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平々凡々に暮らしたい~異世界転生を300回繰り返した結果~  作者: 活字中毒者
ハジマリの霊視官
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孤児院の先輩 ランのお話






 リクがランたちのいるシンジを院長とする孤児院に来た時の印象は最悪だったわ。仏頂面の顔に、何もかもが気に入らないと言わんばかりの態度。もっとも親に捨てられたばかりの孤児ならそれもありふれた話ではあるけどね。


 しかし、今思えば、それ以上に孤児院の職員や先生方の方がリクのことを怖がっていたと思う。


 『孤児院の悪魔』――それが噂話で聞いたリクの2つ名だった。そう昔は『覇王』じゃなくて『悪魔』だったのよ。


 後で聞いた話なんだけど、どうやらリクは昔からその卓越した霊視能力で孤児を運営する職員の横領や身体的、性的、精神的虐待を発見。証拠を集め、通報し、バッサバッサと孤児院をつぶしてきていたらしいのよね。それも3歳かそこらの時からね。大人たちが怖がるのも無理はないと思うわ。


 しかも、本当かどうかは知らないけれど、その過程で複数の機関に通報することで、動かなかった行政機関や福祉事務所をメディアにリークし、社会的に圧力をかけて潰す寸前まで行動したものだから、『悪魔』と呼ぶにふさわしい活躍ね。


しかし、ただ1人、院長先生だけはリクのことを怖がってはいなかったわ。


 彼だけは「リクは真っ当に生きてきただけだろう。リクが荒んで見えるのは、周りの大人たちの問題だ」。そう言って引き取る孤児院のなかったリクのことを引き取ったらしいのよ。


 当然当時からリクは高い霊視能力を有していることが分かり切っていたから、周囲からは嫌厭されていてね。周囲の反発も大きかったと思うわ。


 それでも院長先生は引き取った。本当に院長先生は立派な人だと思うわ。ああいう人のことを聖人というのね。


 話がずれたわね。とにかく、単純に自分の感情が常にリクには丸見えで、かつ、悪いことをしたらすぐに潰そうとするリクに、恐怖を抱いている大人たちも少なくなかったのにね。


 それが孤児院の子供たちにも移っていたのだと思うわ。リクに話しかける人は1人もいなかった。


 そんな中始まった、リクとの孤児院での共同生活の初日。それはお世辞にも楽しいものとはいえなかったわよ。っていうか、今思い出してもすごい子供だったわ、リクは。


 険悪といってもいい空気の中、リクは孤児院の食事を一口食って、一言。


「不味い!こんなまずい食材で作った飯を食っているから性根が腐るんだ!」


 リクの孤児院最初の発言がそれだったわ。すごいでしょ。これは本当。本当に一字一句間違いなくそういったのよ。


 そしてリクは当然のごとく、調理担当の職員に怒られた。自分の作った食事を不味いと断言されたのだ、誰でも怒るだろう。


 しかし、リクはそれには屈しなかったわ。それどころかリクはこういった。


「なら、明日から孤児院の飯は俺が作る。アンタが作るよりよほどましだ。他の奴らはどうだ?俺の飯を食うのと、こいつが作った飯を食うのとどっちがいい?」


 当然のごとく、リクの方がいいという子供はいなかった。当然よね。彼の作るご飯が美味しいとは限らないし、職員の作ったご飯は確かにおいしくはないが、不味くて食えないというほどでもなかったのだから。


 そして次の日の朝食。リクはただ1人、とてつもなくうまそうなチャーハンを1人で食べていたわ。そしてその日、自信を無くしたのか調理担当の職員は朝ご飯を作り終わると早退していた。


 いやー、あの時の孤児院のみんなのリクへの怨念のこもった声と、視線はすごかったわ。かくいう私もその1人なんだけどね。あんまりおいしくないご飯を私たちは食べているのに、リクだけ1人おいしそうなチャーハンを食べているんだもの。


 当然文句も出たわ。だけどリクはその全てを黙らせた。


「知らん!お前らが俺の作った飯を食わんといったのだろう?謝罪しない限り、お前らの飯は作らん。調理担当の職員は帰ったみたいだし、昼飯はいつも通り他の職員が作った飯を食べればいいんじゃないか?」


 その言葉に一部の、っていうか私のグループがリクの作ったご飯を食べたいから食わしてくれ、っていったのよね。そしたらリクはこういったのよ。


「対価は?」


「はい?」


「労働には対価が付きものだろう?まさか、お前俺に調理させてタダでご飯食べようとか思っているんじゃないだろうな」


「アンタねえ、年下の癖に!」


「年上の癖に、年下に働かせて金も払わず飯をくらうと?お前を捨てた馬鹿な親どもと同じだな。さすが、血は争えぬというわけか」


 そっから先は大げんかよ。普段は院長先生や他の職員が止めてくれるのだけれど、面白いからそのままケンカをさせておけって院長先生が言ったものだから、いつもなら入る仲裁もなくてね。


 ああ、結果?ボロボロよ、ボロボロ。リクは昔から喧嘩は強くてね。負けて泣いている私たちにこう言ったのよ。


「くだらない人間にくだらない目にあわさせられたからって、くだらない人間になっていいという理由にはならない。うまい飯が食いたきゃ働け!馬鹿ども!お前たちは可哀そうな人間なのか!違うだろう、悪いことをしていないなら胸を張って生きんか!」


 初めてだったかもね。初めて私たちに真摯に向き合ってくれている人がいるって感じたわ。普通大人たちも可哀そうな、どこか引いた眼で私たち孤児のこと見てくるからさ。


 今ではリクには孤児院のみんなが感謝しているわ。もっとも、今思い返しても当時のリクはおっさん臭かったと思うけどね。(*注 当時のリクは前世の老人のころの記憶に引きずられていました)


 それでケンカした後リクにご飯の作り方を教わってね。初めて作った料理はお世辞にも上手くできたとはいえなかったけど、おいしかったわ。初めて私は生きているんだなぁ、って実感したわね。


 そっからはまあ、リクの独壇場ね。大半はリクの側についておいしいご飯を作ったりしたけど逆らうやつも当然いたわ。もっともリクはそれも気にせずボコボコにして黙らせたけどね。今じゃそいつもこの店のライバル店で働いているわ。


 そしてランの独白はここで終わった。








「それで『孤児院の覇王』ですか・・・」


「ぷっ・・・いや、いい話じゃねえかリク」


「ああ、見直したわよ。リクっ・・プっ」


「『悪いことをしていないなら胸を張って生きんか!』」


「ぷはっ!やめろよお前!」


「ダメだ、こらえきれん!」


「ワッハッハッハ!」


 1人が皮切りにリクを除いたクラスメイト全員が一斉に笑い題した。


「お前らなぁ・・・昔の話なんだからいいだろ別に!笑いすぎだろ!」


 リクは恥ずかしさもあり、怒ってそう言った。


 一通りクラス全員が落ち着くのに5分ほど要し、そこで気が付いたようにヒカルが言った。


「ハー、面白かった。それで?タケル君の妹の誘拐とやらの話にどうつながるのよ?」


「ああ、それか。それはラン姉に代わって俺が話すぜ?良いよな、ラン姉」


 タケルが笑いながら言った。


「いいわよー。ただせっかく作ったんだからご飯もちゃんと食べてよ?」


「いや、当人の俺に許可とれよ・・・聞いてねえし」


 とリク。もはやリクはこの流れを諦めていた。


「おう!みんなが話聞いている間に食いまくったぜ!」


 とタケルはランに応えた。


「あっ!狙っていた肉がねえ!」


「このやろ、急げ。くいっぱぐれるぞ!」


 急いでご飯を掻っ込む男子をよそに、リクの昔話の暴露談はまだまだ続きそうである。






中々よく書けた気がするw(自画自賛(笑))

ギリギリ推敲間に合った!

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