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商人と投機

カタカタ、がた、かたり。

夜も遅いし、気分が落ち込みすぎたので、一旦お開きになった。

チーター兄弟は獣人御用達の宿で一眠りして明日は代表者会議だ。

私達の予定はどうしようか悩ましい。

安全を考えれば、下手な情報を与えないよう外出を控えるべきか。


「あんた達全員にコーとカイを守ってもらうには何をどれだけ用意すれば良いんだ」

「俺達もできるだけついていたいが、人間の方が良い」

「嫌な感じがする。本当なら街に連れて帰りたいが、そうもいかないんだろう」

「明日から七日間、とりあえずこれ以上目をつけられないように、人間のやり方から守ってやってくれ。今回すぐどうこうってことはないだろうが、じわじわと仕掛けられたりするんだろう」

チーター兄弟が出ていこうとしたアレクサンドルさん達を呼び止めた。


「もう、対価の話は済んでいますよ。ご本人達が交渉済みです。こちらの手落ちをどう補償しようか悩んでいるくらいです。安心してください」

アレクサンドルさんは男前に微笑んだ。


代表者会議とカイくんパパへの依頼を最短でこなすと、中央滞在は明日から数えて七日間だ。

チーター兄弟とワシミミズク親子それにコロンくんは、カイくんパパを団長として始めの三日間は公式行事で拘束される。共和国の一団も同様だ。その間は御用商人やその周辺がカイくんにアプローチしてくるかもしれない。


「カイくん、予定を全部取り止めようか」

「これだけ聞いて、共和国で雇われようとは思わないぞ。あんなことできないしな」

カイくんはそもそもそういった仕事に身体も精神も耐えられないのだ。

私よりは強いが、その程度なのだ。

「嬢ちゃんをたてに取られたら? オオカミは見た目がいいからな。オオカミ一族は共和国の関係者に人気らしい。兄ちゃん達が中央で働いているだろう。よく関係者が声を掛けているらしいぞ。あまりにひどいと上層部が抗議しておさまってきたと聞くが。役人だからその手が効くんだ」

今回はどう来るかわからないとカーライルさんが言う。

カイくんのお兄さん達は立派に成長して、国に雇われている。

今回の訪問では、お仕事姿を遠目に見る予定も楽しみのひとつだった。


「コーが事業をひとつ差し出しているんだ。しっかり頼みます」

カイくんは引き下がるつもりはないようだ。

カイくんがそのつもりなら、私がとる方向性は決まったようなものだ。

「アレクサンドルさん、明日は単発の買い取りです。生薬素材の売却ルート、ありますよね」

フランクさんと親交があって、カイくんパパが気を許して、私の招き子猫がごろにゃんしている人たちだ。

こっちに付いてもらう代わりに、アレクサンドルさんには名を上げてもらおう。


「実は、フランクさんからの割のいい注文をこなしたので、しばらく余裕があるんです。どこでもご一緒しますよ」

さすがの手回しである。

思うにフランクさんは私達にサービスしすぎだ。


フランクさんにはやく報いるよう資産規模を拡大させなければならない。

プライベートバンカーのフランクさんとは、資産の運用結果に比例する成功報酬型の契約だ。


「私の仲介料は売却金額の3%で良いです。アレクサンドルさんには大きくなってもらいたいんです」

「どんな素材かわからないのにその条件ですか」

「この国特産の素材です。たぶん最初に取り扱った商人は取り扱い経験がなかったのでしょう。私達の街のみんながよく砂漠や森でとってくるものです」


多くの人間は完全な状態でイメージできない動物達だ。見たことがなくて珍しいから剥製にしたほうが高額になると読んだのかもしれない。あるいは、ストーリーに真実味が出ると思ったのかもしれない。

しかし、本当に高く売れるのは、生薬原料としてなのだ。

遠く離れた共和国や王国では生息しないし、気まぐれな供給しかされないため、投機対象でもある。

全体でも、部位でも、引く手あまたなのだ。商人の腕の見せ所である。

「私への支払い期限は特にもうけませんので、相対でもオークションでも、高く売ってください」

ただし、買い取りは現金でお願いします。

私の言葉にアレクサンドルさんが自信ありげに笑った。


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