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研究者の憂鬱  作者: ヴィエルジュ
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第一話 天才は辛い

 ぴちゃん、ぴちゃん。

 静かな研究室に水音が響く。

それはフラスコの中に少しずつ液体が落ちる音。

フラスコの中身は紅く光り。落ちる液体は水色をしている。

紅い光を放っていた液体はやがて紫色へと変わり、水色の液体を入れ終わると紫色へ変化した液体は静かに存在していた。


「・・・成功だ」


研究者は静かにその液体を眺める。

少女と言っていい身長にぶかぶかの白衣、白銀の髪にキラキラと光る金色の瞳。

彼女こそこの研究室の主であり魔術の研究に勤しむ研究者の一人である。


「イグニス、例の物は出来たのか」


 ガチャ、と扉が開き、ある人物が研究室に入る。

その人物は紺色の軍服を身に纏っており、見た目からは厳しい様子が伝わってくる。

イグニスと呼ばれた白衣の少女はその人物に向き合い、ガラスの瓶に入れた液体を見せた。


「やぁカエルム、丁度今出来たところだよ、飲めば状態異常は全て回復する、この僕が作ったんだから

 性能は保証するさ」


イグニスは調子よくそういう、それに対しカエルムと呼ばれた軍人は溜息を吐き呆れたように額に手を当てる。

それを見たイグニスは不満そうにカエルムに迫り、その巨体に体当たりをかました。


「ぐっ・・・何するんだ」


「君が僕を馬鹿にするような事するからだよ」


「意味が分からん」


カエルムは突然の衝撃に体が揺らぐ、三十センチほどの体格差があるにしても、イグニスの速さも相まって相当な威力になったようだ。

満足そうに笑うイグニスに、カエルムはこれ以上関わるのは面倒だと思い、薬を受け取ると研究室を後にした。



 一人になったイグニスは、机に向かい、ペンを持った。

彼女の仕事は研究だけではない、研究により生み出した物を一般人にも作れるようにレシピ等をまとめたレポートを書かなければならない。

そのうえ彼女には理解できる内容でも一般の薬屋に理解できなければ意味がないため余計に手間がかかるのだ。

イグニスは研究自体は好きだがレポートは嫌いである。

これで大丈夫かと提出しても、これでは理解出来ないと何度も駄目出しを喰らう。


「天才は辛いな」


そう苦笑いを溢しながらイグニスは真面目に仕事に取り掛かった。

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