コーの引きこもり計画
とくとく。とく。とく。
無表情ライオンが、ソファーに座る私、カイくん、ドミーくんと、アレクサンドルさん一行を、とくと見回した。
簡潔に言う。
「難しいな」
後ろでシェーヴェさんとラスコーさんも頷いている。
この構図、どこかで見たぞ。
フランクさんのところで相談や手続きをして、結局また泊めてもらった私達である。朝食までごちそうになったあと、コロンくんの故郷である小型獣人の街にやって来た。
前回の訪問から大して日は経っていない。
今回はライオン達の拠点に直行した。
タマリン三人組に歓迎され、ダイルさんとコリーちゃんに挨拶した。まあまあといつの間にやらハッシュさんの部屋まで来た。
かくかくしかじかと経緯を伝えると、あっさり難ありと判断された。
「レイひとりでは荷が勝つ。あと三人は欲しい。交代要員を含めれば倍は要る。それでも最低限だ」
無表情ライオンが淡々と断言する。
「そんな完全警護までは・・・」
「英雄達の街は特殊な立地だから伝わらないだろう。私が護衛に付くなら、全員極力この拠点から出さない」
そんな大袈裟な、と言いかけた私であるが、人間達も肯定的な表情をしているので口をつぐんだ。
ハッシュさんに視線で続きを促す。
「あの街はある意味治安が良すぎる。そういった情報をばらまく者も受け取る者も、場さえもないから疎くなるだろう。中央のよからぬ者達があわよくばと狙う『えもの』の情報を、我々は常に収集している。このところ魅力度急上昇中の顔触れを知っているかね」
そんな魅力は身に付けたくない。
シェーヴェさんがちらりと私を見たあと、言葉を継いだ。
「ラスコーが抱えるタスマニアデビル。英雄達の街の白オオカミとオオカミが後生大事に護る幼女。英雄達の街にいる獣人びいきの商人」
全部私じゃないか。
「少し前まで、アレクサンドル氏がかなり上位だった。しかし先日の一斉摘発で魅力が一気に落ちた。横のつながりが垣間見えて、万人向けではなくなった」
「私はツウに狙われる訳ですか」
「今までと変わらないな」
ハッシュさんの説明に、動じた様子のないオジサマ達である。
「コーさんがいろいろな顔を使って共和国の手を弾くものだから、悔し紛れに情報が流されている。羽振りが良くて確たる後ろだてのない存在として、それぞれ狙われている。タスマニアデビルは生死を問わずで賞金がかかったらしい。一時期ダークな人間達とやりあったせいだろう」
「もうコーはタスマニアデビルになりません」
カイくんが力強く宣言した。
「小さな人間のコーさんとオオカミのカイくんとクロサイのドミーくんだろう。目立ってしょうがない。アレクサンドル氏一行が加われば、囮かと思われるレベルだ」
「それに、人間の護り方と獣人の護り方は違う」
シェーヴェさんがハッシュさんを見て、悔しそうに口にする。
ハッシュさんが苦笑する。
また聞きづらい意味深な様子だ。
そろそろ隊長引退事件、教えてもらえないかなあ。
外からチーター兄弟と遊ぶタマリン三人組の笑い声が聞こえてくる。
混ざりたい。
ラスコーさんはいつの間にかドミーくんの隣にいて、二人で殻を割って木の実の山を作っている。
もう私は街に引きこもろうかな。
たまに街の慰安旅行でも企画して。
普段は非常食作りでもしようかな。




