チーターと振る舞い
はわ、はわわ、はわわわ。
壮観である。興奮である。興奮しすぎて息苦しい。
カイくんパパ、ワシミミズク親子、チーター兄弟が、一日目の会議を終えて戻ってきた。
街では見ないみんなの盛装姿がとても良い。
フランクさんの見立てだという会議用衣装は、昼の太陽の光にも夜の人工の光にも映える。
宵闇に、街灯の明かりを弾いた獣人の目が光る。
ワシミミズクの瞳孔が開いている。
真ん丸おめめがちょっとかわいい。
ところで、まだ夜のセレモニーの時間帯ではなかったか。
飛び出して行かないようカイくんに抱えられた私は、わずかに残った理性で考える。
みんながムスッとしているようにも見える。
不機嫌顔も様になるのだが、やっぱりみんなには幸せでいてほしい。
コロンくんがいないのは関係があるのか。
「オブザーバーってのは何を言っても許されるのか」
「議事録に配慮した団長はさすがだ。俺達だけならああはいかない」
チーター兄弟が言う。
代表者会議の夕食会をドタキャンした獣人達とフランクさん邸のテーブルを囲む。
今晩は、脂の乗った蟹をメインにした海の幸コースである。
コロンくんのアシスタントから事前に連絡を受けていたらしいフランクさんは、きちんと全員分のディナーの指示を出していた。
会食用の大きなテーブルに、会議組の獣人5人と、アレクサンドルさん達3人、フランクさんがついている。カイくんと私を含めて11人の大人数である。
ドタキャンは、ポーズでもあるらしい。私的にはかなり分が悪くなるのでは、と思うのだが、獣人的には必要な振る舞いらしい。むしろここで夕食など一緒にしてしまえば、大したことではないと許したことになってしまうため、獣人的には絶対に退席しないといけないのだという。
獣人にとって、食事を共にすることの意味は重いのだ。
共和国のオブザーバー達は、カイくんを暗に名指しして、交換交流を持ちかけたらしい。
そちらの団長さんのご子息は、商人だとか。我が国の金融経済にご興味があるのでは。
我が国もこちらの仕組みに学ぶところが大きいのです。
いかがですか、相互に有望な人材を派遣しあうというのは。ああ、ただ我が国は少々まだ入国に厳しい決まりがありますから、専門の業者とちょっとした契約が必要になってしまいますが。
会議の中で、比較的若い共和国の一員が、なんでもないことのように言い放ったという。
参加していたこの国の代表者達は、静まり返った。
獣人達のなかには、明確に殺気だった者もいた。
「それは、ここ数十年間の現実を踏まえてのご発言ととらえてよろしいか」
黒オオカミはみんなを冷静に目で制し、言葉を返したという。
自分の役割を思い出した議長が、予定されていた議題は尽きましたので、本日はここまでに致しましょう、と場を強引に切った。手早く一日目の終了を宣言した。
このあとの夕食会は・・・と事務局が説明を始めたところで、黒オオカミ達は堂々と席を立った。
コロンくんは根回しのために残ったが、他の獣人の街の代表者達や人間達も、少なくない数が黒オオカミ達に続いた。
こういった顛末らしい。
「過去の詳細を理解したうえで言っているのか、詳細を知らずに言っているのか、どちらでしょうね」
あの国の内部でどう解釈されているのか、そもそも当時あの国がどういう受け止め方をしたのか、わからないんですよね。物事にはいろいろな見方がありますから、今の大勢はどうなんでしょう。そもそも一枚岩とも思えませんし。
アレクサンドルさんが言う。
「どちらにしてもこちらはやりやすくなりましたよ。この国のスタンスを目の当たりにして、さすがに振る舞い方を考えるでしょう」
「事務局がなんとかするだろう。そのためのチームだ。明日は出席するのかい」
フランクさんは楽観的だ。なんなら欠席するかい、とまで言う。
「こんなのは序の口だよ。当時は、共和国の絡むイベントには一切出ない、関係者がいる契約は解除すると大変だった。手回しが大変だった」
「大変だったのは、そこに便乗して大儲けしたからだろう。まあ、はっきり示さないと彼らは自分たちのマナーとやらでこちらを計るからね。ただ、私もすこしはこの国の立場を考えるようになったんだ。事務局と調整するよ」
カイくんパパは蟹肉を上品に口に運ぶ。
良い魚介類がたくさん市場に出ていたと料理人さんが言っていた。
事前に食材だけを知っていた私は、甲殻が丸ごと出てきたらこわい絵面になるかもと、ドキドキしながらちょっと期待していた。
すべてのお皿はナイフとフォークで簡単に対応できるよう調理されていて、殻をかみ砕く音など響く余地もなかった。




