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白オオカミと意思疎通

ふわぁ。フサァ。ふさぁ。

カイくんが復活した。

喜んだ私は、弾力のある白銀の毛並みに指を通したり、ブラシを通したり、やりたい放題である。

いつも通り眉間にシワのある状態で寝そべるカイくんを寄合所の獣人達が微笑みながら見ている。


ああ、幸せだ。もうちょっとしたら、お昼寝の時間だ。きっと二人とも、起きたら気分も晴れている。





ナリスさんが無事にカイくんパパ所有物件を借りることになり、やれやれと街に戻ってきた翌朝。

カイくんが寄合所に来てくれた。


「中央に行ったんだって」

長老カラスから欲しいものリストを受け取り、朝日に向かって黒い翼を広げるのを見送った後である。

声に驚くと、カイくんが回復の喜びの欠片も見せない仏頂面で隣に立っていた。


オオカミってこんなステルス性能あったっけ。


「緑茶をお土産に買ってきたんだけど、かぶっちゃったかな」

「いや、もらう」

「よかった」

朝陽に輝く白銀の毛並みを見上げる。

病み上がりだからか、ツヤが足りない気がする。


「今回は長かったの」

「王国から帰ってきてすぐからだ。一気に疲れが出たんだろうと言われた。張り切りすぎた反動だろう」

二人で朝陽に照らされる町並みを眺めながら話をする。


私の何倍も大きな身体で、何倍も力があるカイくん。しかし、私より身体が弱いのだ。

外見も変異種で目立つ。自然界では不利だ。さらには、内臓も一般的な働きをしていないらしい。

カイくんの不調を知らされる度、私は胸を押し潰されるような不安にとらわれる。


私は私で部分的に異常に発達した状態で発生している。この身体の耐用年数は不明である。カイくんはそれが恐ろしいらしい。


今この瞬間のように、湧き上がる不安を何とか押さえ込もうとしてくっついている、お互いそうだと直感しているようなことが時々ある。


いつ身体の限界が来るのかわからない私達二人は、今を精一杯楽しく生きるしかないのだ。


「カイくん。ブラッシングしよう。ケインくんに良いブラシをもらったんだ」

そうして楽しいブラッシングタイムに移行して、そのあと昼寝をして、気分を変えるのだ。

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