カナデとの出会い
本日二話目。今日のラストです。
ようやく3曲目の演奏も終え、休めると思っていたらリクは生徒会長のアヤメと見知らぬ少しきつめの顔立ちの3年の女子生徒に話しかけられた。
「すばらしい演奏でした、リク君」
「ありがとうございます。えっと?」
「ああ、この後歌う予定のカナデです。まずは素晴らしい演奏を聞かせてくれてありがとう。それで、終わったばかりで申し訳ないのだが、少しお願いがあってね。アヤメの許可ももらっているので、キミさえよければ聞いてほしい」
うしろでアヤメが少しおびえた様子で頭を下げた。リクに後で怒られるかもしれないお願い。つまりはそういうことなのだろう。
リクはため息をつきたくなったが、さすがに初対面のカナデの前で、そうするわけにもいかず、問い返した。
「まあ、かまいませんけど、なんでしょう?」
「ああ、先ほどの演奏の件だが素晴らしかった」
「はい?ありがとう・・」
リクはなぜ二回いうのかと、戸惑いながらもお礼を言おうとしたが、カナデがそれを手で制した。
「素晴らしすぎたといってもいい。この後自分が歌っては、おそらく、悔しいことだがミュージックフェスが盛り下がってしまうと私は思う」
「そんなことは・・」
「ある。私の実力は私が一番把握している。残念ながら私の実力は、『今は』キミに及ぶものではない」
カナデは断言した。
(今は・・ね)
(なかなか見どころのありそうな音楽家です。ですがなおのことわかりませんね。なぜリク様に話しかけたのでしょう?)
肯定も否定もするわけにもいかずリクはこたえに窮した・・・ふりをした。リクはこの時点でカナデが何を言いたいのか察しつつあった。
「そこで・・だ。ぶっつけ本番で申し訳ないのだが、私の伴奏を・・・いや共演をしてくれないか?可能なら、歌い手は私1人で」
リクは楽器演奏も好きだが、歌うのも大好きで、その技術もかなり高い。そのリクにこの提案である。さすがに失礼な申し出をしている自覚があるのだろう、カナデはこれからの発表とは別の緊張で青ざめていた。
(自分の実力が足りないのを自覚しつつ、ファンに失礼にならないように自分のフィールドは死守する。その上で、観客を楽しませるために頭を下げる・・・・か)
(なかなか失礼な女子生徒ですね)
容赦なくミオが言った。
(ああ、だけど・・・・)
((きらいじゃ ない/ありませんわよ))
「曲目は?俺はずっとクラスの企画にいたので、先輩の発表は聞いていません」
「あ、ああ。この2曲だ。いけるか?」
「愚問ですね。それにこれは俺の大好きな曲です」
「それで・・その・・つまり受けてくれるということか?自分でもかなり自分勝手な失礼なことを言っている自覚があるのだが・・・」
「それでも観客をがっかりさせたくないのでしょう?」
リクはその一言にすべてを込めた。あくまでカナデが本気なら、ファンのために全力を尽くせ。ファンのためであるなら一演奏家として協力してやる。そう意味だ。
「・・・そうだな。どうやらアヤメの話と違って、キミは大した人物らしい・・・・感謝する」
「それなら後でアヤメセンパイから何を聞いたのか教えてくださいよ。場合によってはお仕置きしないと」
「ちょっ!」
「ああ、かまわんとも。よろしく頼む」
少しばかりくだらない話で緊張をほぐしつつ二人は向かい合った。
彼らの出番はもう、すぐである。




