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100%飲料

カチャカチャ。かちゃ。かちん。

「おお、気が利くな」

カーライルさんが、ドミーくんからエールの瓶を受け取る。

腰から抜いた何かで栓を弾いたカーライルさんは、ごくごく飲み出す。


気の利くクロサイは、他の三人にはジュースの瓶を渡す。

ドミーくんは自分の料理を食べてくれる人の様子を良く見ていて、食の好みを覚えているのだ。ドミーくん診断では、ルーフェスさん、バルドーさん、フローくんはオレンジジュースらしい。


「いま、二種類しかないのだ~」

謎のご婦人は、数日もあれば多品種仕入れると言ってくれた。

ご婦人はマニュくんやレイくんに視線を奪われていたから、二人が連絡係かな。

「ありがとう。しかし、この二択で好みがよくわかったな。大概エールを渡されるぞ」

申し訳なさそうなドミーくんの声に、ジュースを受け取ったバルドーさんが声をあげた。


「ふふん」

はにかむだけのドミーくんに代わって、やや胸を張る。

「なんでそこでコーが自慢気なんだ」

バルドーさんが突っ込みを覚えたようだ。

お父さんはどんどん若く、ソフトになっている。



この周辺ですぐ調達できたのは、エールとオレンジジュース各一銘柄しかなかった。正確には、ある店舗の一区画で眠っていた十ケースしかなかった。


時はこの拠点に到着した直後にさかのぼる。

今日すぐ調理は無理にしても、建物内で飲み物位は欲しいよね。

そういう話しをした。

前回は勝手が分からず王都で買って運び込んでいた。

今後の調達を考えていくつか地域の小売店をのぞいてみようということになった。


メンバーは、ナップルさん、ギースさん、フルちゃん、マニュくん、レイくん、カイくんに私である。ギースさんは重量物運搬役である。

ナッジくんは、怪しげな拠点の建物にとりついて強度検査に夢中になっていたのでマッチョさんに任せた。


ナップルさんやバルドーさん、マッチョさんは、これまで頓着なく買っているようだった。そのため、私はついでに物価を気楽に調査する感覚だった。

ナップルさんによる地域案内のノリだった。


意外にというと失礼だが、各店が掲げる飲料価格は、王都の繁盛店と同じ位の価格だった。

しかしながら、軒並みカイくんが購入にノーと言った。


不思議に思ったのか、ナップルさんがよく買う店でよく買う瓶ジュースを買った。これもダメですか、と言うナップルさんに、カイくんは頷いた。

「いつもと変わりませんが」

首を傾げて瓶からごくりと飲んだナップルさんだったが、ああ、と頷いた。

「薄めてあるからですね。僕は平気ですが、この辺は大抵かさを増してます。どこまでがセーフですか」

害のないものが大半ですが、王冠を外してから少し注意してくださいね。

においと、あと少し口に含んで、無理と思ったらその店の混ぜものは体に合わないということです。


けろっとしてごくごく喉を鳴らすナップルさんに、カイくんが冷たい声で告げる。

「全てアウトだ。打栓機のない店はどこだ」

この辺りでは、開栓して、中身を出してかさましして、打栓して売っているらしい。

一本を二本にするのか、五本を六本にするのか、それは店によるらしい。


映像記憶を掘り返せば、いくつか打栓機らしきものを隠していない店があった。

据置きのしっかりしたものや、取り回しが簡単そうなものがあった。

樽から瓶に詰めたり、オリジナル製品を詰めることはありえるので、目が素通りしていた。そういえば、そのわりには、置いている品はメジャーな銘柄ばかりだった。


「かさまししていない店ですか。そんな店ありますかね」

ああ、あのおばあちゃんなら、もう手間だからやってないかもしれません。

暫し考え答えを出したナップルさんの案内で、地域の奥に進む。

どうもー。

そうして、ナップルさんは気軽に、小売店には見えない、薄暗い平屋の扉をくぐっていった。


そこで、気難しそうなご高齢のご婦人から、あるだけ未開栓の瓶飲料を買い取ったのだ。

ご婦人は、獣人が突然ぞろぞろ入ってきても動じていなかった。

一般的な王国人の対応ではない。

もう使わないと、据置き型の打栓機までおまけにもらってしまった。


ご婦人がここで生き抜いている理由は知りたくないが、招き子猫がにゃあと鳴くので、今後の拠点の飲料はご婦人から調達することにしたのである。

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