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平々凡々に暮らしたい~異世界転生を300回繰り返した結果~  作者: 活字中毒者
ハジマリの霊視官
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『戦』を司るということ





「以上が、私の計画の概要になります。基本的にお願いしたいことは、先ほど述べた通り、組合員及び、協力者の安全の確保。次が市民たちの安全確保になります。何か質問はありますか?」


 リクが資料を見せながら話し終えると、一様に周囲は黙りこくっていった。作戦が穴だらけだから、リクの作戦が不安だから黙っている・・・というわけではない。


 いや、リクの提示した手段の質の悪さに恐怖している、というのはあるかもしれないが、一番は呆気にとられている、というのが正しい。


 リクの作戦は非常にシンプルだ。


 相手は完全に違法手段を用いている。無論、発覚した時の対策や、そもそも発覚させないための対策を持っているだろう。その対策を全て予想、看破し、相手の公にしたくない情報を、つまり弱みを集めに集めて、脅す。


 そのうえで逃げ道を用意し、あたかもそれに従えばなんとかなると思わせ、罠にはめる。


 言ってしまえばそれだけだ。しかし、その相手がとるであろう手口の予想精度が、相手がなんかしら飲手段を講じた場合の対応策が、執拗なまでに綿密に作られている。


 具体的には敵の黒幕はおろか、末端の構成員、外部協力者、相手のセーフハウスやアジトの位置、裏帳簿の写し、協力者に協力させないための横領の証拠、愛人の数、味方(正確には警察の人員)の内通者、等々。


 ありとあらゆる情報がリクの手にはあり、そのうえで敵がとりそうな行動パターンを過去のデータから分析、作戦を立てている。しかもリクの立てた作戦には失敗した場合の対策も事細やかに練られており、スキがない。


 加えて、失敗した場合でも当初の幻影符を利用した犯罪の阻止、および組合に対する情報操作を阻止するという目的は達成されるようになっている。


 無論、リク1人でこの作戦を立案したわけではない。


『戦』の人造魂魄、ケン。その本領は実のところ戦闘時のサポート・・・ではなく、相手の情報収集、及びそこからの作戦の立案にある。『戦わずして勝つ』


――そもそもリクは武術を訓練しているが基本的に訓練はしても使わない方がよほど良いという性格だ。なので、ケンの仕事は実際の戦闘では、情報戦、電子戦、心理戦の類が多いのだ。


 もちろん、作戦は難しければいい、複雑で相手の読みの上をいけばいい、というものではない。作戦内容は普通単純であればあるほど、誤解なく味方に伝わり、上手くいきやすい。


 しかし、この作戦ではほとんど動くのは作戦立案者であるリクと、それに振り回される敵のみだ。ツカサやキリクのやることはほとんどないと言っていいぐらいだ。どれだけ作戦が樹形図のように、パターン分けされていてもケンのサポートを受けたリクなら、一切問題ない。


 思考の再起動に数秒の時間を要したツカサが、まず当然のことをリクに聞いた。


「確かに、作戦はうまくいけば何事もなく、敵のみがいなくなるでしょう。これだけのことを調べ上げたリクなら、いや、リク以外のだれもこの作戦の通り動けるとは思いませんが・・・この作戦を実行できると思います。


しかし、それはこの情報があくまで正しければ、です」


「ツカサさんもある程度の情報を得ているのでは?」


「ええ・・・しかし、私は、というか組合はここまでの情報は知りません。ある程度の情報はおそらく正しい。それは私の得ている情報からも確かです。


しかし、いや、そもそもこれだけの情報をどのようにして集めたのですか?」


 それはあまりにも当然の疑問だった。リクが集めた情報は、個人が収集できる範囲の情報を超えている。これはもはや国の諜報機関並みの情報収集能力だ。


「だてに師匠の仕事に昔連れまわされていたわけではありませんから、組合にはない個人的な伝手がありまして・・・」


「それだけ・・・ではないでしょう?」


「もちろん。しかし、それ以上はたとえツカサさんでも高くつきますよ?」


 リクは笑いながらそう言った。つまりリクは人には言えない手段で情報収集をした。ということを自分から言ったようなものだが、リクはそれについて一切述べるつもりはなかった。


 もっともリクが述べたところで真似しようがなく、現状のこの世界の科学技術、及び魔法技術では不可能な方法だ。聞いてもどうしようもない。


 ツカサはリクの意図を察したのかそれ以上の追及はしなかった。代わりに別のことを聞いた。


「この情報が正しいかどうか、確認しても?」


「やめてください」


 リクは即答する。理由は単純に相手に感づかれたくないからだ。見るものは見られる。もはやありふれた言葉だが、それだけ正しい言葉であるということだ。ましてや今回の相手は大物、下手に藪をつつくようなことはしたくなかった。


 ツカサが心配してくれているのはわかる。しかし、それでも言えないものは言えない。リクはツカサに対して申し訳ない気持ちになったが、得た情報の開示。そこまでがリクのできる最大限の譲歩だ。


 珍しいリクの拒絶という態度に、先ほどのリクの意外な本心の吐露もあって、会議室の空気は少しずつ重くなっていくのであった。






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