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平々凡々に暮らしたい~異世界転生を300回繰り返した結果~  作者: 活字中毒者
ハジマリの霊視官
70/81

青春

サブタイトルが・・・こっぱずかしいけれどこれ以上のものが思いつかなかった(笑)




 個室がある喫茶店に入り、遮音障壁を張った後、3人は話を始めた。



「・・・へえ。だから変装していたんだ」


「うん、まあ。予想以上に相手が馬鹿で、かつ強かだからね」


「バカと強かって矛盾してない?」


 リクの返答に対してハクはクスリと笑いながら言った。


「そう?単純に目的はバカだけど、狡賢いだけの手段を選ぶだけの頭はある。その頭を別の方に生かせばいいのに、バカな目的に使っているんだから、やっぱりバカというほかないでしょう?」


「そうかもね」


 クスクスと笑いながらハクは言った。意外と笑い上戸なのかもしれない。


「けど大丈夫?警察とかは動いていないの?」


「動いているけど、警察内部にもバカのシンパがいるみたいでね。組合の方で粗方洗い出したけど、すぐには動けそうにない」


 リクはこれまでの学校生活から、霊視でハクのことは信用できると判断していたので裏情報をぽろっと流してみた。するとハクも絶対に言わない、信用には答える。そう、真剣な目で確約した。その上でハクは意外にも全く別の内容を話し始めた。


「なんか・・・霊視官って思っていたのと違うね。単純に人が苦手で、研究ばかりしている人たちかと」


「間違ってはいないけどね。あまりにも周囲の妬みやひがみが大きいから対策せざるを得ないんだよね」


「なるほどね。それでヒカルちゃんが落ち込んでいるんだ?」


 ハクはここで黙って話を聞いていたヒカルに話を振った。ハクと朗らかに、自分も知らない話までしていたリクに、ヒカルは不機嫌になっていただけに、この不意打ちには対応が遅れた。


「・・・どういうことよ」


「どうって・・・リク君が1人で頑張っているのに何もできなくて歯がゆいから落ち込んでいるんでしょう?」


「・・・別に落ち込んでいるわけじゃないわよ。ただ、こいつが何も教えてくれないのに話が進んでいくからイラついているだけ」


 ヒカルはとっさにそうごまかした。


「そう・・・なんだ。やっぱりスゴイな、ヒカルちゃんは」


「私の話聞いている?」


 ハクの対応はまたしてもヒカルの予想の斜め上を言っていたので、ヒカルは少し不満そうに言った。


「聞いているよ。リク君みたいになんでもできる凄い人に、怒れるんだもの。すごいよ、やっぱり」


 しかし、ハクの言葉は予想外だった。ヒカルは一瞬頭が白くなった。


「いや、普通に自分のことを無視されて話進まれたら怒るでしょ?私は護衛なのよ?それなのに、なにがどこまで進んでいるのか、敵がどういうやつなのかさえ教えてくれないんだから、そりゃ怒るわよね?」


 冷静さを保とうとしつつも、保ちきれず、若干怒りをにじませながらヒカルは自分のことを正当化する発言を、自分でも気が付かないうちにしていた。


「そこだよ、ヒカルちゃんの凄いところ」


「はい?」


 しかし、これまたハクはヒカルの予想とは違うことを言った。ハクはヒカルのことが心底羨ましいとでもいうように見つめていて、ヒカルはとっさに言葉に詰まった。


「知っている?最初はヒカルちゃん、リク君を好きな女子から嫌われていたんだよ?」


 リクはなにか言おうとしたがさすがに空気を読んでやめた。


 ヒカルもいきなり始まった話の流れについていけなかった。


しかしハクが何か重要なことを自分に伝えようとしている。それだけはわかったのでとりあえず話を聞いてみることにした。


「でもね。そのうち皆リク君のこと諦めて、ヒカルちゃんのこと応援するようになったの、どうしてかわかる?」


「応援もなにも私とリクはそういう関係じゃないけど・・・それはひとまず置いておくわね・・・・そうね、単純にリクの霊視官としての才能のぶっ飛び具合に怖くなったんじゃないかしら?リクが3バカ追い詰めるときに怖がっている女子結構いたしね」


「フフフ。そうじゃない・・・・そうじゃないんだよね」


 ハクは優しい目でヒカルのことを見つめながら言った。


「もちろんそういう人たちもいたよ?けど、リク君が霊視官って知る前から好きだった子は、スカイボールでリク君が活躍する前からリク君のこと好きだった子は、そんな簡単にリク君のことキライになったりしないよ」


「なら・・・・なんでかしらね。わからないわ」


 そんな奴がいるのか?そう思わないでもなかったが、当然ヒカルは空気を読んでそんなことは言わなかった。かわりにヒカルは白旗を上げることにした。


「単純にリク君と付き合うってなった時のことを想像したりして、怖くなったんだよ」


 そして、ハクの答えにヒカルは内心どきりとして、それを隠すために早口でまくし立てる。


「はい?こんな奴と付き合うのが怖い?確かに性格がいいとは言えないし、腹黒いところもあるけど、悪い奴じゃないわよ?リクは」


「違うよ・・・違う。そんなんじゃないの。リク君の凄い料理技術や、カッコいい音楽の演奏、スカイボールで空をかけるスーパープレイ。そんなのを見るうちに、リク君の才能がだんだんわかってきて怖くなるんだよ。勝手に憧れて、勝手に好きになったのに、勝手に怖くなるの。本当に勝手な話だけどね。


リク君の彼女になった時に、リク君の隣に胸を張って立てない。立つ勇気がなくなっちゃって、皆諦めちゃったの。だからリク君の隣に立って、負けまいと努力し続けているヒカルちゃんのことがすごいなぁ、って。みんな応援するようになったの」


「・・・・・・・」


 あまりにも予想外の、いや、心の中ではわかっていたが、わかりたくなかったことを聞かされて、ヒカルは絶句した。その上でハクの言葉で最近何故、ヒカルに対してイラついていたのかようやく自覚して、恥ずかしくなった。


ハクの言う通りだ。ヒカルはリクの隣に立ちたかったのだ。胸を張って、リクの隣に。


ヒカル自身は自分がリクのことが好きになるというのはありえないと(今はまだ)思っている。


しかし、リクの隣に立ちたいという思いは、リクに救ってもらったあの日から、ヒカルの心の中にずっとあった思いだった。自分を救ってくれた憧れた人と、同じ場所で、同じ風景を見たかったのだ。


「フフフ。やっぱりね。ま、いいや。リク君!」


 ヒカルがなにも言わないことに、ハクはなにかしら感じ取ったらしいが、それ以上はハクには突っ込まなかった。その上で居心地の悪い思いをしていたリクに突然話を振った。


「えっと、なに?」


 目の前で、自分に関係することを話していたのに、完全に蚊帳の外になっていたリクは、当然ハクの指名に驚いた。


「他のみんなは知らないけれど、私は諦めていないから!胸を張ってリク君の隣に立って見せるから!」


 自分より明らかに人生経験のない少女の宣言。それでもリクは真剣にリクのことを見つめてくるハクをないがしろにすることはしなかったし、できなかった。


「俺は自分のことをそれほど大した人間とは思っていないけれど、わかったよ。ハクさん。キミの言葉は心にとめておこうと思う」


 その上で、リクは今の思いをハクに伝えた。


「・・・・ありがとう。それじゃあね。なんか恥ずかしいこと言っちゃったし!?会計は私が払うから内緒にしてね!」


 ハクはそう言うと顔を真っ赤にしながら、喫茶店を出て行った。





 数分後、無言だがどこか恥ずかしくて嫌な空気ではない。そんな空気を破ったのはリクだった。


「だってさ」


「なにが『だって』なのよ」


 ヒカルは気恥ずかしさを誤魔化すように強気で言った。


「ハクさんにはヒカルがすごく頑張っているように思えるんだって、焦る必要ないってさ」


「・・・焦る必要はないとは言ってなかったでしょ。言っとくけど、ハクちゃんの言うこと認めたわけじゃないから。私は、アンタの隣に胸を張って立ちたいんじゃなくて、アンタを追い抜いて馬鹿にしてやりたいだけだから」


 ヒカルは久しぶりにリクの目をまっすぐ見ながら、ほのかに顔を赤らめながらそう言った。


「はいはい。ならなおさらペース配分には気を付けろよ。最近のヒカルは俺の護衛ができる状況じゃなかったぞ」


「わかっているわよ。今日のところはちゃんと休んで、また明日から頑張るわ。ちなみに今日の外出の費用は全部アンタのおごりだからね」


「はあ!なに言っているんだよ」


「私に馬鹿どもの現状を教えなかったくせに、ハクちゃんには簡単に教えた罰よ。普通護衛には先に状況教えておくでしょうが!」


「それはヒカルが・・・って、まあいいか。良いよ。好きなもの食べ物でも服でもなんでも買ってやるよ」


「よろしい。でも服はいいわ。護衛の範疇をこえてリクと関わるとアンタのことを好きなハクちゃんに申し訳ないしね」


「あのな・・・」


「まさか、あれだけ言われて知らんぷりするわけではないでしょうね」


「わかっているよ。その時が来たらちゃんと答える。それまでにまじめに考えておくよ」


「うむ、よろしい」


「なんで上から目線なんだよ・・・」


 ぼやきながらもリクはヒカルより先に歩き始める。


「・・・ありがとね」


 ボソりとヒカルはリクに聞こえないぐらいの小声で言った。リクは聞こえていたが気が付いていないふりをした。


「ホレ、早く行くぞ。置いていかれたいのか?」


「わかっているわよ。相変わらずせっかちな男ね」


 気が付けばヒカルの中にあったリクへの隔意はどこへやら。いつも通り、普段通りの言葉の掛け合いを2人はしていた。そして、リクとヒカルは、その日、少しだけいつもより距離を縮めながら歩いていることに気が付いていなかった。







明日からの投稿乱れそうです

ご了承ください

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