蛙肉の仕込み
はぐ、はぐ。はぐり。ハグハグハグ。
肉食獣人達ががたらふく食べている。
もちろんカイくんは例外だ。
ナイフとフォークを使って上品に食用蛙を口に運んでいる。
レイくんやチーター兄弟、それにナッジくんが小さなもも肉に次々とかぶりつくのに比べて、カイくんは蛙肉と分からない創作料理の一皿をゆっくり味わっている。
この辺りの特色として蛙料理があると聞いてひとり一皿ずつくらい頼んでみた。
他はお任せで作ってもらっている。
仕込みをしていないと言っていたが、このレベルでしていないというならば、本気の仕込みをした料理を味わってみたいものだ。
「初めて食べました、蛙」
カイくんと同じ品を食べる人間組に言う。
「同じだ」
バルドーさんが言うと、アレクサンドルさん一行以外が頷く。
「ここが初めてなら、他の店では頼まない方が良いですよ。アミュさんが調理してこその味です」
アレクサンドルさんが言い、カーライルさんとルーフェスさんが同意した。
料理人のボノボはアミュさんという名前だった。
気楽に自己紹介したあと、ボノボ二人は調理場で我々の胃袋を満たすべく猛スピードで働いている。
「アレクサンドルさんはこのお店には」
「亡くなったあの子のお父さんの頃に改装資金を融資しましてね。今は半々ですが、以前この村は人間が多く、獣人はボノボ達の小さな群れがいるくらいでしてね。たまに来ていまして。ここの二階は宿泊施設だったので、何度かお世話になっていたのですよ」
あるときチンパンジーの大きな群れが円満に定住することになって、飲食店としての需要が高くなり、宿泊サービスをやめたのですね。
二階を飲食用の個室に改装することになったとき、その資金を融資したのです。
その後、先代の料理に惚れ込んだアミュさんが弟子入りのように嫁入りしましてねぇ。
最近先代が病気で亡くなって、事業と事業にかかる債権債務をアミュさんが引き継いだのですよ。まあ、債権は村人達のツケくらいですが。
「そんなに詳しく話さなくて良いですよ」
ペラペラ喋って良いのか不安になる内容である。
「コーさん、何かテコ入れするつもりでしょう。アミュさんには了解をもらっていますよ」
アレクサンドルさんがこともなげに言う。
「何を勝手に」
「俺達も言っといたぞ」
「大変そうだがコーに任せておけって」
チーター兄弟が言う。
やっぱりみんな、このお店に漂う荒れた感じを何とかしたいのだ。
「そうか。おっちゃんもういないのか」
ナッジくんが呟いた。
「知り合いだったの」
「昔、弱かったころ。ときどき飯をくれたんだ。怪我をした時、蛙の養殖場で眠らせてもらったこともある。そこのちびがいたから、移動したわけじゃないと思ってたんだが」
「見に来てたの」
「たまに。ここは人間と獣人との間を取ったような、よくわからないふらふらの村だ。前は人間よりだったんだが、チンパンジー達が入ったからわからなくなった。おっちゃん、種族以上に押し出しは弱かったからな」
たまにこっそり用心棒をしていたのだろうか。
確かに一宿一飯以上の恩だ。




