護衛と収支見通し
ガリ、ガリッ、がりがり。
獣人三人が固そうな木の実をガリガリしながらゼリーとフルーツのカクテルを流し込んでいる。
「歯ごたえが欲しいでしょう。ご遠慮なさらず」と言ってルーフェスさんが大きな木の実を差し出したのだ。
若干怖い。
「それから、街の人達がもつ商人あて売掛債権も買い取ります。しばらく続ければ、持ち直せるはずです」
街の人達からはほぼ額面どおりで買い取っても良い。
おそらく商人に有利なように契約してあるはずで、やりようによってはプラスが見込める。
獣人が不得手な共和国通貨を決済条件にして、アカウント間決済を排除し割高な為替手数料を支払わせていた場合、アレクサンドルさんや私が絡めばコストを圧縮出来る。
今回私のアカウントには、フランクさんが共和国通貨の決済機能もつけてくれる予定なのだ。
人間であることとフランクさんパワーで私でも付くのだから、アレクサンドルさんは言うに及ばずである。
コロンくんの町の住人と、蛇の道な商人達と、アレクサンドルさんとの間でしばらく資金を回していく。新たな掛売を発生させなければ決済は終了していくので、ファクタリングプロジェクトはそれで終了だ。
問題は不良債権化してしまっているものがあった場合だが、それは現状を確認してからとする。
「あまり良いビジネスにはならないと思いますよ」
アレクサンドルさんがオレンジフレーバーのコーヒーシャーベットを薄いチョコレート片で掬いながら言う。傍らにはデザートワインだ。
フランクさんはミントフレーバーのコーヒーシャーベットを口にしている。
「これは私にとってビジネスではありません。もちろんアレクサンドルさんには良いビジネスをしてもらいますよ。お名前と実働部隊をお貸しいただいた対価は、先ほどの氷細工事業でどうですか」
「慈善事業だとでも?」
「そんなに立派なものではないですよ。あえて言うなれば本能です」
胸を張る。
偉そうに言ったが、多少のプラスは出ると思う。
氷細工事業からは継続的な顧問料収入とフィルター販売の利益が見込めるし、長期的にみて投下資本は回収可能だ。
コロンくんの街とのつながりが出来ることと、一定の安全を確保したうえで中央商人の勢力図を探れることも大きい。
世に知られた「勢力図」と実際のそれは、一致するとは限らないのだ。
「ルーフェス、どうですか。この案件、やってみませんか。途中で自信がなくなっても、コーさんが引っ張っていってくれますよ」
アレクサンドルさんがフルーツを搾っていた護衛に声をかける。
「良い条件ですねえ。コーさん、その表看板、私でも良いですか。一応商人登録してあって、各国で使えるアカウントもあるんですよ」
黒髪が整った表情を向けてきた。
「いざという時腰が引けるので、商人として自信喪失中なんですよ。そうして最近護衛として私の後をついて来るんです。ある程度なんでも出来ますよ。一応我々の商会の代表権も持っていますから、顔も利きます。明日から動き出せます」
アレクサンドルさんの説明を聞きながら、カイくんの眉間にしわが寄って来たことに気付く。
白オオカミが重々しく口を開いた。
「ある程度以上腕の立つ護衛をお願いします」
お兄ちゃんはぶれない。ルーフェスさんが苦笑している。
「それから、まずはフランクさんの紹介で服を見に行かせてください」
「服? そんなに気に入ったの」
続いたカイくんの言葉に、私は首を傾げた。
「ようやく気付いた。コーに違和感があるのはなぜかと思っていた。フランクさん達とコーが一緒にいてようやくはっきりした。コーは生地が人間じゃないんだ。もっとなめらかな生地の服にすべきだ」
ツッコミ所満載だ。
やはりサイズが合わないことはスルーなのか。
もしやここでもぶかぶかの服になるのか。
そして人間じゃないってどういうことだ。
「アレクサンドルさん達はあの時特殊素材で固めていたからわからなかった」と言って、本気で悔しそうなオオカミである。
フランクさんが笑っている。
カイくんパパも苦笑している。
コロンくんはようやく小さくかみ砕いた木の実をモグモグしていて忙しそうだ。




