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オオカミ一家と一緒

そわそわそわり。そわり。そわり。

いいね。いいわね。いい拠点だ。いい趣きね。

大きな黒オオカミとハイイロオオカミが、オリーブの店を外から見上げて言葉を交わしている。

ハイイロしっぽがそわそわ揺れている。


カイくんパパとカイくんママが、私達を迎えに来てくれた。

代表者会議の時期が近付いてきたので、共和国関係者と遭遇または衝突する前に私達を回収しに来てくれたのだ。

衝突するのは主に私だ。

ケインくんの指示かもしれない。


「外から見るのと中から見るのと、感覚が大分違うわね。面白いわ。さすがコーちゃんね」

駆け回ってみたいわ。

そうだね。

カイくんママが、耳としっぽをウズウズさせて言い、カイくんパパが肯定した。


「良い歳をして、落ち着きのない」

私を抱えた白オオカミが、ハイイロオオカミをたしなめる。


「良いじゃないか。無反応より楽しそうな反応があったほうが気分が良いだろう。ケインみたいな反応をされたら、こちらが反応に困る」

カイくんパパがフォローする。

ケインくんは幼少期から一貫してケインくんだったらしい。


私にはいまいち感覚が分からないが、カイくんは、カイくんママの反応は若いと言う。

カイくんは時折カイくんママの反応を恥ずかしがる。

カイくんパパは基本カイくんママを全肯定する。

街の獣人達はそんな夫妻と息子をニコニコ見ている。

私には獣人的にどの反応が妥当なのか、わからない。



今日の昼前、突然二人は王国の拠点にやって来た。

「そろそろ共和国関係者が動きだすよ。街に戻っておいで」

「みんなが自慢していたコーちゃんの拠点、やっと来れたわ」

開口一番、これである。

二人は好きに喋りながら入ってきた。

獣人の優れた五感やら六感やらを隠さずに、扉を開けた第一声で内輪話。

実に街の獣人らしい。


カイとコーとその群れが建物内にいることは気配で間違いない。

この建物は街の獣人達のにおいが濃厚だ。

つまりはなわばりだ。

そんな思考だったに違いない。


「愉快な仕掛けの建物だね。ああ、こんにちは。はじめまして」

「まあ。こんにちは」

オオカミフェイスに笑顔を浮かべたカイくんパパとカイくんママは、クローゼット屋の人間達にもおおらかだった。

初対面でもお構い無しである。

獣人達の仲間内意識が、建物にいる全員に及んでいる。そう感じ取っていたからこその態度だったのだろう。


入口をくぐった立派な体躯のオオカミ二人に、クローゼット屋のお姉さんはびっくりしていた。

一家は獣人自体にはだいぶ慣れたようだが、いかにもな鍛え方をした大型肉食獣人は初めてのようだった。


カイくんの両親は、その性格に反して武人っぽい、独特の迫力があるのだ。


これはこれは、ああこのお二人はですね。そう言って、幸いにもナップルさんがうまく場を繋いでくれたので、人間側にも大きな混乱はなかった。


カイくんと私は、昨夜お世話になったラストル雑貨店からオリーブの店に着いてすぐのタイミングだった。

ちょうど奥に引っ込んでドミーくん達とお茶の準備をしていたところで、反応が遅れたのだ。

内装のお陰で声と様子は分かるのだが、私達の反応速度が間に合わなかった。



突然の登場だったが、その後オオカミ夫妻はすぐに場に溶け込んだ。

一緒に昼食のテーブルを囲むほどに、クローゼット屋一家とも馴染んだ。


二人の人柄ゆえだろう。

夕方近い今では、お父さんは外で一緒に建物を見上げながら、オオカミ夫妻を自宅に誘っている程だ。


残念ながら一家の自宅建物は、オオカミ獣人にとって縦にも横にも斜めにも狭すぎる。

カイくんパパは一家と、次の機会に王都のお店で食事をしようと約束している。


街の獣人が口にする「次の食事の約束」は社交辞令ではない。

そのうちカイくんパパは約束を果たしに一家を訪ねて来るはずである。


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