も見えない。


「なんで謝るのさー。むしろ悪いのはわたし!死んじゃってごめんね。」


死ぬ前の喧嘩が無かったかのように、彼女は陽気に話していた。

涙を拭きとってみると、彼女との距離が近くなっていた。


「ほら!会えたんだから元気、だして!」


彼女はいつも通りの明るい性格で、たくさん口を動かす。

そのおかげで少し落ち着いたのか、僕の中で急にたくさんの疑問が浮かび上がってきた。

彼女の言葉を遮って、僕は問いかけた。


「ど、どうして幽霊になってここに?」


「どうしてって…。気づくと幽霊でー、つかさの家の前にいてー。

 つかさに会いたかったから?

 多分わたし、つかさの守護霊なんだと思う!」


「えー…。普通に考えて、冬華。

 お前、成仏できてない幽霊、悪く言えば悪霊になってるぞ。」


「あ、悪霊!?そ、それってこの世ではやばいやつじゃ…。」


彼女は多分、この世に心残りがあってこうなったのだろう。

きっと明るく振舞っているのも演技。彼女自身も気づいているだろう。

少し、揺さぶりをかけてみるか。


「冬華。自らで成仏するか、お寺の人に痛ーく成仏されるか、

 どっちがいい?」


彼女の表情が少し、ゆがんだ。そして、焦りも見え始めた。ごまかそうとしている返事も動揺している。


「冬華…。かくしごとは…?」


「しない約束ですね!ごめんなさい!!」


「はい。よろしい。」


こうして、いつも通りの様子で、僕と冬華の会話が始まった。

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