リクの知り合い
平成最終投稿です。
少し短いですが、ご了承ください。
7月下旬。期末試験も終わり、一応馬鹿どもの後始末が片付いたリクとヒカルはようやく夏休み・・・と思いきや、思いっきり朝早くからリクの孤児院時代の知り合いの農家さんのところで働いていた。
『リクの喫茶店』にも食材を下ろしてくれていた農家さんで、リクが働いているときによかったらと声をかけられたのだ。
「ヒカル。それはまだ収穫には早い。もっと下手のところまで赤い奴とって」
「ちょ、私は素人なんだから、少しは優しくしてよ」
「ふぉっふぉっふぉ。相変わらずだのう、リク坊は。女の子相手でも食材のこととなると厳しくてな。昔からそれでいい子なのに女の子に好かれんのよ」
「そうなんですか?」
「アユムさん。よしてくださいよ。リク坊って年でもないですし」
リクは苦笑しながら矍鑠とした老婆に話しかける。
「ふぉっふぉっふぉ。なにわたしゃみたいな年寄りからしたら、さして変わらんよってからに・・・リク坊は昔からリク坊よな」
「おばあちゃん。さすがにリクさんに失礼だよ。もう孤児院も出ちゃって1人暮らししているぐらいなんだから」
「む?そうだったかの?リク坊はその年で一国一城の主であったか。それで最近はトンと来てくれんかったのか」
「いや、おばあちゃん。それはリクさんも仕事があってからで・・・まあ、いいや。おばあちゃんお医者さんにもあんまり無理するなって言われているんだから、少しは休みなよ」
「む?年寄り扱いするでないぞ!わたしゃまだまだ現役じゃぞ?」
「はいはい。おばあちゃんが現役で助かっていますよ。ほらそろそろ朝ごはんにするから先に戻っていてよ」
「むう。しかたないの。食い盛りのリク坊のためにも秘伝の漬物を用意するとするかの」
そう言ってアユムは帰っていった。
「ごめんなさいね。リクさん。おばあちゃんったら、久しぶりにリクさんの顔が見られて嬉しかったらしくて、いつもよりハイテンションみたい」
アユムの孫のユミがリクに笑いながら言った。
「いえ、こちらこそ元気なアユムさんが見られてよかったです。すみません、最近はあまり来られなくて」
「仕方ないですよ、お仕事ですし。それに孤児院の皆さんが手伝ってくれるし、リクさんが代わりに連れてきてくれた霊視官の方のおかげで豊作ですし。こちらこそ感謝でいっぱいです」
そういいながらユミは頭を下げた。
「昔からの知り合い・・・なんですか?リクと・・・リクさんとは」
ヒカルが聞いた。
「ええ、まあ。年もほとんど同じですし、最初はなんだこの変な奴って思いましたけど、リクさんたち孤児院の方々が来てくれるようになってから、おばあちゃんも元気になってよかったですよ。
最初はリクさんのこと変な奴としか思ってなかったんですけど、いろいろ草花を使った遊びとか教えてくれたりして、すぐ仲良くなりましたし。あ、でも好きとかそういうのじゃないから安心してくださいね」
「は、はあ・・・って!違いますからね?私はただのリクの護衛で・・・」
「わかっていますって。さ、朝ご飯にしましょ!」
ユミはそう言いながらヒカルにウインクをして家の方へと戻っていった。なんともパワフルで茶目っ気ある女性である。ユミは一応リクやヒカルより年上で19歳。すでに成人して、幼馴染の彼氏もいて農家としてバリバリ働いているのだ。
「なんか・・・農家の女性に女子力で負けた気がする。可愛いし、彼氏いるし・・」
「どういう偏見だよ。さすがに酷いだろ」
リクが呆れて言った。
「わかっているわよ・・・けど、あれだけ充実した笑顔で恋バナとか振られると、訓練ばかりの私が悲しくなってくるのよ」
「まあ、ヒカル女子力ないしな」
「うっさい!アンタの家事能力が高すぎるだけで私は普通よ、普通」
リクとヒカルは護衛の都合上、風呂とトイレ(事故防止のため)、自室と寝室が別で、キッチンとリビングが同じという変則的なシェアハウスもどきのマンションに一緒に住んでいる。
最初は交代で料理をするという話も出ていたのだが、今ではリクがご飯を作り片付けはヒカルという形に落ち着いている。
どうもヒカルは家事の類が苦手なようで、というかリクがうますぎるため、ヒカルはリクに秘かに(でもないが)コンプレックスを抱いているのだ。
しかし二人は外から見れば、彼らもリア充で同じ穴の狢であることに気が付いていなかった。




