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溺愛の伝え方  作者: 小夜時雨
灰色結婚生活
10/25

9.ベアトリスとお茶会

「いやぁかわいいお嬢さんといただくお茶は格段に美味しいなぁ!」


「あ、ありがとうございます…?」



あれから30分、リリエッタの隣はもちろんベアトリスが陣取り、焼き菓子と紅茶を口にしながらひたすらにリリエッタを猫可愛がりしていた。


リリエッタと言えば普段褒められ慣れていないどころか罵倒しか浴びせられていないので、いまいち自分が褒められていることに実感が持てない。

社交辞令だと一人納得すると、ベアトリスの世辞に(世辞ではないが)曖昧に微笑みながらお茶を勧めた。


一方アルフレドは心の底から感謝していたはずのベアトリスに対し、心の底から本気で嫉妬していた。



(俺だって叶うことならそうやってリリィを可愛がりたいんだ…!)



眉根を寄せ無言でひっきりなしに茶菓子を食べ続けているアルフレド。

そんな不機嫌オーラを察してか、リリエッタは慌ててご機嫌伺いに口を開いた。



「あの、お二人はとても仲がよろしいと聞きました。

どのぐらいのお付き合いになられるのですか?」


「んー?そうだなあ、覚えてはいないけど私が物心ついた時にはすでに仲は良かったよ。


ずっと君を紹介してくれって頼んでいたのにずっと渋られてね!

結婚式を親族のみで終わらせたと聞いて心底がっかりしたよ、貴方なら純白のドレスもとてもお似合いだったろう。さながら天使のようだったのでは?


アルフレドも貴方のような可憐で美しい女性と結婚できてさぞ幸せだろうなあ。

嗚呼何度見てもアルなんかにはもったいない!私と結婚しないかリリエッタ。


城に君専用の部屋を用意して歓迎す…。」


「死ね。」


「なんか言ったかね公爵君。」



逆効果だったようだ。


それに先程からひたすらに焼き菓子を食べるアルフレドと、リリエッタの可愛さでお茶がすすむベアトリスのせいで使用人達、主にシェフが慌てて追加を用意しているのがうかがえる。


これは一度席を離れた方がいいな。

場の状況を素早く察知すると、バチバチと火花を散らし睨み合ってる二人に声をかけた。



「あ、その、お庭を少し歩きませんか?

当家庭師が丹精を込めて育てている自慢の花々が見頃でございます、よろしければ是非ご案内させてくださいませ。」


「そうだな!花に囲まれた貴方も見てみたいよ!


おーい!写し屋を呼んでくれ!この機を逃すな撮りまくれ、アルバムを一冊作りたい!」


「貴様っ……それ後で寄越せよ。」



人の嫁でアルバムを作るとはなんて奴だ。

しかし最近流行りのカラー写真なるものをアルバム一冊埋めるぐらい撮るには中々の値段がかかるもの。

ここはWIN-WINということでアルフレドは密かにガッツポーズを決めた。


さてセティス家の庭は専属の庭師3人がかりで毎日整えられていて、この時期は噴水近くの薔薇のアーチが見頃である。

先代の奥様、つまりアルフレドの母親が薔薇好きだったこともあり、色とりどりの薔薇園がちょうど咲き誇っている時期であった。


実は無類の花好きであるリリエッタは、割と頻繁に庭に訪れては庭師と他愛ない話をしながらお茶をしていることも多い。

来年の春にはリリエッタがリクエストしたかすみ草も咲くそうだ。


なのであまり自分の屋敷の庭に関心のないアルフレドよりリリエッタはこの庭を熟知していた。



「来年には僭越ながら私がリクエストさせていただいたかすみ草がこの辺りに咲く予定です。

他にも色とりどりのガーベラやパンジー、マーガレットも来年の春を迎えれば綺麗に彩ってくれますわ、是非またいらしてくださいね。」


「嗚呼それはもちろん、時期になったら必ず足を運ぼう!

そしてまた一緒にお茶をしよう!」


「光栄でございますわ!」



ベアトリスとリリエッタ、この一瞬で自分の10年より仲良くなっている気がする。

さながらガラの悪い山賊のような顔つきでベアトリスを睨んでも、長年の付き合いである彼女はビクともしない。


それどころか彼女は人生で一番、今輝いている気がする。

彼女の美少女好きは本物なのだ。



「…で、君は何でこんなに可愛い嫁さんを社交界で見せびらかさないのかね、ん?」



写し屋にしばらくリリエッタを撮るように指示し、ベアトリスはアルフレドに小声で尋ねる。


16歳を迎えすぐ嫁入りしたリリエッタは社交界デビューを果たしていない。

というか、アルフレドはデビューさせる前に何としてでも結婚したかったのだ。


そう、理由はもちろん。



「人目に触れさせたくない。」


「はーーー……まあわからなくもない。」



これだけ可愛ければ閉じ込めておきたい気もわかる。

ひたすら薔薇を背景に写真を撮られ照れたように困った笑顔を見せるリリエッタは、もはやサンクチュアリの天使だ、この世のものとは思えない。



「姫様、このぐらいあればアルバム一冊は問題ないかと。」


「うむ、よくやった!

では時間も時間だ、名残惜しいが帰るとしよう。」



晴れ渡った青空に夕のオレンジが混ざり合う、時刻は16時を過ぎていた。

数枚写真の出来を確認すると、ベアトリスは満足そうに頷きリリエッタを撫でる。


そうしてひと騒動起きた第1王女を迎えるお茶会は無事、幕を下ろしたのであった。


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