獣人とマッチング
のそのそ、ノソ、ノソ。
一度外したタスマニアデビルグッズをもう一度着けていく。
ちょっとした葛藤と、カーライルさんのからかいを耐えてデビューしたのにも関わらず、手応えがなかった。
これは虚しい。活力もなくなる。
「うちじゃなくて良いのか。引き受けたいという意味じゃないぞ。獣人のなかに放り込んで問題を起こさないか」
私がとろとろしているので、暇を持て余したカーライルさんが聞く。
「むしろ安定するんじゃないですか。ハッシュさんのところで内勤していればコリーちゃんが一緒でも目立ちませんし」
「彼女はセットなのか」
「しばらく。ひょっとするとずっと。セットの方がこの国としては良いのではないですか。いつのまにか行方不明、いつのまにか死亡、は避けたいではずです」
私の前世の父親が死亡したクチだ。
2度目の自己破産手続中にあの状態になり、とどめにタチの悪い破産管財人弁護士に打ちのめされた。
原因不明の身体内部の激痛を理由に救急搬送されるも診断が着かず、そうこうしているうちに病院で死亡したらしい。医師達は死亡後も原因がわからないと言い、死因は不詳内因死と記載された。
私の助言は聞き入れない人だった。
私は私の人生を守るのに必死だった。疎遠だった。
今世になって思えば寄り添ってくれる誰かを私が雇う、という選択肢があったことに気付く。
今世は、甲斐性のある獣人に囲まれている。
彼らはやりたいように他人の世話を焼く。
そして結果として事態を好転させる。
獣人達は自分に素直なので、遠慮する必要もない。
私は人に寄り添うことは出来ないので、今回のようなケースはマッチングを考えて他人任せとなるが、良いだろう。
コリーちゃんはターゲットを見つけて Win、二つの国は落としどころを見つけて Win だ。
招き子猫が左手を上げて鳴いていた。
ダイルさんについては彼が本当の最期を迎えたときに判断してくれるだろう。
「さて、コーは早く帰ると良いよ。カイが不安がっている」
私とカイくんの場合、文字通り狼狽である。
バルドーさん達が旅立ってしまったのでキャンプごっこもできないカイくんと、ラスコーさんの戸惑いをヒシヒシと感じる私である。
やるべきことを終えれば、本来のペアではないことが落ち着かない。
獣人達も違和感が強そうだ。
カイくんパパはライオン達と話をしてから帰るという。
「それにしても、ここのセキュリティは良いなあ。コーも中央に来るんだったら街の拠点を造ろうか。ここを参考に、堅くて、仕掛けがあって、街の誰かが常駐するような拠点はどうだろう。たまには私の代わりに誰かがイベントに出てくれても良いと思うんだよ」
カイくんパパが、仕事を押し付けられていることをぼやき出した。
チーター兄弟とフローくんはラスコーさんと違い、組織人ではない。
そのため、個人の感情に従い、さっさと部屋を出て行った。
ラスコーさんが私の顔を見たので、私は頷いて言った。
「カーライルさんと一緒に、フランクさんのお宅に帰ります」
一呼吸おいて顔を引締める。
「大丈夫です。慣れています」
決まっただろうか。




