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知らないほうが美味しい

ぱきぱき。ぱきん。ぱきん。

硬い殻を割って、白い身を食べる。

夕暮れ時。家の庭でキッチンカートの前にテーブルと椅子を出して、食べている。


カイくんが器用に手で細長い甲殻類の殻を割り、中の柔らかい身を食べやすくして渡してくれる。私はそれを受けとって、ちびちびかじっている。

ナッジくんとレイくんは殻はそのままにかじりついている。牙で殻を割っている。


ガリッガリッ。ジャリジャリ。ちょいちょい。パクリ。

ひとかじりして、殻に亀裂をいれる。

かじりとった殻ごとジャリジャリ咀嚼する。

手に残っている、亀裂の入った殻を爪でちょいちょい外す。

出てきた身をパクリと食べる。


食事風景としてアリなのか、ナシなのか悩む。

殻が赤い。きっとアスタキサンチンだよなあ。

殻ごと食べたほうが良いのかもしれない。

しかし、なかなかに見た目の怖い摂取方法だよなあ。

どうしても、カイくんが手で身と殻を分けて、別々に口に運んでいる姿と見比べてしまう。


アレクサンドルさん一行とナリスさん主従に、ラスコーさん。お客様がいっぱいなのだ~と、ドミーくんは最後の最後に大量の棒状の食材をどこからか調達してきた。

そのカニ脚のような食材を、普通に蒸したものと焼いて香辛料をふったものが、本日のディナーのメインだ。

私のつたない味覚が思い出すのはエビの味である。

私は見た目からカニのポーションを思い出しながら、ほのかな甘みのある身を食べている。


「ドミーくん。美味しいね。これはなんと言う食材かな。私、見たことあるかな」

自作の調味料セットを運んできてくれたドミーくんに聞いてみる。

「コーは、うーん。ないかもしれないのだ。全身が」

「コーは見たことがない。見ないほうが良い。全身を見たあと、これを食べることができなくなる人間は多いと聞く」

カイくんがドミーくんの言葉を遮って言う。

「そうかもね~」

ドミーくんが納得顔だ。


「私も初めて食べました」

アレクサンドルさんが首を傾げている。

「ルーフェスは心当たりがありそうですね」

複雑そうな顔で少しずつ食べる黒髪に視線が向く。

カーライルさんがエール片手にむしゃむしゃしているのとは大きな違いだ。


「小さい頃、精密な図鑑で全身を見ました。成長してからとある美食の会で、それと知らずに美味しくいただきました。後から図鑑の生き物だと知りましてね。世の中には知らないほうが良いことがたくさんあると学んだ思い出です」

しみじみ言う護衛モドキである。

巨大タカアシガニを想像していたが、違うのかもしれない。


ナリスさん一行は普通に美味しいですね、と食べている。

この場でこの食材の正体を知っている人間はルーフェスさんだけのようだ。


「街の特産品なの?」

「街と言うより、森を抜けた先の海の特産品だ。どきどき森の生き物と争っている。普段は警戒心が強い。森の大型の生き物とやり合っているときは注意が散漫になる。そこを狙って狩る」

シャカシャカすばしこい、と続けたカイくんだったが、途中で口をつぐんだ。


大型?

シャカシャカ?

テーブルの上に大量にある、棒状の食材を見る。

「これは一匹分?」

「一匹未満なのだ~」

どれだけ脚がたくさんあるんだ。

これ以上聞くと、余計なイメージに囚われそうだ。


「新しいスパイス、よくあうね。王国で買ってきたの?」

私は強引に話題をそらした。

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