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満腹になると眠くなる

ぶー、ぶー。ブー。ぶー。

「ひどいじゃないか、コー」

「ひどいぞ、コー」

がた、がたがた。

チーター兄弟が、座る椅子の背を抱え込んで文句を言っている。

長い首も長い手足ももて余す二人は、全身を上品に覆う衣服を身に付けている。

フランクさん御用達店で採寸してもらって、服を送ってもらっているのだ。


せっかく上品な仕立ての服を着ているのに。

ぶー、ぶー言って寄合所の椅子をガタガタさせている時点で台無しである。


小顔のチーターは、小柄な私に愚痴る。

「万が一があるかと思ってよ。砂漠のところ巡回してよ、中央にも顔を出してよ」

「フランクさんのところや、あの食えない商人のなわばりも見回ったんだぞ」

食えない商人とは、アレクサンドルさんのことだろうか。


「そしたらよ、言われたんだぞ」

「あの得体の知れない白いおっさんに」

得体の知れない白いおっさん、とはカーライルさんのことだろうか。


私は両手を叩いて笑ってしまった。

チーター兄弟は散々一緒に行動しているのに、そんな認識なんだ。

「ぷくく。なんて言われたの」


殿(しんがり)向きだったか、って聞かれたんだぞ」

「向いてないって、分かりきってるだろ」

俺達に細かい気配りは無理だ。

というか、なんの話だってことだ。

ひどい。

ひどいぞ。


文句たらたらな兄弟は、狩りレースに加わることができなかったらしい。

私達と縁ができそうな人間達が狙われたことから、情勢の把握と見回りに行ってくれていたらしい。

そのため、自由人達のお祭り騒ぎとすれ違ってしまったというのだ。

カーライルさんに、自由人達の後ろを守るために中央に来たのか、とまで言われてしまったようだ。

なんだそれは、と詳細を聞き、駆け戻ってきたらしい。


元軍人さん達が支度を整え荷物と共に朝のトレーニングに行った後。空になった寄合所に辿り着いたチーター兄弟は、とりあえずシャワーを浴びて、「おおーい、コー」と叫んだ。少し前のことである。



「俺達がいない間に狩りレースを始めるな」

「俺達が中央に入ったところでスタートさせただろ」

「はかったな」

「なんて奴だ」

ぶー。ぶー。


「ごめん、ごめん。私もこんな早く展開するとは思ってなかったんだよ」

整った猫科の顔がむにゅむにゅしている様子に笑いながら答える。

トールさんや長老達辺りは謀ったのではないかな、と思いながら笑う。


ドミーくんがハーブティーと焼きたてステーキ肉をチーター兄弟の側の机に置いた。

「まずは、ブランチをどうぞなのだ~」

そうそう、満腹になって機嫌を直してね。

そうそう、椅子と机のセットは正面を向いて使ってね。



チーター兄弟が満腹になっただろうところで、私は彼らの前に回り込んだ。

「それで、中央からの帰り道、砂漠地帯はどうだったの」

うまうま、と食べ終えた兄弟の目は満足そうに細められていた。


「俺達が戻る頃には、もうあの食えない商人達とケインがうまくおさめていたぞ」

「街の奴ら、張り切り過ぎだ。あっという間だったらしいぞ、狩り」

「動く金庫を牽いたり蹴飛ばしながら駆け回って」

「金庫の中に獲物を詰めて、去って行ったってよ」

あの辺りの奴らに、良い薬になったようだぞ。

やたら怯えていた。

最近威勢が良かったのにな。

ありゃ、つまらない。

ああ・・・。

そうだな・・・。


ドミーくんが食器を器用に一度に下げた。


す、すす。

すうぅ。

すやぁ。


チーター兄弟が机に突っ伏した。

ふわり。

カイくんが二人の肩に毛布をかける。


「二人とも、心配してくれたんだよね」

「ありがたいな」

隣に戻って来た白オオカミに凭れる。

「昨日から、駆け通しだったのかな」

「そうだろうな」

「あとは私達の仕事だね」


「アレクサンドルさんに任せておくのが良いと思うぞ」

カイくんが疑わしそうに私を見ていた。

ええぇ。

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