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好事家

スタスタ。すたすたすた。

ダイルさんとコリーちゃんが去ってすぐ、ケインくんが来た。

さっさと大テーブルに着いて言う。

「速いが、面倒だな」


灰色オオカミは実家でシャワーを浴びて来たらしい。

さっぱりしていた。

四足で疾走するときのぴったりした衣服ではなくなっている。

やることが素早い。いつ街に着いたのか。

「乗り手の安全確保のためには周りに何人か必要だ。コリーとフローだから二人で良いが、一般的な有翼種なら、飛ぶだけ、警戒するだけ、排除するだけの役割分担がいる。誤解されないよう陸の動きに対応する人員も欲しい。街の誰かなら攻撃されたとしても避けるだろうが、それでは汎用性がない」

そしてマイペースだ。


「ダイルさんが乗せられていたグライダー、私とカイくんは初めて見ました。中央にはよくあるものですか」

違うだろうと思いながら、念のため聞いてみる。

「いや、今回が初飛行だ。フランクさんのクライアントに共和国人の貿易商がいる。その人間が、共和国の発明品を俺の所に持ち込んだんだ」

「ケインくんの所に?」

「正確には、この国に、だろうな。あの乗り物は、翼を持つ獣人に運命を預けるものだ。共和国では実用化が難しい。共和国の昔話を信じる者、獣人に身を委ねることを拒否する者。他にも、あの乗り物の前提条件を受け入れられない者は多い。空を飛ぶ審査も通らない」


「昔話って、例の、忠義の主従が全滅したという話ですか」

「そうだ。あのよくわからない話だ」

一場面だけを切り取った、脈絡のない話だ。

そういって、ケインくんはばっさり切り捨てた。


「この国なら飛行は自由だ。獣人が多いから受け入れられると思ったらしい。大量に納入できたら儲けものだと思って持ち込んだものの、この国にはそんな予算はない。そもそも必要性がない」

そうだよね。


自主自立の気風が強いので、各人各地域が基本不干渉だ。いざというとき頼りになるライオン達や英雄達の街の獣人達もいる。

陸だろうが海だろうが空だろうが、連絡網さえ途切れなければ急行してくれる。

緊急時に人間が必要、という感覚はない。

物理的力で勝る獣人が単独で向かう方がはやく、確実だ。

脱出用としても、あの乗り物は一人用だ。

一人の緊急脱出なら獣人がもっと身軽に助けられる。

つまりは国として買う理由がない。


「人間がいないと物事を進められない共和国とは違うからな。どうしてもというなら、コリー達は別の飛び方をする。コーのような好事家くらいにしか需要がない」

「それは売れないね」

レイくん、なぜいま口を開いたの。


「フランクさんの紹介だからな。顔を潰すのも悪いから、個人で数機買った。コーの新しい拠点にでも置くと良い」

今度向こうに行くとき、俺の家の庭から取っていけ。

ぶっきらぼうに、ケインくんはお祝いの品をくれたらしい。

本当はオリーブの店に行きたかったのかもしれない。

「ありがとうございます」



「それにしてもなぜ共和国で実用化できないものを作ったのでしょうか」

「共和国の資産家の庇護下に前世持ちがいるらしい。研究開発ができればよいタイプで、情勢はみないようだ。今は目新しさで守られているが、この調子だと危ないだろうな。そのうち『  』のレッテルを貼られるだろう」


最近気づいたのだが、『  』というのは地域で捉え方が異なるようだった。

ケインくんの言葉から、共和国では危険分子の意味合いも含むようだった。

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