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諦めの早い金融人の肉食異世界草食チャレンジ  作者: くぬぎりす


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旅支度

しゅるしゅる。しゅるり。

濃紺のベルベットリボンを勢い良く解いていく。

渋い光沢を放つ包装紙を剥がし、箱を開けると、焦げ茶色をもっと焦がしたような色の布地が見えた。



昼前に、アレクサンドルさん一行がフランクさん邸に来てくれた。

深酒に堪えた様子はない。

旅慣れた感じで身軽だ。

他の面々は、事務所や家や押さえていた宿で仮眠をとり、荷物を持って順次フランクさん邸に集合の運びという。


「昨夜というか今朝まで、何をそんなに話していたのですか」

「大した話はしていません。強いて言えばみなさんからコーさんとの思い出話を聞きましたよ」

薄ら寒い会話をしながらアレクサンドルさん一行と長い廊下を歩く。

応接室に腰を落ち着かせたところで、ルーフェスさんがただ一つ手にしていた袋から箱を出して、コーさんにプレゼントです、とくれたのだ。


「おいおい。包装の選択もどうかと思ったが、中身もそうか」

一緒にのぞき込んでいたカーライルさんが呆れ声で言った。

拡げると、素敵風呂敷を一回り大きくして、内と外に隠しポケットをたくさんつけたものだった。


「今のものは小さくなりましたし。あれ、内側にポケットを縫いつけましたね。昨日のような危ないものを入れるなら、もっと生地が強い方が良いですよ」

色はほら、コーさん、桃色とか水色とかだと着てくれないでしょう。いつも会長の飲み物、うへぇ、って顔で見ていますよね、わかりますよ。今朝一番にあのお店に行って、また突貫で作ってもらいました。お店の人のあの視線も、二度目なら耐性ができています。

ルーフェスさんが胸を張る。

また縫い子さん泣かせなオーダーをしたのか。


ツッコミどころは満載だが、ものは悪くない。

「美味しそうな焼き栗色なのだ~」

ドミーくんが街で作ってくれた焼き栗に似た色だ。個人的に好きな色でもある。

「良い生地だ」

カイくんが、爪をそらして慎重な手つきで生地を試している。

爪を構えるレイくんからは、身体でかばうことにする。


「ルーフェスさん、ありがとうございます。とても気に入りました。お返しは何が良いですか」

羽織ってみる。

懐かしいサイズ感だ。

そうそう素敵風呂敷はこれくらいだっぷりしていたんだった。

なんだかんだ言って、私は大きくなっていたらしい。


「純粋なプレゼントです。気にしないで下さい」

「商人に純粋な厚意なんてないでしょう。じゃあ、期待していて下さい」

私の言葉にルーフェスさんがアレクサンドルさんを見て、なぜかアレクサンドルさんが自慢げな顔をした。


時間を考えると、ルーフェスさんは仮眠もとっていないと気付く。

「大丈夫ですか。調子悪くなりませんか」

「途中で適当に寝てましたしね」

「ルーフェスは、幼い頃からやりたい放題出来たクチです。その辺りの要領は確かです」

アレクサンドルさんが太鼓判を押してくれた。

こういう人は強いんだよなあ。


その後には、手ぶらのチーター兄弟といつもの道具袋を携えたロキュさんが到着した。すぐに、ちょっと疲れた感じのバルドーさん一家が各自小さな袋を肩に掛けてやって来た。


ナッツをお茶請けに紅茶を飲んでいると、ドミーくんが大きな紙袋をいくつも抱えて入ってくる。

同じ状態のレイくんが続いている。

「お弁当はサンドイッチなのだ~」

昨日の食べっぷりを見て、たくさん作ってくれたらしい。

昨夜あれだけ食べ続ければ、今日のお昼は遅めでピクニック風かな。私がそう言ったので張り切ってくれたのだ。

よく見るとドミーくんは肩から飲料袋と調理器具をいれた袋を下げてもいる。

旅するクロサイ。いいね。



「大きな荷物が着いたようだよ」

フランクさんが顔を出して教えてくれたので、玄関を見に行く。

ラスコーさんとギースさんが、非常食のパッケージが積み上がったカートの傍らに立っていた。

あのパッケージは、私の主食小袋より少量でカロリーが摂れる。代わりに、味を捨てている。本気の非常事態用品だ。


「毎日野宿ですか。どんな訓練ですか」

「王国までだろう。これで足りるか。ボスのところからもらって来た。最近は食べる機会もないらしい。なぜだろうな」

「私達の予定にもないですよ」

ラスコーさんが首を傾げる。

不意討ちにかわいい。


「もう店に入っても大丈夫なんです。シェーヴェさんは前の王国行きの時、好き勝手店に出入りして、食事をして、ホテルに泊まっていました」

カイくんが説明する。

そうか、強襲隊の人達は摘発の風評被害があるからお店に極力近付かないんだった。

真面目ライオンは未だに愚直に配慮していたのだ。

だから昨日も勝手が分からずチーター兄弟に好きにされていたのか。


「とりあえず、それは返してきてもらって大丈夫です」

「そうか」

しょんぼりされた。

たてがみをわしゃわしゃしたい感じだ。

カイくんの手が伸びて来て、ふらふら動きそうになった私の身体を止めた。

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