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アスレチックな王国拠点

ふわぁぁ。おおお。ほおおぉぉぉ。

完成した王国の拠点の内部は、想像以上に立派だった。


ドミーくんが見上げて仰け反り転びそうになる。

ドミーくんの逞しい肩を、レイくんが後ろからつかんで止めた。


隣から跳びあがったナッジくんが、壁際の階段の手すりで一旦片足を付け方向を調整し、次に天井ぎりぎりの壁に跳んで蹴りつけ、斜めに勢いをつけて天井にタッチする。斜めに舞い降りて私の隣に着地すると再びおおお、と言った。


ナップルさんがほおほおと口にしながら階段を昇り、ナッジくんが蹴りつけた部分の手すりを、どこからか取り出した布で拭く。次に、腰から特殊警棒を取り出し先端に布を取り付けジャキッと伸ばす。そうして壁と天井を布で拭く。


クイックルワイパーか。

あの特殊警棒、更に特殊に改造されているぞ。


「やはり、高さが必要でしたね。以前、女王陛下の式典で街の皆さんがところ狭しと超人的動きをされていたので、とりあえず広く高く設計しました。構造上必要不可欠な柱と梁以外はありません。皆さんのお好きに足場や止まり木を造っていただけますよ」

今日も隙のある衣装のアッシュリードさんが言う。

素で接されている私達からすれば、演技衣装にしか見えない絶妙な崩れ加減である。

「想像以上に立派で、うまい言葉がでませんが、本当にありがとうございます」

そう言って、カイくんに凭れるようにちびっこな身体を反らす。


楕円形を思わせる、角を感じさせない内観だ。

建物の所在地である治安いまいちな地域の入口側に一階から三階まで貫く内階段があり、奥側に同じく三階から一階まで降りられる外階段があるらしい。

いざと言うときは地域の奥に逃げ込む想定だろうか。


設備メンテナンス用なのか、所々上階と短い階段でつながる形で、壁の途中に手すりと足場がある。短い階段と言う表現が慣れないが、足場とつながっていないのでそうとしか言いようがない。東西の階段と異なり、階段と床がつながっていないのだ。

人間が二階から壁に沿ってその階段を降りてくると、後半は大ジャンプしないと足場にたどり着かない。アスリート並のバランス感覚と跳躍力を発揮しないと、壁と手すりに挟まれた一畳程度の足場にたどり着けない。

つまりはほとんどの人間は挑戦しても落下し、地階に叩きつけられる。怪我をする。


「あれは、獣人の皆さん用ですよ。設備交換などにもご利用いただけますし、地階にいる相手の不意打ちにもよいでしょう」

私の視線を追ったアッシュリードさんが解説してくれる。

「コーは立ち入り禁止だ」

カイくんが言うので頷いた。

階段を降りて行くと空中に放り出されるなんて、背筋がぞわぞわしてくる。


建物の構造自体は三階建てだ。しかし、外観は五階建て相当の高さがある。

いま私達は地階にいるが、一般的な住居なら二階分の高さが地階のために設けられている。一般的な建物なら三階に当たる高さに二階がある。

二階三階は天井高め、のレベルだろう。


外側は古い廃れた感じの木材を貼り付けるように残し、内側は最新技術と最高強度に溢れている。

以前私が過ごしたカウンターとハイスツールも設置されているし、奥の扉を開けるとドミーくんサイズのキッチンがあるという。

建物の入口から受付カウンターまでやたらと距離がある。先ほどのアッシュリードさんの口振りからすると、お客様の様子を各所から確認してしかるべき対応をするためなのかもしれない。


カウンターのうしろに、未開の森の素材で、簡易の衝立でもつくってもらおうかな。昼寝やゴロゴロするスペースが必要な気がする。


レイくんがドミーくんを壁際に押していき、クロサイボディに体当たりしている。ドミーくんは逆らわずに壁にどん、どん、とぶつかってあげている。

水牛のギースさんが、自分もやるべきか、と回りを見回す。

ナップルさんが、首を高速で横にふる。

ナップルさんは、ついで、しっぽを振り上げていたグリーンイグアナのフルちゃんと壁との間に移動して、盾になった。



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