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平々凡々に暮らしたい~異世界転生を300回繰り返した結果~  作者: 活字中毒者
ハジマリの霊視官
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過去の襲撃事件と現在の情勢

今日は長めです


【タケルの話】



 最初は『孤児院の悪魔』なんていう仰々しい2つ名引っ提げている子供を叩きのめすつもりだった。うん?その時点でおかしいって?


 いやいや、昔の俺は自分の魔法師としての力に己惚れていたからな。なんかあんじゃん。俺がここらで一番強い子供だぞ!みたいなやつ。


 ほら、アイツらも頷いているし、男にはそういう時期があんだよ。・・・まあいい。


 ま、そんなこんなでリクに喧嘩を売ったら、圧倒的に放出能力は俺の方が上のはずなのにコテンパンにやられたわけだ。案の定。


 おい、そこ、やっぱりとか言うなよ。


 コホン。まあいい話を続けるぞ?そんななかでリクと俺は良くつるんで遊ぶ仲に・・・おい、リクそこはスルーしろよ。確かに一方的に突っかかっていただけだけどさ。そこはいいだろ?うん、まあいい。とりあえずリクと俺は仲良くなった。


 今思えば、仲が良すぎたんだろうな。俺は当時、霊視官や高位霊視能力者と仲がいいっていうのが社会のクズどもにどうみられるのかっていうのを知らなかったんだよ。


 ある時、気が付けば俺とリクの目の前に矢文が撃ち込まれていた。最初はどこぞの俺みたいな馬鹿が、リクの噂を聞いて喧嘩を売るためにカッコつけて古風な手段を選んだのかと思ったが、そうじゃなかった。


 え?格好いいだろ矢文って。え、うそ。男子ならわかるよな。うん、だよな。矢文ってなんかカッコいいんだよ。おい、そこの女子の集団。うわぁみたいな顔すんなって。なんか恥ずかしいだろ。


 ま、それは置いといて、そこに書いてあったのは俺の妹を誘拐したっていうふざけた内容で、ご丁寧なことに妹のつけていたヘアピンまで同封されてやがった。


 手紙の内容はありきたりなものさ、指定するところに1人ずつ分かれて来い。誰にも言うな、言えば妹を殺す。別々の場所に俺らを誘導するっていうのが嫌らしいところさ。ただ、そうしないと妹を殺すっていうんだから、仕方なく俺らは従った。


「おい、タケル。お前あの時、悪魔の俺のせいだとか言って殴りかかってきたじゃねえか」


 そこで一度リクからの訂正が入った。


「結局半分はお前のせいだったろ?もう半分はうちのバカ親の関係だったけど。ああ、うちの親父、県議会議員なんだよ。どうも、バカ親父が政敵に喧嘩売られたらしくてな、そのついでに霊視能力の高いリクをさらうっていう、一石二鳥を狙ったらしいんだよ。


ま、当時はそんな裏話は知らなかったけれどな。裏話は置いといて、話を続けるぞ?」






 そう。そんで仕方なく俺は誘拐犯の言う通りに従ったんだがな、こいつそれ無視しやがったのよ。


 リクはどうも霊視で矢文を打ち込んできていた敵の居場所をつかんでいたらしくてな、手っ取り早く監視役のそいつらをまくと、そいつらを不意打ちして逆に捕まえて妹の場所をつかんだらしい。


 らしいっつうのは、俺が後で聞いたからだな。俺がただ1人、敵の指定する場所についた時には妹はリクに救出されていてな。誘拐犯たちは監視役と、リクを呼んだ場所にいる奴、それに妹を監視していたやつと連絡が取れなくなって怒り狂っていたぜ。


 まあ、俺も誘拐犯からリクが指定場所に来なかったって聞いた時はキレそうになったけどな。








「俺1人の戦果じゃないぞ?単純に組合が俺の霊視の実力知りたがっていてな。俺に監視がついていたことは既に知っていたからな。なんか悪そうなやつじゃなことは霊視で気が付いていたから、協力を要請しただけだ。協力すればアンタらの駒になってもいいぞって言ってね」


 リクは周囲の唖然とした表情から逃げるように言い訳をしたがそれでも周囲の反応は変わらなかった。


「いや、その時5歳ぐらいだったんだろ?それで監視に気が付くとか・・・」


「対応が慣れすぎだぞ、リク」


「昔からブラックだったのね・・・・」


「腹黒リク少年・・・あ、っ結構いいかも」


「あのな・・・」


「そろそろいいか?話を続けるぞ?」







 誘拐犯たちからリクの話を聞いた時、俺は激怒したね。友達だと思っていたのに裏切ったんだとその時は思っていたからな。生きて帰れたらぶん殴ってやるって思ったさ。けどそんな決意とは裏腹に、俺はなすすべなく誘拐犯たちにとらえられた。


そして、それはイラついた誘拐犯たちが、俺のバカ親父に連絡をつけようとした瞬間だった。


 爆音と閃光が奴らのアジトに満ち、そこにいた誰もが一瞬混乱した。中には俺をとりあえず捕虜として捕まえようというやつもいたが、気が付けばそいつらは全員気絶していた。俺を除いてね。そんな中、組合の人と、うちの親父を引き連れてリクが現れた。


「ようタケル。なんだ?お前縛られるのが趣味なのか?」


 笑いながら言ったリクに対して俺は当然怒って言った。


「お前!妹は!ユイは!」


「落ち着けよ。ほら後ろ」


 リクはそう言って親指で後ろを示した。そこにはバカ親父にしがみつく妹のユイとバカ親父がいた。







「んでもって、そっからうちの家族はリクの頼みなら大抵のことは聞くことにしたのさ。ま、こいつはあんまり頼み事とかしねえけどな」


 まるでドラマのような本当の話でクラスメイト達は呆然としていた。タケルはその反応に満足そうに締めくくった。


「そっからさ、リクが『孤児院の覇王』って呼ばれるようになったのは。どんな敵でも目的と居場所を瞬時に霊視で見抜いて、手のひらで躍らせ、敵を始末する。いやー、当時のリクはキレッキレだったね」


 タケルのその発言に対し、リクは事実とは異なると反論する。


「おい。事実と異なる発言をするな。単純にたまたまうちの師匠がいて初動が速かっただけだ。それに、その一件でバカ師匠に目をつけられて、規定年齢に達してすらいなかったのに霊視官補佐の仕事を馬鹿みたいにするはめになったんだぞ、俺は」


「ハッハッハ。それは知らんな。言ってしまえば馬鹿な誘拐犯どもが悪い。もっと言えば有能すぎるリクが悪い」


「お前な・・・」


「確かにうちの息子はバカだけど、その意見には賛成かな。キミは昔から有能だった。当然今もね」


 ガラガラと扉を開けて、40代前半といったところのイケメンと14、5歳ぐらいの美少女が店に入ってきた。


「バカ親父!なぜここに?」


「ホウ、言うじゃないか。タケル。もう小遣いは要らんということだな?」


「それは卑怯だぞ!親父!」


「卑怯なものかね。リク君を見習いなさい、タケル。彼はきちんと働きながら1人暮らしまでして、勉強も優秀だ。タケルと交換したいぐらいだね」


「お久しぶりです。ミツルさん。ユイちゃんも」


 リクはタケルの発言を無視して、タケルの父と妹に挨拶をした。


「お久しぶりです、リク様。いつも馬鹿な兄が迷惑をかけています。言ってくださればいつでも黙らせますので」


「大丈夫だよ、ユイちゃん。もう慣れているし。それよりミツルさん、どうしたんですか?一応貸し切りのはずなんですけど?」


 ランが働いている店はそれほど大きい店ではない。安くて早くて美味い。三拍子そろったいわば大衆食堂だ。しかも現在は1年A組で貸し切りである。タケルの父親とはいえ、いきなり入ってくるのは普通ではない。


「なに、ちょうど近くを通ったものでね。リク君もいるというし、どうだろう私も参加してもいいかな?いくらか多めにお金は払うから」


「えっと、それは委員長と店の人に聞かないと・・・・」


「ふむ、そうかね?クラス委員はシズクさん・・といったか?」


「あ、はい。私です」


「どうかな。少しリク君と話したいこともあってね。本来であれば組合でリク君と話すべきなのだが、立場上、下手なことをするとメディアや支援者がうるさいものでね」


「えっと、私は別にいですけど・・・」


 いきなり聞かされた政治的な裏話に、シズクは困った顔をしてクラスメイトやランを見た。


「私はいいわよ?みんなが良ければ、だけどね」


 と、ラン。


「俺らもいいですよー、っていうかタケルにこんなに美人な妹がいるとは」


「ユイちゃん。ケダモノは置いといて私たちと一緒に食べましょ?」


「・・・・大丈夫みたいです。リク君もいいよね?」


「全然かまわないよ」


「ふむ、ありがとう。ああ、キミが護衛のヒカルさんかな。よかったらキミも一緒に話さないか?タケル、お前は友達と話していなさい」


「へーい」


 若干不満そうにしながらもタケルはリクたちの席を離れた。


「さて、無粋な話はさっさと終わらせたいのでね。早速本題に入りたいのだが良いかね?」


「別に構いませんが、貸し切りとはいえここで良いのですか?クラスメイト達にも聞かれますよ」


「構わない。彼らも無関係ではないしね。正直、キミがどういう関係をクラスメイト達と築いているのかも見たくてお邪魔させてもらったところもあるのだ」


「はあ・・・別に普通だと思いますけど?」


「そう、それだ。それが重要なんだ。キミは今まで話に聞く限り周囲とはあまり関わらないようにしてきた。そうだね?」


「ええ、まあ」


「それは仕事のこともあるだろうし、クラスメイト達を自分の事情に巻き込まないためだと私は理解していたのだが、どうかな?」


「その通りです」


「では、何故。今は彼らと普通に付き合っているのかな?」


 リクはミツルが何を言いたいのかを察したうえで、質問には答えず、逆に別の質問をした。


「・・・・つまり、弱点を増やすべきではないと?」


「言い方はどうかと思うが、一言で言うとその通りだ。みる限り彼らが第一級霊視官、その価値を理解しているとは思えない。キミも警告しているとは聞いているし、今日も裏口から入ったりして、気を付けていることは知っている。


だが、甘い。危険すぎる。最終的になにかあった時、傷つくのはキミだ」


「つまり、どうしろと?クラスメイト達との間に壁を作れと?今更だと思いますが?」


「いや、可能なら転校すべきだ」


 その言葉に周囲のクラスメイト達が驚き、人によっては殺気立ったが、ミツルは柳に風といわんばかりにそれを受け流した。


 そしてクラスメイト達の前で、彼らに聞かせることを目的として話始める。


「キミは最近組合や政府の動きが鈍いことに気が付いているかね?」


「ええ、まあ」


「普通、第一級霊視官が襲撃されたとなれば、もっと大きな事件になる。それがこの扱いはどうだ。私には政府や組合がキミのことを過小評価しているように思えてならないのだよ」


「見解の相違ですね。そんなことは言われなくても見れば私にはわかります。その上で断言します。政府がどうかは知りませんが、組合は私の敵ではありませんよ」


 リクの強い言葉にミツルは一瞬目を見開いた。その上で思考を巡らせたうえでリクに質問した。


「・・・どういうことかな?」


「これはテストなんですよ。ミツルさん」


「テスト?」


 ミツルはリクの発言に虚を突かれた。


「ええ、そうです。あなたは政府や組合が第一級霊視官である私のことを軽視しすぎだと言いましたが、私からすればあなたの方が第一級霊視官の持つ権限を軽視しすぎている・・・・ミツルさん」


 リクは自分の発言がミツルの頭に浸透するのを少し待った。


「・・・・つまり、私が第一級霊視官について過小評価しすぎていると?リク君、言わせてもらえば私はリク君のことをかなり評価しているつもりだが?」


「ええ、それでもまだ足りません」


「己惚れすぎではないかね?」


 ミツルは若干苛立ちをにじませた。


「なにを言っているんですか。ミツルさん。私は五歳の時に誘拐犯及び、その大本を叩き潰したんですよ?」


「それは組合の協力あってのものだろう!」


 ミツルは思わず大きな声を出した。


「ええ、もちろん。そしてそれからずっと、言いたくはありませんが、あのレイジ第一級霊視官、及びヒノモト霊視官長の元で、ずっと面倒ごとの処理をさせられてきたんですよ?」


「それは・・・それは確かに素晴らしい経験を積んだかもしれないが・・・」


 ミツルはリクが言いたいことを理解し始めたようだ。しかし、その予想の内容に顔をしかめる。そして、その予想は正しい。


「あなたは霊視官にとっての第一級霊視官という言葉の意味を知らない・・・まあ、知り様もないので仕方がないとは思いますがね。第一級霊視官を名乗るというのはそれほど軽いものでは無いのですよ」


「・・・・つまり今回の案件に対処できる自信がある、そういうことかね」


「ちょっと違いますね。第一級霊視官である以上、私がそれを名乗った以上、それだけの働きを組合に示さなくてはならない。・・・組合の動きが鈍いのはそういうことだと私は理解しています」


 リクはここで決意表明をしてみせた。もっとも、その覚悟自体はリクには昔からある当然のものに他ならない。


「・・・・私はあくまで反対だ。キミはまだ16歳だ。成年すらしていない。組合が、現状を知ったうえでリク君。キミに事態の収拾を任せようとしているというのであれば、仮にそれがリク君の言う通りテストであるとしても、厳重に抗議させていただく」


「どうぞ、ご自由に」


 ミツルの発言に対してもリクは一切動じなかった。


「その上でリク君。私は・・・私たち家族はキミに多大な恩義を感じている。私が必要だと判断すれば、キミの許可なくあらゆる手段をもって今回の件に介入させてもらう」


「できれば静かに見ていてほしいのですが・・・」


「無理だな。キミも、啖呵を切った手前言いにくいかもしれないが、困ったことがあればすぐに連絡してほしい。協力は惜しまない」


「ありがとうございます」


 二人の会話を、クラスメイトやランたち、そしてヒカルとタケルは真剣に聞いていた。彼らはまだ社会を、いや、裏社会を知らない。しかし、それでもその片鱗を今日、この場で知ったのだ。


 本来自分と同じ立場、同じ年齢の同級生が、自分の職務に覚悟を持って取り組んでいる。裏社会からの圧力に物おじせずに、正面切って戦おうとしている。


 そういう決意をクラスメイト達はリクから感じた。


 それと同時に、確実にリクの足かせになっていると断言され、それを否定できないことに、強い悔しさをにじませていた。


 彼らは若干16歳、あるいは17歳。社会を知らなくて、できないことがあって当然。それはわかっている。


 それでも、自分たちのリーダー的な存在が、自分達の仲間が、友達が、自分たちのために頑張って動いてくれているのに何もできない。いや、危険なことすらも気が付かず、何もしていなかった。


 自分たちはリクからたくさんの知識と、経験と、感動と、様々なものをもらっているのに・・・・


 今日、この時間、この場所をもって、彼らの目つきが変わった。多かれ少なかれ、彼らの心にはリクに対する尊敬と、感謝と、そしてリクに追いつきたいという気概が生まれたのだ。







 こうして、本来クラスの食事会であったはずの一件は、クラス全体に妙なしこりを残して終わるのであった。









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