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商人とセキュリティ

じー、ジー、じーっ。

いっそ失礼なほど注視する。


精神年齢アラフォーになってくると、何でも活用する。

純真幼気な少女の外見を使って、ネタを捨てたルーフェスさんに視線で説明を要求する。


フランクさんが笑っている。

「いや、コーお嬢さんは面白いな。ルーフェス、心当たりがあるなら早めに話したらどうだい。落ち着かないだろう」


アレクサンドルさんも笑いをかみ殺そうとして失敗したままだ。

獣人三人は様子をうかがっている。

コロンくんが小首をかしげているのがかわいい。


はっ、マツテンのキュートさにやられている場合ではない。

私は説明を要求するのだ。じー。


アカウントの説明と手続きを終えたところでアレクサンドルさんとルーフェスさんが到着した。2人とも元気そうだった。


問題は、黒目黒髪頬に傷、のはずのルーフェスさんの、傷がなかったのだ。

そのうち黒い眼帯とか、黒い指なし手袋とかしちゃうんじゃ、と楽しみにしていたのに。

今私の目に映るルーフェスさんは、無傷の頬をさらしている。着崩した感じを出したスリーピースで、ほどよく鍛えた身体を覆っている。ジャケットが後両サイドに切れ込みの入ったサイドベンツなことくらいが護衛っぽい。しかし、だからと言って帯剣しているわけでもない。

これではただのカッコイイおにいさんである。


「だから嫌だといったんですよ。嘘っぽいと思ったんだよなあ。コーさん、これから言うことが真実ですからね」

ルーフェスさんはアレクサンドルさんをにらんでから続けた。

「私はあの時初めてあの街に行ったんですよ。それまではコロンくんのところは行ったことがあったんですけどね。コロンくんのところは少しほら、荒っぽさもあるから、さらに大きな獣人の街は気合いを入れてたんですよ。それをみた先輩、ああカーライルさんね、あの人が言うんです。あの街はこわいぞー、お前みたいな新参者は何の抑止力にもならないぞー、俺だってサングラス着用でビビってるのを隠すんだって」

獣人はサングラス着用でもわかると思う。

顔に出ていたのか、カイくんが肯いたから間違いない。


「共和国の小柄なタスマニアデビルだって傷いっぱいだろう。あれが勲章なんだぞ、お前みたいなきれいな顔じゃ役目を果たせないぞ、と言って親切そうに特殊メイク道具を渡すんですよ。疑いつつもあの街に行ったことがある人間はあとアレクサンドルさんしかいないから、聞くわけです、本当のところはどうなんですかって。そうしたらこの人、そうです、私も特殊素材の服ですよ、はったりを効かせる必要がありますからね、なんて言うんですよ。信じちゃいましたよ」

この前は、必要なければ喋りません、といった感じだったが、ルーフェスさんは顔まね声まね身振り手振り織り交ぜてよく喋った。


「私は心配していました。中央ですら治せない怪我をしたのか、失礼ながら治すお金が足りなかったのかと。お金の問題だったらいけないと、せめてものお手伝いにと一生懸命働いたのです」

ウラギラレタ感をアピールして哀しげに下を向く。

カイくんが隣で呆れている気配がする。


「罪深いなあ、ルーフェスよ」

フランクさんがノッてくれた。

「ええー。どうすれば良いんですか、この流れ」

ルーフェスさんが言う。


この流れ、待っていました。


「誠意ある対応を要求します。慰謝料です。アレクサンドルさんも連帯債務ですよ。私とカイくんがこの街をうろうろする間、護衛して下さい」

カイくんパパが会議中のとき、護衛がほしい。カイくんは種族柄強者の仲間だが、荒事は得意ではないし、好きでもない。代表者会議中関係者はまとまって行動したり、それなりの自衛をするのだ。


「良いですよ。カーライルも同罪ですからどちらか一人を必ず付けるようにしましょう」

アレクサンドルさんが気前良く言った。

「それはありがたいな。実は私も同行するのだよ。私も護衛対象に入れてくれたまえ」

フランクさんが突然の予定発表をした。


「フランクさんはご自分の人材がいるでしょう。こちらは手一杯ですよ」

アレクサンドルさんはさらりとかわした。

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