魔法師と気功師
今日は長めです。
リクが最初に用意したのは水槽、それに少しばかり調整した水である。簡単に言ってしまえば生理食塩水だ。
現在の電子機器や魔道具による検査方法になれた人たちからすると物珍しく見えるのか、興味深そうにタツヤはその様子を眺めていた。
一方で、魔法が使えなくなってからうけた、霊医によるどの検査とも違う方法にヒカルの方は戸惑っている様子である。
ちなみに、この世界の電子機器は魔法で雷を操れないかという研究から、派生、研究が進み、一般に普及するレベルで存在している。むしろ技術水準でいえば、魔法という地球にはない観点から多角的に研究が進んでいることもあり、地球より高い技術のものも多い。
閑話休題。話を戻そう。
「ヒカルさん」
「・・・何ですか?」
「この水槽に手を入れて、水流をつくってくれませんか」
「ッ、私は!」
「大丈夫です。あなたは私が見る限り魔法が使えなくなったわけではありませんから」
リクがあっさりと断言した内容に、周囲の人間すべてが度肝を抜かれた。魔法が使えなくなったから原因を探りに来てもらったのに、当の検査役の霊視能力者、つまりリクは、ヒカルが魔法を使えると断言したのだ。その反応も当然だろう。
信じられない。
その感情を隠しもせずにジッとリクのことを見つめていたヒカルだったが、最終的にはリクの視線に耐えられなくなったようで、リクの言う通りに水槽に手を入れた。
はたして・・・水槽の中の水は、周囲の期待をよそにピクリとも動かなかった。
「だ・・」
「いい調子ですね。ではそのまま手を水槽の中で動かして水流をつくってください」
だから無理だって言ったじゃない!・・おそらくそう言いかけたヒカルの言葉を、問答無用でリクは遮った。
ヒカルはリクのことを視線で射殺さんばかりに睨んでいたが、リクは気にせずにこにこと微笑み返すだけだった。ヒカルをにこにこと眺めながら、リクは言葉を重ねる。
「俺は『魔法』で水流をつくれ、なんて一言も言っていませんよ?ただ水流をつくってくださいと言ったのです。魔法が無理なら手を動かして作ってください」
リクの様子を見て、リクに話を聞くつもりがないことを悟ったのか、怒りを吐き出すかのように息を吐き、ヒカルは手を動かし水槽の中に流れを作っていく。
「っえ?」
すると驚くべきことに、明らかに手で動かしている水以上の水流が水槽の中で起こりだした。
「はい、もう結構ですよ。では次の検査に移りましょうか」
「え?あ?・・・いえ、わかりました」
何が起こっているのかわからない。今の水流は、本当はリクが作ったモノで、自分が作ったモノではないのではないか?そうヒカルはリクのことを疑いながらも、一方で微かな希望を見出したのか、リクの検査に素直に応じ始めた。
「次は髪の毛ですね」
「へっ?髪の毛?」
「ええ、手櫛でとれた髪の毛・・ああ、一本でいいです。それをピンと張ってください」
明らかに既存の手法とは違う方法。しかし、先ほどのことがある。これは聞いておくべきだろう。そう思ったのかヒカルは髪の毛に思念波を送り始めた。
最初はうまくいかず、またリクの方を見たが。リクがにこにこと笑っているのを見て、先ほどのことを思い出す。リクは『魔法』でピンと張れとは言っていなかった。
ヒカルは自身の髪の毛の両端を両手で持って、髪の毛に思念波を送った。
すると、また、リクの言う通りに髪の毛が針のようになった。
「素晴らしいですね。両方の検査を通るとは・・・では、次です。ここからは難度が少し上がるので、できないものもあると思いますが気にしないでください」
「ちょっ、ちょっと待ってください!リク君。先ほどからキミは何の検査をしているのですか!」
先ほどまでの威厳はどこに行ったのか。先にタツヤの方が耐えきれなくなったようで、堰を切ったように話し始める。この世界の医師法でも検査項目を伝えずに検査を行うなどありえないのだ。
ましてやここは魔法がある世界。医学側の人と患者の間に信頼関係なければ、魔法で精神に干渉されかねない。リクが行っていることは普通ならありえないことなのだ。
しかし、リクはまたしても取り合わなかった。
「何って?ヒカルさんの魔法が使えなくなった原因の検査ですが?」
何を当然のことを聞いているのか?あたかもそういうようなリクの視線にタツヤは一瞬たじろいだが、それでもすぐに立て直した。
「しかし、さきほど娘は・・・その、少々見慣れない方法でしたが、魔法を使っていましたよね?」
「ええ、ですから『魔法が使えなくなったわけではない』と最初に申し上げたと思いますが・・・」
「それは・・・では、今行っている検査はなんなのですか?今まで見たことも聞いたこともない検査なのですが」
「すでに一般的な検査は病院の方で行ったのでは?」
リクは質問には答えず、疑問で切り返した。リクの度重なる失礼な態度にタツヤは不快そうな様子を隠さなかったが、リクの検査に可能性を見出したのか質問にはきちんと答えた。
「それは・・・そうです」
「なら再度同じ検査をする必要はないでしょう。先ほど検査結果ももらっていますし。一般的な検査で分からなかったことなのであれば、違う視点からの検査を行うしかないでしょう?」
「はい?」
「ご安心を。変な検査は行いませんから。ヒカルさん、あるいは保護者であるタツヤ様がNOといえば、その検査は行いませんから」
意味が分からない。彼の言うことは確かに正論である。
しかし信頼のおける知り合いの紹介とはいえ、一般的な検査とは一切違う方法に、この少年にこのまま検査をさせていいのか。タツヤの顔にはありありとそう書いていたが、リクはそのすべてを無視した。
「検査を続けても?」
「え、ええ」
一方でヒカルはタツヤとは違う印象を受けたのであろう。ヒカルは戸惑いながらもそう答えた。
その後もリクの検査は続く。一風変わった魔道具を動かしてみろといわれたり(これは失敗した)、自分の血を一滴垂らした和紙を空中に浮かしてみろといわれたりと(これはうまくいった)、様々な検査(?)を行った。
そして検査項目が10に達した時、リクはようやく終わりを宣言した。
「はい。結構です。これで検査は終わりですね。道具を片付けますので少々お待ちください」
そう言いながら、リク本人だけが検査結果に納得したかのような態度に、他の人たち、特にタツヤは少しいらだっていた。
それもそうだろう。なにもわからないまま、なにも知らせないままに、目の前で訳の分からぬ検査を愛娘のヒカルに、リクは行ったのだ。
「それで?検査結果はどうだったのかね?」
タツヤが少しばかり横柄な態度になってしまったのは仕方がないのかもしれない。検査項目を説明もせずに検査を行うのは、この国では違法とまではいかないまでもグレーゾーンである。
しかも愛娘がいきなり魔法を使えなくなって、今後の輝かしい未来が閉ざされるかもしれないのだ。そんな大きなストレスを受ける状況下で、検査役のリクが意味の分からない検査を続けたのだ。
しかし、リクはそんなことは全て知らんと言わんばかりの対応を続けた。今後の話の流れが、リクの検査結果から考えると、どう転んでも好転するように見えなかったからだ。
「見ての通りです」
「何?」
「彼女は魔法が使えます。使えないというのはただの勘違いです」
「どういうことかね?」
苛立ちを隠そうともせずタツヤはリクに聞いた。
「そのままの意味です。彼女が魔法を使えない、というのは誤りです。ご覧になった通り、彼女は魔法が使えています」
「しかし!」
「確かに、既存の魔法とは違うでしょう。しかし、魔法の定義とは『思念波(魔力波)を放出して物質を操る技術』です。今、彼女が見せてみせたのは、この定義に反しませんから、やはり『魔法』という以外ありません」
小ばかにしたようにも見えるリクの態度に怒りみせるタツヤをよそに、ヒカルは冷静だった。
「・・・つまり、私の『魔法適性』が変化した・・・そういうことね?」
その言葉に周囲の大人の思考が止まった。『魔法適性』とは『個人が持つ固有の思念波と同調しやすい物質』のことである。
しかし、それが変化するなどということは聞いたことが無いし、一般的ではないのだ。
「その通りです。『魔法適性』とは簡単に言えば、個人が得意な『魔法』のこと。つまり、個人によって異なります」
「それは知っているわ」
ヒカルは即座に頷いた。自分の体のことだ。早く話が聞きたいのだろう。
「ええ、ま。魔法の最初に習うことですからね。この『魔法適性』は個人が持つ思念波の特性により決まりますが、たいていの人は『水』『風』『土』『火』(火をコントロールする魔法。火そのものは生み出せない)であり、この順番に割合としては少なくなります。大体6.5:2.5:0.8:0.2ですね」
「それも知っているわ」
「では、その理由は?」
「えっ?」
思考の隙間をつくかのようなその問いに対して答えたのは、意外にも家令のハルキであった。
「人間の体を構成する成分、および保有する魔力が影響している。そう言われておりますな」
ハルキの答えはまさにリクの求めるものだった。
「正解です。もっともこれは確かめようがありませんが、理屈としては『人間がもっとも取り込んでいる物質の魔力波の特性に影響される』ということです。
例えば砂漠地帯などでは風の魔法使いが多くなり、海岸沿いの地域では水の魔法使いが多くなること、などが状況証拠として挙がっています」
「だから、それがなんなのかね。結局ヒカルはどういう状況なのかね。私はそんなわかり切った小学生が受けるような講義を受けるためにキミを呼んだのではないのだがね」
タツヤは怒りを隠さず、いい加減うんざりした。そう態度で言いながらリクを問い詰める。
しかしリクはそれを無視した。最終的にすべてを順序立てて説明しないと理解してもらえないであろう以上、説明してしまった方が早いと判断したからである。
「もっとも、この説は私からすると間違いです」
「はい?」
今までの話を全てすべて無に帰すようなリクの言葉に、さらに周囲は困惑した。
「正確には完全ではない、ということですかね。一般的に知られている魔法の技能の1つを、この説では説明しきれていないものがある。人が持つ魔力波の特性は確かに摂取する物質や周囲の環境によって変動します。
しかし、人が持つ魔力波の特性はあくまで人という種が持つ魔力波の特性なのです」
「おい、つまりどういうことだ?」
このままタツヤとリクの二人に会話をさせ続けるのは本当にケンカになりそうで不味い。そういう配慮もあったのだろう。ミクルが初めて話に割って入った。
意外と彼は常識的な判断もできるのだ。もっとも、あえてその判断を無視することも多いのが困りものである。
リクはミクルの求めに応じて話を続ける。
「つまり、ヒカルさん。あなたが持つ魔力波の特性は・・・」
「・・・・・・・・わたしの特性・・・?あっ、わたし自身?そういうこと?」
ヒカルの答えにリクは満足そうに頷いた。
「正解です。ヒカルさん、あなたは『自分自身』という『魔法適性』を得たのです」
「ッハ。馬鹿馬鹿しい長々となにを話すかと思えば・・そんな話見たことも聞いたこともない」
とうとうタツヤが爆発したのか、大きな声で言い放った。一般的に『自分自身』などという『魔法適性』を持つ者はいない(というか知られていない)のだから、諮られているとタツヤが勘違いするのも無理はない。
しかし、リクは冷静に、今、言うべきことのみを言った。
「いえ、歴史上何人も存在しますし、タツヤさんも聞いたことが無いはずがない」
「だから!」
だからそんな適性など存在しない!おそらくは、そう言おうとしたであろうタツヤを止めたのは意外にもヒカルだった。
「もしかして・・・気功師?」
「素晴らしい!満点です!ヒカルさん。さすがに師匠もなく自力で気功師の卵になった人ですね!!」
リクは正直最初から答えを説明しても理解してもらえない。自分で答えにたどり着いてもらわないと、なんといわれるかわからない。そう思って情報を小出しにしていたので正直、ヒカル本人が真っ先に答えを言ってくれたのは嬉しかった。
リクがそう考えていたのには、彼の性格が悪いから、ではなく当然別の理由がある。
気功師は悪名高い人物が多く、他人を気功師扱いすることは、下手すると侮辱としか思われないのだ。歴代の気功師はその特異な魔法適性とともに、『魔法師殺し』で知られている人たちが多いためである。
「・・・馬鹿な・・気功師だと?うちの娘が?」
そういった歴史的背景にはヒカルよりタツヤの方が詳しかったのであろう。タツヤは状況を把握できない。理解したくない。そんな態度だった。
「ええ、まあ。もっともまだ気功師の卵といったところですが」
「確かに・・・それならつじつまが合いますな。魔法師が気功術を使えないように、気功師が普通の魔法をつかないのは有名な話ですから」
先ほどからちょくちょく会話に参加する家令のハルキは、実のところ魔法学オタクなのかもしれない。現実逃避気味にリクはそんな関係ないことを考えていた。
タツヤが気功師に対して偏見が強い人間であった場合、ヒカルのことをきちんと愛していなかった場合、面倒になる可能性が高いからだ。
そんなことは無いと信じたいが、リクの経験上、長い歴史を持つ家ほどバカげた思考をすることが多いのだ。
リクが視る限り、おそらくは大丈夫だが、それでも家族会議に巻き込まれる前にリクは帰りたかった。
「しかし・・・」
「確かに、歴代の気功師は悪名高い人も多いですが、まともな人もいますし、気功師ばかりが悪いとは言えません。それに気功術自体はただの魔法の一種ですから」
リクは一応ここでフォローを入れておいた。魔法学の発達している今の時代なら大丈夫だと信じたいが、50年前なら気功師というだけで確実に問題になるからだ。
そしてその言葉に一番反応したのはなぜかヒカルだった。
魔法が使えることが当たり前の社会で、近代以前に魔法が使えなかった人たちがどんな目にあってきたか。誰にでも想像できることである。
もしかしたら先ほどからのヒカルの態度から察するに、ヒカルは言っていないだけで、本当は学校で嫌な目にあっているのかもしれない。
実際、悪名高い気功師の大半は、社会の魔法至上主義に反対しているうちに、目をつけられ暗殺されそうになったところで逆にやり返す。そういう人たちが多いし、そういった気功師に賛同する人々が多かったからこそ今の制度が生まれたのだ。
もっとも、そんなことは今のリクには関係なかった。リクが今すぐにしなくてはならないこと。それはなぜか先ほどから何故か背筋に感じる嫌な予感からの脱却と、この場を穏便に済ましさっさと帰ること、である。
そしてリクは手っ取り早く分かりやすい手段にうったえた。つまり問題の先送り、兼、問題の回避、である。
「さて、検査結果の報告は以上ですね。詳しくは後日書面にて郵送しますので、この場ではこれ以上することもありません。なので、そろそろ帰らせていただきます」
そう言ってリクは席を立った。リクの性急な態度に戸惑ったのか、若干遅れてミクルとコウジが立ち上がって会釈をする。
「待って」
さっさと帰ろうという意思がありありと見えるリクを止めたのは、当人だから当然というべきかヒカルであった。
しかし、その反応は至極真っ当なものである。なにせ、ほとんど研究されてこなかった、誰に教わればいいのかもわからない『気功師』の卵になった。そう言われても今後どうすればいいのかわからないからだ。
「なんでしょう?」
リクはニコニコと、面倒ごとはもうごめんだというオーラを放ちながらヒカルに対応する。
「うっ・・・いきなり気功師って、言われても・・私は今後どうすればいいのよ」
リクの対応に一瞬負けそうになったヒカルであったが、そこは負けじと言い放った。
彼女からすればここで放り出されたら、どうすればいいのか全く分からず、かつ、目の前に明らかに気功術に関して詳しそうなリクがいるのだから当然である。
それに対するリクの答えは
「知りません」
というものだった。
「えっ?」
「さきほど風の魔法を使って見せたように、私は普通の魔法師です。ハルキさんが述べたように気功師は魔法が使えず、魔法師は気功術が使えません。指導のしようがないのです。ご了承ください」
「うっ・・・」
そう言われてしまっては、何も言い返せない。ヒカルは思わず口をつぐんだ。
その様子を見て若干申し訳なさそうにしてみせながら、リクはつづける。
しかし事実はさっさと依頼を終えたかっただけである。300回も転生を繰り返したリクからすれば教えるのは簡単だ。だが下手なことを教えれば面倒なことになるのは目に見えている。
それだけに、リクは下手に情けをかける気はなかった。
「・・・先ほど申し上げた通りです。ヒカルさんの検査は一通り終わりました。彼女は魔法が使えます。ただ彼女の『魔法適性』がなぜか後天的に変化した。そのため魔法が使えないように見えた。それが結論です。
詳しい検査結果はこれから家でまとめまして、後日書面にて報告させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あ、ああ」
まだ、娘が気功師という事実にタツヤは戸惑いを覚えているようだ。
しかし、だからこそしっかりせねばいけないとでも考えたのか、先ほどよりずいぶんと落ち着いた様子で、タツヤは少し遅れながらも頷いた。どうやらタツヤはまともな人らしい。リクはタツヤへの評価を一段上げた。
「では、失礼します。お金(検査道具にかかったお金のみ。報酬ではない)の方もまた後日、シゲルさん経由で伝えますので、私の口座に振り込みをお願いします。
もっとも、大した検査をしていませんので、それほど高額にはなりません。高くて5000円ぐらいだと思います」
「・・・わかった。感謝する」
ようやく再起動したのかタツヤは落ち着いて答えた。やはり娘が魔法を使えなくなったということに、彼も精神的な影響を受けていたのであろう。新しい頭痛の種が芽生えたようではあるし、消化もし切れていないのだろう。
しかし、少なくとも見通しが立ったことにほっとしたような顔をしていた。
玄関までタツヤ達家族は見送りをしてくれた。
「その、すまなかった。いろいろと取り乱してしまい、みっともないところをみせてしまったな」
そう言いながらタツヤは頭を下げた。
「いえ、気にしないでください。普通のことだと思いますから」
「キミは・・・いや、いい。今回のこと、感謝する。また何かあったときはよろしくお願いしたい」
タツヤはそう言って手を差し出した。
「・・・できれば成人してからでお願いします。最近忙しすぎるので」
リクはタツヤの握手に応じながら、愛想笑いをしつつも本音を言った。
「フッ、そうかね?キミほど優秀な人材であれば確かにそうかもしれないな」
「優秀なんて、そんな・・・私はただの平凡な魔法師ですから。買い被りです」
リクはあくまでも自身が拘る平凡という言葉を前面に出した解答をした。周囲の評価が低すぎるのも問題だが、リクの経験からすると周囲の評価が、自身の能力より高すぎる方が問題が多いのだ。
「謙遜しすぎるのは美徳とは言えないぞ?実際娘が気功師だと教えてくれたのはキミだけだし、キミの検査結果を見ればそれがおそらく正しいこともわかる。
では、また。今度会える時を楽しみにしている」
「・・・今回はありがとうございました」
またの機会などない方がリクにとっては嬉しいのだが、そう言うわけにもいかないのでリクは無難な回答を選んだ。
そしてリクたちはその場を後にした。
道中、ミクルが悪戯を思いついた子供のような顔で、魔道端末で誰かと情報のやり取りをしていた。それが長くなればなるほど嫌な予感をリクは感じたが、疲れていたこともあり、リクは全力で気が付かないふりをするのであった。