ライオンと人脈
グル、グルル、ぐるるる。
中型のライオン獣人が微妙に不機嫌さをアピールしている。
たてがみのない様子から女性と思われる。
中型といってもちびっ子コーさん四人分以上のボリュームがある。
カイくんが私の前に出ているが、双方本当に敵対行動に移るつもりはないと思われる。
機微が掴めないが、街では見ないし、中央に来てからも表通りでは見なかった光景だ。カイくんパパとフランクさんが静観の姿勢なので、あまり危機感はない。
私自身は不機嫌ライオンの隣にいる無表情ライオンが気になって仕方ない。
大型の男性で、コーさん換算で六人分位か。
不機嫌ライオンは機動力重視、中央の獣人仕様の衣服だが、無表情ライオンは人間寄りの三つ揃いだ。ふさふさっぽいたてがみをうまく処理して、カイくんパパ的な人間の紳士スタイルなのだ。加えて、首から胸ポケットに鎖が渡っている。
普段からカイくんパパは求められる役割柄、伸縮素材のスリーピースを身につけているが、大型獣人では少数派である。
街のみんなは汚れ避けか体温調整、あるいは防具として衣服を選ぶので、ときどきとても斬新な着こなしになる。
私も最近影響されてきた気もする。
・・・カイくんの、「服が人間じゃない」発言が地味に尾を引いている。
閑話休題。
つまりは、大型無表情ライオンは人間寄り、しかも紳士的な服装をしているのだ。
肉食獣人の強みである動きが制限されている。いくら伸縮性を高めたり、特殊素材を活用しても、獣人用の仕立てには劣る。
気になる点は他にもある。
「まあまあ、一旦座って。ご覧の通りコーお嬢さんは非力な人間だよ」
フランクさんが言う。
フランクさんと無表情ライオン以外は初対面であったので、自己紹介をしただけなのだ。最後に私がしゃべり終わったところで、一人が不機嫌ライオンになった。まだ大した話もしていないのに膠着状態に入りかけている。
こうなった経緯はそう難しいものではない。
美味しい朝食をいただいたあと、オオカミ親子と私は、フランクさんに応接室に招かれた。黒白オオカミとサンルームで朝食を取った私は気力満タンであった。
フランクさんの用件は、昨夜の話を聞いて引き合わせたい相手がいるというもので、話は簡潔だった。
コロンくんの街における、住人と一部商人の関係悪化を受けて、事態の緩和あるいは解決に向けた動きはあったという。
ただ関係者の感情と、解決をサポートしようとする人達の立場がうまく噛み合わなかった。
ひとを動かすだけのエネルギー(メリット)もまだなかった。
ちょっと緊張感が高まっていて、小競り合いが起きている程度では世論も動かせない。
そんななか私が現れたので、小型獣人側の代理人と引き合わせてくれるという。
こちらとしてはありがたい話だ。
昨夜すでに相手方に連絡は取ってあり、いつでも良いから会いたいと話はトントン拍子に進んだ。
カイくんパパが自分も同席したいと言ったことが決定打となって、フランクさん邸応接室で会談となった。
小型獣人側の代理人がなぜライオン。
しばらくして現れた二人のライオン獣人をみてまず思ったのはそれだ。
そういえば街にライオンはいない。
何かあるのだろうか。
思いながら、にこやかに自己紹介した、つもりだ。
そうしたら不機嫌ライオン、シェーヴェさんに睨まれ、現在に至る。
動き方がわからないので気になる無表情ライオンをさりげなく観察する。
ハッシュさんの胸元に光る鎖の先はモノクルではなかろうか。
膨らみからそうとしか思えない。
すごく気になる。しかしデリケートな問題な気もする。
目は獣人がネタ装備する部位としてはとてもリスキーだ。
そもそもこんなシリアス展開に持ち込んだ側が、ネタもないだろう。
ルーフェスさんでもあるまいし。
ちょっと根深いところに突っ込んでしまったかもしれない。
勢いで進み過ぎたのかな。
フランクさんに試されているのだろうか。
でも、招き子猫は警戒していないんだよなあ。




