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陽だまりの再会

つき。つき。ツキツキツキ。

二羽のズキンカラスが一生懸命クルミを食べている。

私が双眼鏡越しに見下ろしているのは、モノクロのカラスだ。

安心仕切った様子で、食べやすく砕かれた実をついばんでいる。


一羽は黒い頭に灰色の体。一部だけ黒くて大部分灰色の翼だ。

もう一羽は黒というより青と、灰色だ。

二羽とも確かに頭巾を被っているように見える。


「凄いねえ。格好良いねえ。長老みたいに真っ黒だといかにも強そうだけど、ツートンカラーだとお洒落を感じるね」

双眼鏡を顔から離して隣を見上げる。

「中央広場にのんびりしたズキンカラスがいる」と教えてくれたのはカイくんだった。

そのため私はバルコニーに横並びで立つカイくんと感想を共有したいと思った。

しかし大きなオオカミ獣人は反対側の道を見下ろしていた。


さっきまで英雄達の街で見ることができない鳥を探しては私に教えてくれていたカイくんは、別の何かに気を取られていた。


ピクリとした耳に遅れて、凛々しいオオカミフェイスが私の方を向いた。

「そうか」

「何か気になるものでもあったの」

「いや。意外だっただけだ」

「意外?」

私が聞くと、後ろの椅子でだらけていたナッジくんが言葉を発した。

「まあ、相性は悪くないと思ったぞ」

「そうかも知れないな」

カイくんが頷き、私を抱え上げた。

万が一にもここ、ホテル三階のバルコニーから落ちることがないようにだろう。一歩下がり、私のお腹にがっちり右腕を回してくれる。

「しばらくすると見える。四人組だ」

「わかったよ」


二人が何を指して言葉を交わしたのかはわからないが、今私がすべきことはわかった。

私はカイくんに身体ごと向けられた方角を素直に眺めることにした。

ズキンカラスがなわばりにしている広場とは逆。この町の陸の出入口の方角だ。





今日は平和な一日だ。

アレクサンドルさん一行がこれまでの旅路とビジネスを整理する日。彼らが彼らの関係各所と腰を据えてやり取りしたいと言い、私達は昨日、この平和で大きな港町に上陸したのだ。


特に予定のない私達の群れは、明日までアレクサンドルさんの手配したホテルでのんびり過ごす予定だ。自由人達はもちろん既に自由に散開しており、ひとつところにまったりしている私達は少数派だ。


私とカイくん、ナッジくんは部屋の広いバルコニーを気に入り、平和な街並みと営みを見渡したりうとうとしたりしていた。

ドミーくんとレイくん、それからシロくんとキツネのオジサマがホテルの回りをぐるぐるしながら時折買い物をする、その様子を眺めたりしていた。

繰り返すが、平穏な一日だった。



「良いバランスを保った地域だね」

「ああ」

ホテルが面する道は、この町のメインストリートである。観光客が最も安全安心に散策できる道だという。大小様々な店舗が軒を連ね、小さな子も、小型獣人も、のびのび活動している。

太陽は柔らかく昼の明かりを届け、人々は穏やかに行き交っている。

鳥系の中型獣人が多い。

たくさんの種類の鳥が生息しているのはそのせいだろうか。上手く人間と獣人と共生している。




視界のすみに黒い何かがチラチラした。視線を向けるとドミーくんがこちらを見上げて手を振ってくれる。手を振り返す。

クロサイの隣のライオンボーイが「違う違う」というように首を振り、丸めた手で道の先を示す。


あの手は、周りをちょこちょこしていたシロくんに配慮したのだろうか。

そんなことを考えながら視線を戻す。


「ん、ん?」

平和な町に似合わない顔と身体付きの三人が見えた。見せるための筋肉と装備に包まれた人間三人。それは良い。

彼らの間に、おとぎ話染みた人間がいる。陽だまりの似合うさらさらした印象のその人は、陽だまりの似合わない三人と仲良く談笑しながら歩いてくる。


ハイドさん、リックさん、ライトさんの元小悪党三人組とイーサンさんだ。

「ねえ、カイくん。何でイーサンさんがいるのかな。もしかしなくても、合流する気なのかな」

ニコニコしたクロサイに各々笑顔を向けた人間四人は、キツネのオジサマの身振りにつられるように私達のいるバルコニーを見上げた。

なぜか四人とも大変嬉しそうに手を振りだした。


「手を振ってやったらどうだ」

カイくんが言う。

面倒事の気配に、私の顔は引きつった。


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