表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/333

反省するコー

こぽ、こぽぽぽぽ。こぽり。

ジャケットを脱いだルーフェスさんが久々にサービスしてくれている。

ティーポットからカップへ紅茶を注いでくれる。

ただ、ティーポットのなかに茶葉は入っていない。

適切に淹れられた紅茶が入っている。

ルーフェスさんに紅茶を淹れるという繊細な作業はできない。


大人数になりすぎて、振る舞いもカオスな私達を、お店はほどほどに放置してくれた。

適当な時間で大きなティーポットを交換してくれるので、ルーフェスさんにお任せしている。

「この店、隙がないんですよね」

甘そうな色合いのカクテルを飲み続けるアレクサンドルさんが、串焼きを解体しながら言う。

「道楽に巻き込むのはやめてくださいよ。街のみんなのお気に入りなんですから」

お腹いっぱいな私は、ソファーに眠るドミーくんの横にカイくんと一緒に撤退している。

ロキュさんがこくりこくりしながらもサイコロステーキを食べ続けている。

私が旅に誘ってしまったので、寝食をそっちのけで絵を描いていたらしい。消化が心配だ。


「静かになってきましたが、そろそろ出たほうがよいのでは」

ざわめきがだいぶ小さい。

メニューにある串焼きを上から下まで食べ、二周目に入ったレイくんとギースさんはさておき、他の面々はさすがに満腹に近いだろう。


「さっきヒポテの親父がいたから、親父を通じてオーナーに言っといたぞ」

「このままで良ければここに泊まって良いってよ」

ちょくちょく常連達の気配を察知しては挨拶に出て行っていたチーター兄弟が言う。

「俺達は失礼する」

カイくんが断言した。

私もちょっとここでは目覚めたくない。

覚醒して一番に認識するのはアルコールと油のひどい匂いだろう。


「カッカッカッ。だろうと思ってうちの人間が、すぐそこのテーブルに待機している。飲んだくれた俺や安心感がないルーフェスじゃあ、オオカミのお眼鏡にかなわないだろうからな」

カーライルさんはまだまだ飲み続けそうだ。

この人達は年齢に負けないのだろうか。

「今日この場には、強い獣人が十分にいますからね。こんなに安心して飲み明かせる機会など初めてですよ」

アレクサンドルさんが私の白い目に応えてくれた。

「若いときにやりたい放題やったんじゃないんですか」

「若いときは商売の基盤を作るのに必死でしたからね。コーさんはそうだったんですか?」

「愚問でした」

青春を取り戻してください。 


「嬢ちゃん。物騒な金属の件はライオン達がやるだろう。他にもなにかあるなら先に言っといてくれよ」 

カイくんと、夕寝から目覚めて再び元気いっぱいになったドミーくんに挟まれた私にカーライルさんが声をかけた。

仕切りを出ると、三人ものおじさんに囲まれた。

何度か会ったことのあるカーライルさん指揮下の人達だ。

「ものものしくありませんか。余計目立ちますよ」

レイくんがラスコーさんにテーブルから引き剥がされている。

ラスコーさんは残り、レイくんは一緒に来てくれるようだ。

ギースさんはまだまだ食べていて、ロキュさんはとうとう寝落ちしていた。


「目立たせているんだよ。白オオカミとクロサイと嬢ちゃんの組み合わせだぞ。どっちみち目立つ。だったら、厳重なことを目立たせたほうが良い。まあ、ちっとは自覚してくれ」

カーライルさんの発言に合わせて、碧眼と黒眼がちらりとこちらを見た。

どうやら酔いを緩衝材にして、嗜められたらしい。


おとなしくカイくんに抱えられて、素敵風呂敷を被る。

夜行性の獣人達と彼ら向けの営業をしている店の前を通って、護衛のおじさま達、ドミーくん、レイくん、カイくんとフランクさん邸を目指す。

もう日は変わっているが、小型のフクロウやコウモリ、ネコの獣人達がイキイキしていて、眼が冴えてくる。



静かなエリアに入り、街灯だけの明かりとなった住宅街。

一つだけ玄関ホール部分から明かりが漏れているのが目的地だった。

「心配したよ。街に電話もした。アレクサンドルのところに聞いて、護衛達が普通に出て行っていたと聞いたから、ライオン達に依頼はしなかったんだよ」

お帰りなさいませ。

通いのはずの顔見知りのメイドさんが迎えてくれて、外出着のままのフランクさんが玄関まで出て来てくれたとき、私は心から反省した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ