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溺愛の伝え方  作者: 小夜時雨
灰色結婚生活
12/25

11.職権濫用

「君は、馬鹿なのかい?」



その翌日の昼、また不機嫌オーラが舞い戻ったアルフレドに事情を聴くと、ユリウスは一言だけそう呟いた。


真っ当な意見である。



「どうしてこうなるんだ…。」


「そんなの君が10年拗らせた結果だろう?

そのうちどこの馬の骨とも知れない男に掻っ攫われても知らないよ〜?」



それを案じてのほぼ軟禁なのである。


今日の朝もミリアムに見送られ、きっと今日の仕事終わりにも彼女に出迎えられる。

食事時のリリエッタのドレスはきっとまたあの3着のどれかであろうし、すっかり元気になったのできっとまた使用人の部屋に引きこもってしまうことだろう。


これではいけない、なんとかしなくてはならない。


そうは思うのだが如何ともしがたい。

しかしこれ以上の事態悪化は防ぎたい、アルフレドが知らないだけで別居や離婚さえ視野に入れられているかも知れないのに。


そう考えると例のごとく胃がきりりと痛んだ。


彼女のこととなると驚くべきメンタルの弱さである。



「手を繋いだこともないって、言ってたね君は。


じゃあデートなんかにも誘ったことないんですか?」


「でーと……?そんなもの、誘えるものなら毎日誘う……。」


「じゃあ今誘いましょう。思い立ったが吉日ですよアルフレド、君の優秀な頭なら今から仕事をしながらでもデートプランを考えられるだろう?」



なんといってもユリウスは行動が早い。

曖昧な返事しか返さないアルフレドを横目に淡々と仕事をこなしながら、過去に行ったデートプランの話をし始めた。


もちろん、全員同じ女性ではないことは窺い知れた。


やるならとことんやろう、とアルフレドも腹を決め、先日の花屋のごとくあれやこれやとデートプランを練りに練った。

不思議なことにこの男たちは女性の話をしている時に仕事の能力を発揮するので、本日も16時に全ての仕事が終了した。


明日は休日である、雲の流れも快晴を物語っていて絶好のデート日和となりそうだ。

問題はちゃんと誘えるかどうが、といったところだがそれはちゃんと対策済み。


ユリウスの案で手紙に認めることにした。

これなら余計なことを口走りプランが潰えることもないだろう。

流石の手練れで誘い文句がスラスラと出てくるユリウスに、逆に感心したようにアルフレドは手紙を何度も読み返した。



「まあ後はこれを使用人に渡してもらって、君は極力何にも喋らないことかな!」


「なになに、なんだい手紙を出すの?」



急に割って入った女性の声に、コソコソと話をしていた2人は肩を揺らして振り返る。

そこには、満面の笑顔のこの国の姫が腰に手を当て仁王立ちしていた。



「ベアトリス…わざわざ何の用だ?」


「あっはっは!私にそんなものいいをするのは君くらいだよアルフレド!」



あいも変わらず豪快な笑い声を上げ、ベアトリスはアルフレドの肩をバンバンと叩いた。


確かに幼馴染とは言え一介の公爵と一国の姫では身分に差がある。

だがその身分差を気にしない無遠慮なところを、ベアトリスも気に入ってはいるのだ。


別段不敬を改めさせることもなく、ベアトリスはズイズイと2人の間に割って入って堂々と声高に言った。



「城の針子を総動員させてリリエッタのドレスを作らせたんだ!

ちょっと人の手で持っていける量じゃあないから、外に荷車と馬車を待たせてあるよ。


残念ながら私は君の家まで行けないけれど、是非是非着せてやってくれ!じゃあな!」



それはもう嵐のような急さだった。


言いたいことだけ言ってすぐ去ってしまったベアトリスの背を追い外へ出ると、確かに人の手で持っていけるレベルではない量のドレスが箱詰めされ、荷車に乗せられるだけ乗せられていた。



「……御誂え向きなんじゃない?」



ユリウスはニッと笑って言った。


デートは明日、これも神様の思し召しか背中を押されているようにも感じるアルフレド。

いや一国の姫が財力と権力を濫用し何をしているんだという感想は今は置いておいて。


とはいえ自分からの贈り物でない分リリエッタに素直に渡しやすいのは有難い。

積み上がる荷物を見上げると、半分ため息混じりに呟いたのだった。



「これだけあると選ぶのに骨が折れる…。」








「おかえりなさっせご主人〜…て、なんですその荷物。」



本日も出迎えよろしく後ろの荷物にギョッとした顔を見せるミリアム。

至極当然の反応である、仕事帰りの土産にしてはちょっと規模が大きすぎる量だ。


近くにリリエッタがいないかどうか入念に確認すると、アルフレドは少し小さな声で今日あった全てのことを伝えた。


契約上愛人の立場であるミリアムだが、最近はアルフレドのあまりのポンコツぶりに見かねて相談に乗ってやることも多い。

デートという単語にやっとか、と呆れまじれに苦笑いした。



「なーるほどぉそれならですね。


奥様よくピンク着てらっしゃるでしょう?

お肌の色的にピンクはもちろん暖色系のありとあらゆる色はきっとお似合いになられるかと思いますです。

後そうだな、顔がいいからはっきりとしたお色も宝飾品含めてきっと映えますよ。


あとご主人でかいから割と小さい方の奥様が更に小さく見えちゃうんでヒールは少し高めに、とはいえデートプラン的に少し歩くのであれば最近流行りの安定性があるブーツタイプのものでも良さそうですねえ。


髪はとってもお綺麗なお色してらっしゃるんで全部編み込んでしまうよりハーフアップがいいかと思いますよ、明日は日差しが強そうなので日傘も忘れずに持って行ってくださいね。


ああそうそう奥様お若いからアイシャドウは薄めに、アイラインなんていらないと思いますね、目おっきいんで。あとはそうだな…。」


「ちょ、っとまて、何だって?」



いきなり早口でまくし立てられ、ポカンと右から左へ流してしまった。

流石は元踊り子というか、服飾や化粧に関してはやたら詳しいようで的確な指示に思わず驚くアルフレド。


を、置いて早速荷車のドレスや宝飾品を物色し始めたミリアムを、これほど頼りになると思ったことは後にも先にもこれっきりだろう。



「あー!これかぁいい!1着ぐらいパチってもバレませんよね〜。」


「それベアトリスからだからな。」


「ひえっ殺される、やめとこ。」

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