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諦めの早い金融人の肉食異世界草食チャレンジ  作者: くぬぎりす


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リゾート会員権

まじまじ。マジマジマジ。

刮目して見よ。

私の頭にテロップが流れている。

女子でもしばらく会わなければ変わるのだ。

こんなことはもうないのではないか。

シェーヴェさんがしおしおしている。

ラスコーさんを前にそろそろ帰って来てくれと不器用に伝えている。

ラスコーさんはハンモックに手をかけたまま、ぼやん、としている。


「隊長が、朝晩聞くんだ。ラスコーはどうしていないんだ。どこにいるんだ。みんな困っているんだろう、と。何か代わりにやろうじゃないかと言って、回ってくるんだ」

ラスコーの机に積んだ書類に手を出そうとするんだ、あんなひどい代物、隊長にお任せできるはずがない。

みんなして隠すだろう。

そうすると、あんなに案件があったのになぜ何もあがってこないんだ、とお尋ねになるんだ。


武闘派ライオンは、慣れない敬語をごちゃまぜに、組織の混迷を語る。

いつも不思議に思うのだが、獣人達はレーダー範囲が広すぎではなかろうか。

誰も帰着を教えていないのに、シェーヴェさんは過たずにやってきたのだ。


王国から中央に戻って来て、プチリゾートに着いて、とりあえず昨夜もやっていた大宴会に混ざって、迎えた朝である。


ケインくんがクールに、ぐだぐだした人間や獣人達を睥睨しながら出勤するのを見送った。

隣にいたナリスさんは、何故王国旅行に私を誘ってくれなかったのですかと、きらきらしながら恨めしげに出勤して行った。


特に予定もない私達は爽やかな朝の日差しを受けている。

毛皮のあるメンバーが多いので、寒さが余り堪えていない。

フルちゃんは既にギースさんと街に旅立っている。


私達の近くには、昨夜一緒に騒いだ王国人達がいる。

ヴァイルチェン家紹介の、普段よほど抑制して暮らしているらしい王国人達である。彼らは朝日がまぶしすぎると森の中のハンモックで二度寝しだした。

歌自慢の鳥の獣人達が、アルファ波な歌声を小さく提供している。

上質な寝具を各種備えているため、寒い時期に外でぬくぬく寝ることができるのだ。

気のおけない相手と、周りを気にせず、好きに騒いで、寝て良い。気の合った獣人達もそれを助長する。

これはやってみると病み付きになるらしい。


今回来ていた王国人達は合有制リゾート会員権を早々に購入していた面々だ。

中央のプチリゾートの一角には、会員制コテージがある。

会員制とした部分はごく小規模で、ケインくん達の住まいと接したところだけだ。そこだけ、信託とは別のスキームで開発した。


リゾート会員権は、大きく分けて五つの種類があるといわれる。

入会とその対価たる金銭のやり取りがあるのは共通だが、権利の性質などからして、共有制、合有制、利用権制、預託金制、ポイント制である。

共有制は、その名のごとく施設不動産を持分で持ち合う、つまり共有する仕組みだ。会員それぞれが不動産の所有権を持つ。

合有制は、施設を会員みんなで持つ感覚だ。持分という概念がない。

利用権制は不動産ではなく、施設を利用する権利のみを得るものだ。

預託金制は、名前そのままに預託金という名の資金を預けてその返還を求める権利とともに利用権を得る。

ポイント制は、利用する権利をポイントという形に変え、期限や使い方を細分化することができる。


会員制コテージのターゲットは王国の疲れた良家の方々だ。

私達への理解という点で、必然的に濃い横のつながりがある。かつ、凝った施設は本国で充分な層だ。

初期投資費用はかなり小さく(何と言っても未開の森産素材は好きに使える)、また利用者はかなり近い間柄。ならばごく少数による合有でもいい。

そんな発想から、我が国と王国のルールに合わせてアレンジし、マイナーな合有型の会員権が発行された。


ヴァイルチェン家、ラストル雑貨店、カイくんパパからの、紹介オンリー。横の相互審査あり。かつ私達との相性要確認。

かなり厳しい入会審査だが、これは意外にウケた。

今回の王国行きで残っていたわずかな口もあっという間に完売した。

設備取得資金が小さかったので、会員権価格自体が王国人にとって格安だったせいもあるだろう。

はっきり言って、この会員権は流通性がないに等しい。

誰も二次市場のことなど考えていない。


まあ、いざとなれば王国のミーハーな猫にでも資金を貸し付けて引き取ってもらえば良いのだ。


その会員制エリアと一般エリアの境目で、王国人達がのんびりするハンモックを、ラスコーさんにもほらほらと勧めていた。

真面目ライオンが、王国人達の様子をじっと観察して、真面目なりの妥協点を見出したかハンモックに手を掛けたところで、しおしおライオンがやって来たのである。



実は先に、コンシェルジュの、穏やかな人間と馬の獣人のおじさまペアがお伺いに来てくれていた。

「シェーヴェ様・・・がラスコー様・・・にどうしてもお会いしたいとお見えですがいかがいたしましょう」

有名人な二人が別人のように覇気がない。

人生経験とサービス業経験豊富な二人をして、本人かどうか確信が持てなかったらしい。

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